開業コンシェルジュとは


同じ土地でも、建てる人によってさまざまな間取りと材質の家になります。設計段階で相当検討したつもりでも、実際に住んでみると自分のライフスタイルとかけ離れた家になっていて、おおいに後悔したという話しをよく聞きます。

これと同様に、開業も人生の一大事業ですから、開業前に自身の人生設計も含めてさまざまなことをしっかり計画しておかないと、開業後に多くの悩みを抱えるということにもなりかねません。

ところが、私自身の経験から言っても、開業を決心したときにはすでに種々雑多な仕事や打ち合わせが入っていて、そこに歯科業者の思惑が追い討ちをかけるように迫ってきます。その結果、時間的にも精神的にも余裕のないままに、なし崩し的にスタートしてしまう事例も多いように思います。

そのようなことにならないように、開業前に少なくとも以下のようなことを入念に考えてみましょう。

■開業地はどんなところが良いのか?

■開業資金はいくらくらい必要なのか?

■スタッフは何人で、そのうち歯科衛生士は何人くらいいれば良いのか?

■受付は 院内技工のメリット、デメリットは?

■部屋のレイアウトや器材選びは、おおむね業者に任せても大丈夫か?

■地区の歯科医師会に入会すべきか。入ったらどんなメリットがあるのか?

■レセプトはどこの製品が良いのか?

■歯科用CT、レーザー、デジタル機器などの最新器材を導入すべきか否か?

 

など、検討すべきことはヤマのようにあります。もちろん大抵は始めての経験ですからその一つ一つに漠然とした不安がつきまといます。

 

また、たまたま父親の歯科医院を引き継ぐことになったとしても、

 

■今までのやり方と同じで良いのか?

■改装はどこまで必要か

■この地域ではどんな歯科医療が求められているのか?

■今後歯科界はどのように進んでいくのか?

 

など、やはり考えるべきことは山積しています。

特に昨今は歯科業界も開業ラッシュ、保険財政のひっ迫等で厳しい状況ですから、将来の経営に不安を抱いてしまうのも無理からぬ話しでしょう。

 

これらと合わせて、もう一つ大きな問題があります。それは「やりがい」とか、「充実感」とかと関連するのですが、「本当に患者さんにとって良い医療とは何だろう」ということです。医療はもちろん経営も大切ですが、根本はそれがどれだけ世の中のためになっているかということが日々の診療で実感されないと、必ず遅かれ早かれ心理的な隘路にはまりこむことになってしまいです。

逆に、それさえしっかり見えていれば、多少の困難はきっと乗り越えられるはずです。

 

それではどうしたら自分の理想とする臨床を見つけることができるのでしょうか。

歯科界には多くのスタディグループや学会があり、そこで得た知識や知りあった仲間の経験を参考に自身の臨床を組み立てていくという良き伝統があります。たしかに学術のリーダーたちの多くは人間的にも、学際的にも魅力的な歯科医ばかりです。

しかしこのようなリーダーたちを真似るばかりでは、そのカリスマ的な生き方に染まり過ぎてしまったり、偏ったドグマを信奉してしまったりして、かえって自己を見失ってしまうことにもなりかねません。またその傾向は、皮肉なことに真面目な先生ほど強いように思われます。

 

 

昨年還暦を迎えたことを機に、長年母校同窓会の卒後研修の企画・運営にたずさわり、臨床教授を10年あまり続けてきた私自身の経験を生かして、

 

■開業(継承)を控えた若き後輩たちのために何かできないだろうか

■ 微力でも私のキャリアを迷える若き歯科医たちのために生かせないだろうか

■これまで各地で行った講演を通して、受講した方々からいただいた数々の質問も、きっと何かの役に立つのではないか

 

などと考えるようになりました。「開業コンシェルジュ」という発想はこのような経緯から生まれたものです。

 

「すべてにバランスのとれた臨床って一体なんだろう?」突き詰めれば、それが私のこれまでの臨床の究極のテーマでした。

 

もし本文をお読みいただいた若き歯科医師、あるいはそれをコーディネートしておられる歯科業者の方たちが、私の知識と経験を必要としておられるなら、是非ご遠慮なくお声をおかけください。

東京都区内で実際にお会いしてのご指導を基本とさせていただきます。ご連絡をお待ちしております。

ij9s-ucym@asahi-net.or.jp

 

<付記>

代官山のTSUTAYA BOOKS(http://tsite.jp/daikanyama/store-service/)で、本のコンシェルジュが人気だそうです。「この分野のこんな本が読みたい」「この分野について興味があるのだが、どれから読んだら良いかわからない」そんな客に、各分野の専門家やOBがナビゲーターのような役割で活躍しているようです。

開業コンシェルジュという言葉は、ここから発想しました。今年歯科開業医としての現役を退く私にピッタリの役目だと思いました。