ワイルドな男

梅雨ですね。雨が降りますね。ジメジメと湿っぽいですね。イヤですね。夏も近いですね。道行く人の服装も身軽になってきましたね。肌の露出も多くなって、ムダ毛の気になりはじめる季節です。
毛。そう、今回は毛の話をいたしましょう。人にはいろんな部分に毛がはえています。
あっ、今、眉をひそめた人。そんな顔しないでください。あなたにもはえているんですよ。あなたが13才以上の大人ならば、なおさらそうなんですよ。その眉だって、毛です。
よろしいですか。髪、眉、睫、鼻毛、髭、胸毛、脇毛、腕毛、陰毛、すね毛、など。
これらの中で、とくに取り締まりの対象になるのは、鼻、腕、脇、すね、陰部周辺、の毛でしょうな。つまり、はえてるとカッコ悪いという意味ですね。別にこれらを伸ばすこと自体は法律違反にはなりませんが、エチケットという名の形のない不文律は公共の場において、れっきとして存在するのです。男の場合は髭なども含まれます。はやしている、はやしていないではなくて、手入れをしているかどうか。これが大切である。
しかし、男はムダ毛なんてのはあまり気にする必要はなさそうな気がする。鼻毛と髭。顔さえ奇麗にしていれば、とりあえずは大丈夫であろう。問題は女性である。
『問題』という言葉が悪いのなら、たいへんなのは女性である。やっぱし体毛は少ないほうが、好ましいような気がいたしますね、僕は。みなさんも同意見ではないでしょうか?だからこそ、夏になると脱毛剤がコンビニやスーパーや薬局の店頭に山積みされているんだろう。それだけニーズがあるに違いない。
関係ないけど、素朴な疑問。市販されている脱毛剤の中で、パッケージにバレリーナのイラストの入った製品を知ってますか?白い衣装を着たプリマが、足の爪先に両手をそえるポーズをとっているヤツなんですけど。僕は前から感じていたのだが、脱毛とバレエはどういう関係があるのだろうか?多分、ないんじゃないだろうか?あのようはイラストを採用したのはどのような経歴があったのだろうか。バレリーナは脱毛剤のヘビーユーザーなんだろうか?毛深いとバレリーナにはなれないのであろうか?
もちろん女性であるから、ムダ毛には気をつかってはいらっしゃるだろう。それはわかる。しかし何故、バレエなのだ?
バレー(ボール)だと、いけないのか?たとえば、味方のふたりがジャンプしてネット上で敵のアタックをブロックしている場面なんかどうだ?脇の下を強調できるぞ。どうだ?
ちなみにバレエ(ダンス)をやってる男は、下半身がモッコリしていてロンゲで胸毛がはみ出していて、ヒゲが濃いという印象があるぞ。
それはそれとして。
えーっと、脱毛とエチケットの話だったな。どこまで喋ったっけ?すまんすまん。トシをとると話がクドくなってイカンわい。梅雨がうっとおしくて、もうすぐ夏、で、、、。
とくに手足を露出する季節になると、キレイに手入れの行き届いた肌とツヤのある輝きはその女性(ひと)のおおきな魅力になると思うのですよ。最近は高校生を中心にずいぶん短いスカートが流行っとるし。僕、個人もノースリーブの服(を着た美人)が大好きだし。好む好まざるに関係なく、エステに金をかけるのはやっぱし大いに意義のあることなのだと、スケベエを代表して男、藤田は書いてしまおう。
「いーや、納得イカン!」と言う反対派の人、いらっしゃったら、ごめんなさい。
ところで先程、怒られるのを覚悟で「男の場合はムダ毛を気にする必要はなさそう」などと書いてしまったが、並はずれて毛深い男はどうなるのであろうか。
たとえば、僕の後輩のH君。彼の毛深さは尋常ではない。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両さんより、泉谷しげるより、ショーン.コネリーより、ゴリラよりも毛深い。毛質は、固くて、太くて、まっすぐで、黒くて、黒く、黒く、黒く、黒い。
何年か前、友人同士で和歌山の海に泳ぎに入ったときの事。H君の毛深さは彼の腕を見ていれば容易にわかることなので、僕たちはある程度の想像はしていた。彼の胸元からは、シャツのボタンをひとつ外しただけでも、ワイルドなヘアーが顔(顔なんてないが)をボワッ!と覗かせたし。7月のことだった。僕らは仲間5人でそろって連休をとって、車2台で夏の白浜に出かけたのである。まだ若かった僕は、初めて自分の車を持ったばかりだった。走行距離10万キロを超えたCVCCエンジンのマニュアルミッションのホンダの1500CC。こいつで遠乗りに出かけるのも最初だった。エアコンはまったく効かないし、カーステレオもついていない、ラジオすらもぶっ壊れてる、僕のイケてるボロ車。
窓全開、Tシャツ1枚に短パン、ビーチサンダルを脱いで、僕は裸足でアクセルを踏んだ。気温は30度を超えており、車内は灼熱地獄であった。堺市の自宅から助手席にひとりの友人を乗せて出発して、国道26号を南に下り、泉南市でH君のトヨタと合流して阪和自動車道に入ってさらに南へ。和歌山市に入ってさらにさらに南へ。山間部を抜ける自動車道路は長い峠を登る。
僕のボロ車はエンジンからゼーゼーと危ない音を響かせながら苦しげに坂道を登る。どんどん登る。登る、登る、、、。
H君のトヨタはナマイキにも新車なので、エアコンが効いていて、イコライザー付きの4チャンネルのカーステレオがあって、チユーブの「シーズン.イン.ザ.サン」を、「もー、すこしーこのままでーいたいのサー♪」なんてハナ唄まじりに大音響で鳴らしている。
H君は制限速度なんて無視して登り坂をバンバンとばす。トヨタは走る。僕のイケてるボロ車はついていくことができない。ときどき、ギアを2速、3速にまで落としてエンジンの回転数をあげて、「うりゃっ!」とアクセルを床まで踏みつけてみるけれども、ボボボボボボボオッ!なんて、たよりない音がするだけで、サッパリ加速しないのであった。途中で僕はH君の車を追いかけるのを諦めて、マイペースで走ることにした。下り坂になれば、ラクに加速できるようになるからだ。
昼過ぎには太平洋に面した海岸線に出て、42号を目的地の白浜に向かって東に走行した。
さて、海への道程を長々と語ってしまったが、ついにわれわれは白浜の海水浴場に到着した。長時間の運転と暑さで少々ヘバってはいたが、一刻もはやく海に飛び込みたかった僕たちは、着ているものを脱いで集まったのであった。そしてH君のカラダを目撃したのである。
、、、胸毛については、みんな知っていた。服を着ていても胸元から毛が覗くからだ。腕の毛深さも、毛の黒さも、みんな知っていた。半袖の服なら普段の生活でも着ているからだ。すね毛も想像できた。脚を組んだら、ズボンの裾からチラリとかいま見えたりしたからだ。しかし、今の彼はビキニのパンツいっちょうだ。強烈だ。ワイルドだ。男だ。
指、手の甲、腕、上腕部、胸、腹、ふともも、すね、足、背中。
毛、毛、毛、毛、毛、毛、毛、毛、毛、毛、毛、毛。(変質者の笑い声ではない)
男の僕でも、思わず固まってしまったほどだ。だが、いっしょにいた女の子たちの反応はもっと大袈裟であった。「ウワー!」とか「キャー!」とか大声で叫ぶのである。

