今年もやってきた。
年に一回の春のマラソン大会。
私は、ひとつ決心した。
いつも話しかけることさえできない、あの人の背中を追いかけることを。
女子5km。
男子8km。
たかが3キロぐらい
部活で鍛えた足でどうにかなるはず。
あの人というのは、クラスメイト。
この春のクラス替えで、運良くクラスメイト。
同じクラスになって一ヶ月半。
まだ一言もしゃべっていない。
そんな彼の走る姿が好きだった。
去年、
たまたま、体育館の都合で自分の入っている部活が外練習だったときに、
サッカー部の彼を見つけた。
見つけたというより見入った。
他の部員に混ざって、短い距離を走りこんでいた。
彼だけが私の目を惹いた。
真剣な顔つきで、地面を蹴ってスタートして、
一点を見据え、風の音さえ聞こえそうな速さで駆け抜けたその後、笑ったあの顔に。
彼に少しでもいいから近づいてみたい。
瞬間的にそう思った。
そしてこの春、この時、
チャンスなんだと思った。
一緒に走ろう、という友達の誘いも全部断って、
私は男子のコースを走ろうと決めた。
あの人に追いついて、走りきることができたら、
そしたら、
勇気が持てる気がして。
2004/3/23