読書メモ16

時には大きな書店に行きたい。
故郷の町には本屋さんが二軒あった。かぎや書店と玉藻書店。家に近いかぎや書店から父は週刊新潮を、兄は少年サンデーを、わたしたち姉妹はりぼんやマーガレットを買っていた。少年少女世界文学全集や赤毛のアンシリーズは、毎月一巻ずつ届いた。もう一軒のたまもはちょっとした社交の場だった。することのない休日の午後たまもに行けば、だれかしら同級生がいて、背表紙を眺めながらおしゃべりができた。
記憶に残る入り口のガラス引き戸、ひび割れたコンクリートの床、天井までの書棚が壁沿いに奥まで続く。本の匂い、硬い厚紙の表紙と少しざらついたページの手触り。
書店に足を踏み入れる時、本の向こうにある広漠とした世界に今でも少しばかり気が遠くなる。
2016年1月1日〜 
updated 12/31/16


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