16の時の彼氏にピアスホールを開けてもらった。
私の耳たぶは少し厚かったけれど、想像していたほど痛くはなかった。
「それ強がってるみたい。」
「ピアスの何が強がってるっていうの。」
「ピアスじゃない。」
「なら何。」
「その赤色。」
「まるで居場所を必死でつかまえようとしてるような。」
「...」
16の時の彼氏は17になって別れた。
私は赤いピアスをつけた。
指で髪の毛を耳にかけるのがクセになった。
「ただ赤色が好きなだけ。」
「ふーん...」
17の冬に学校をやめて18の春に家を出た。
「あ、また髪の毛かきあげた。」
「...クセだからね。」
「ふーん...」
朝が嫌いだった。
目覚めるのが嫌だった。
「欲しいんでしょ。」
「何が。」
目覚めることは、1人であることを確認する瞬間であるから
「自分の存在する場所」
どこにいても目覚めるのが嫌だった。
どこにいても独りを感じるから。
本当は恐かった。
何かで存在を示さなければ。
私はここに在ると示さなければ。
もう言葉は出なかった。
「ここだよ。」
そのかわりに涙が出た。
「ここに居ればいいんだよ。」
その手はあたたかかった。
赤いピアスが朝陽に反射する。
確かなぬくもりを私の手に生みながら、ここに在ると示すように。
2004/2/15