試訳
Barry, Dave. Complete Guide to Guys
New York: Ballantine, 1995
部分引用の範囲で試訳します。

『男のガイド完全版』 デイブ・バリー

--- ものの見方---

 (略)
 ぼくが言いたいのは、男たちはものを見るのに恐ろしい集中力を持ち得るということだ。しかし不幸なことに、その集中力を持って眼球が満遍なく物を見るわけではない。男たちはしばしば、妻が見ている事がらの細部を見落としがちだ。スティールとボベット夫妻のこんな例がある。ある時ボベットは髪型を変えることを思いたち、思いやりのつもりでそれをあらかじめ話しておくことにした。
「スティール、あなたは今まで一度も、私が髪型を変えても気づいたことがないでしょ。今回は前もって言っておくわ。今日、新しいスタイルにするつもりよ。すっかり違って見えると思うわ。」
 さて、その日の晩スティールは仕事から帰るとすぐ、ボベットの髪がどんなに素敵に見えるか、どれだけ今度のスタイルが気に入っているか、せっせとほめ始めた。夫が余りにも熱心にわめくので、ボベットは彼の話を中断させなければならなかった。
「スティール、美容院の予約、キャンセルになったのよ。」

--- 記憶の欠落---

 これは初歩的な問題だ。男たちは1978年のスーパーボールMVP選手は誰かというような重要な事実を記憶しておくのに脳の大半を使ってしまうので、細かいことをいちいち覚えてはいられないのだ。それで、自分の子どもを車の屋根に置き忘れたりする。
 話を誇張していると思うだろうが、本当だ。92年ボストン・グローブ紙によれば母の日のこと、マサチューセッツ州の男が子ども二人を連れて外出した時、生後20ヶ月の娘のほうはしっかりとベルトを締めて乗せたのだが、(彼の話を信じれば)この種のチャイルドケア製品の細かい取り扱い手順が、神経に過剰な緊張を強いたらしい。彼は急性記憶欠落症に陥り、生後3ヶ月の息子をチャイルド・シートごと車の屋根に置き忘れてしまったのだ。インターステート290号線でアクセルを踏みながら、彼は何か変だと感じていた。グローブ紙によると「物をこするような音が車の屋根から聞こえたんだ。」
子どもを半数しか乗せていないことには気づかないのに、妙な摩擦音には気づく、これは古典的な男の行動だ。
 ともかく、3ヶ月の赤ん坊の乗ったチャイルド・シートは時速90キロで走っていた車の屋根から滑り落ち、しかし無事に290号線に着地して横滑りしながら止まり(神は男だという証拠であろう)男の子は無傷だった。この話は、彼が妻に「母の日おめでとう!」の日に何が起きたか説明しなくてはいけないことを除いては、ハッピーエンドと言えるだろうか。妻の目は驚きの余り飛び出て、隣の州まで飛んでいったに違いないが。

 もう一つの自動車冒険談と言えば、これはもう92年セクリプス・ハワード新聞に書かれたものをおいて他にないだろう。コロラド州在住の男がペンシルヴァニア州ワシントン近くのガソリンスタンドで給油し、妻が乗っていないのに気づかぬままウエスト・ヴァージニアを通り過ぎ、オハイオ州に入った。彼らには子どもが2人いるのだが、その妻はまだペンシルヴァニア州のガソリン・スタンドにいたのだ。男は妻がヴァンの後部座席で眠っているとばかり思っていた。オハイオ州コロンバスに近づいたところで、依然として普段と違うと思うこともなく、彼は少し仮眠を取ることにした。1時間半ばかり眠って目が覚めた時、彼はようやく妻がいないこと、厳密に言えば一緒にヴァンの中にいないことに気づいた。この時点で彼は方向を変え、70号線を狂気の如く東へと突っ走ったのだが、ウエスト・ヴァージニア州まで戻ったところで鹿をはねてしまった。衝突でヴァンが壊れたので、やむなくトラックの停車場へと歩いて行く途中、彼は妻と再会した。妻は警察の助けを借りて西へ移動中だったと言う。

試訳中


updated 08/27/04

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