1989年か1990年、どちらの年か忘れたが、論文書いている友人の部屋で初めて見たパーソナルコンピューターがMacintoshのSE/30だった。モニター一体型のコンパクトなボディに林檎のロゴマークを描いたそのシンプルなスタイルは美しかった。だが現在とは違い、50万円という価格の高さもあり、自分にとっては関係のない世界だった。コンピューターで何が出来るのかもわかっていなかったし、ワープロみたいなものだとしか考えていなかったのだ。
モノクロ画面にある哲学の論文とむずかしい言葉の羅列は僕をコンピューターから遠ざけるには充分だった。
ただ、After Dark のアニメーションには驚かされたのを覚えている。モニターに浮かぶフライングトースターの画像にはそれまでのワープロとは違った何かの可能性を感じさせるものがあった。
その後、パーソナルコンピューターは急速な普及とともにその価格を考えられないペースで下げていった。性能は上がっているのに値段が下がるというこの矛盾!
モノクロだったモニターはカラー表示も可能になった。ワープロだけだと思っていたが、エクセルやフォトショップのような自分が今まで考えもしなかったようなソフトが存在することも知った。通信やネットワークの存在も。
1995年、秋。ウインドウズ95の登場したときの事。おそらくアップル社はそうとうな危機感を抱いていたのだろう。またCPUが68KからPower
PCへと移行する時期と重なったせいもあるのだろう。まるでバーゲンの目玉品のごとく、一部の機種がとんでもない価格で売りさばかれた。
Performa588 である。
数年前のSE/30からすれば性能は飛躍的にアップしているにもかかわらず、その価格は8万円だった。新機種がここまで値下がりすることは今後二度とないだろう。
そして僕が初めてコンピューターを買おうと秋葉原をうろついていたのもこの時だったのだ。もちろん即、購入した。そして今でも使っている。