「なに、なに、なに、なに!」

「H君、スゴイ! 」

「男らしい!」

とか言いながらも、彼女らが 2〜3歩、後ずさったのを僕は見のがさなかった。おそらく、濃い体毛っちゅうのは、女の人には生理的に受けつけない何かがあるのだろう。
H君の毛の特徴はカラダの中心部に沿って、その密集度が濃くなるところにある。
胸→みぞおち→腹→へそ→下腹部→恥骨→いんのう→肛門→臀部→腰→背中→首→頭、というふうに馬のタテガミみたいな毛の筋が一本とおっているのだ。
腰がひけながらも、恐る恐る人さし指をさしだして、H君の胸毛に触って「スッゴーイ!」と叫んだ勇気あるE 美サンに、彼は言わなくてもいい事を言った。
「その毛は腹、陰部、肛門、を通って背中までつながっているのだ。」
真夏の太陽の下にもかかわらず、E 美サンのカラダ一面にトリハダがはしった。

H君はその後、エステに行って脱毛に挑戦したらしいが、結局はうまくいかなかった。
「痛い。痛いんや。ほんまに。」
多くは語りたがらないが、そういうことらしい。
現在の彼は相変わらず毛深い。でも、二度と脱毛などしたくないらしい。あんなもん、男のすることじゃねぇ。脱毛なんて自分に自信のない軟弱な野郎のやることだ。宣言する!男の肌はスベスベツルツルでなくてもかまわん!自然のままが正しいのだ!俺は男だ!
文句あっか?
そうだ。そのとおり。文句はない。
それでも結論。ムダ毛はキチンと処理しましょう!


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