山形オオクワ採集記
                                                   佐渡2号

1.はじめに
 2001年8月から通い詰めている山形県の某地にて,2002年7月5日にやっと念願のオオクワを採集す
ることができた。挑戦すること7回目にしての採集だった。これまではいずれも1人での採集だったが,今
回は埼玉のタカさん,KBさんとご一緒することとなった。両名ともに知られた採集派であり ,今回の採集
はきっとおもしろいものになるに違いない。さぁ,いよいよ待ちに待った当日,期待に胸をふくらませつつ
山形の某地へと向かった。
 
2.意外な形での♂ゲット
 めざす予定地はもうすぐそこなのであるが,我慢できずに途中にある有望街灯をチェックしながら向か
っていると,対向車線から見慣れた車がやって来た。先に到着されていたタカさん,KBさんであった。もう
既にトラップを張り終え,それをそのままにして街灯巡りを始めていたのだった(^^;;。タカさんは引き続き一
人で街灯巡りに出かけ,KBさんと私はトラップの番をすることとなった。ところが,いざトラップを張った場
所に着いてあたりを見ると,どうもこのあたりは風が強く気温も低い。これでは虫の飛来はあまり期待でき
そうもないので,トラップはこのまま放っておいて,結局,我々2人も街灯巡りに出かけることとした(^^;;。
 まず橋にある街灯をチェックする。KBさんが普通種を採集する。ここは必ず何かしらのクワが採れる
場所で,張り付いている人を見かけることもある。次の街灯に向かう。ここは倉庫の脇に街灯がある。
倉庫の基礎部分の回りを丹念に見ていくと,ドルクス系の50mmオーバーの♂が張り付いていた。有力
ポイントということもあり,頭の中はオオクワのことしかないので,何でもオオクワに見えてしまうのだろう。
思わず「オオクワゲット〜」と叫んでしまうが,しばらくして冷静になって気付く,このクワなんだか足が長
い。なんのことはない,ヒメオオの大型の♂なのであった。「全くこんなところに紛らわしいな〜」と,草む
らへポイッ。この行為が1週間後にとんでもないことだとわかるのだが・・・・・・。その直後,今度はKBさん
が「オオクワゲット〜」と道路を歩いているオオクワの♀をゲットした。今度は紛れもない正真正銘のオオ
クワである。はじめて山形産のオオクワを見ることができた。
 次の街灯へと進む。ここも建物の脇に街灯がある。先ほどと同じように基礎部分の回りを丹念に見て
いくが何もいない。特に理由はないのだが,なんとなく街灯の真下にある小さな丸太(径5cm×長さ50cm
くらい)をどけるとクワガタの♂がひっくり返っている。鳥にでもやられた死骸かなと思い,さわってみると
しっかり指をはさまれた。一瞬,自分でも「えっ!」という意外な形ではあったが,これが山形産オオクワ
初ゲットの瞬間であった。計測すると55mmの中歯であった。
 
3.まさかの♀ゲット
 この結果を早くタカさんに報告したい。そして,その驚く顔が見たい。「二人で無言で握手攻めにしまし
ょう」などとKBさんと話しつつ,さらに車で下って行くと,対向車線からタカさんがやってきた。さぁ,いざ
握手というその時,タカさんの方から先に手が伸びてきた。なんとタカさんも既に1♀を採集していたの
であった。これで全員が目的を達成したので,後はトラップを早々に片づけ,離れた別のポイントへと移
動することとした。戻る途中でも,もちろん先ほどの有力街灯群をチェックして行く。戻る途中で気になっ
ていたことが頭をかすめる。オオクワをペアーで飼育していると,よく餌皿の下に仲良く並んでひっくり返
っている光景を見ることがある。なんとなくではあるが,今回♂を見つけた状態がそんな感じであったの
で,馬鹿なこととは思いつつも,再度その丸太をどけてみた。先ほど見てから30分もたっていないのにで
ある。一瞬,自分の目を疑ったが,なんとそこには♀がひっくり返っていたのである。計測すると38mmで
あった。もうこれで何も言うことはない。1日にして念願の山形産を1ペアー採集できたのである。
 
4.トラップまでも
 トラップのところまでもどるが,期待もしていなかったのでさっさっと片づけようかと車を降りようとしたそ
の時,KBさんがトラップに向かって駆け出して行った。なんとそこには1♀が飛来していたのである。先
ほどあった風は止み,気温も上昇しているようだった。期待できそうにもないなどど勝手に判断していた
自分が恥ずかしくなった。下見をしてこの場所を選んだKBさんの判断は正しかったのである。後日,こ
のことをさらに裏付けるように,1週間後ここで5♀採集されている。
 その後,我々3人は朝の4時まで採集地を彷徨い続け,連続8時間の採集をなしとげたのであった。
終盤では,疲れ果てた私とタカさんに対して,KBさんの若さを見せつけられた採集でもあった。さすが
に30代後半の体には少々きつい採集であった(^^;;。
  
灯火トラップの様子
今回の採集結果

  灯火トラップの様子(手前がKBさん,奥が私のもの)
 今回の採集結果(KBさん2♀,タカさん1♀,私1♂1♀)
 
5.おわりに
 1週間後に再びこの地を訪れた時,1年ぶりに地元の採集者T氏にお会いした。T氏はここで数多くの
オオクワを採集されており,またいろいろな採集情報も持っておられる方である。何気なく,先週のヒメ
オオの話をすると,氏は「ここではそんなサイズのヒメオオはほとんど採れない。これはオオクワ♂の70
mmオーバーを採るよりも難しい」というようなことを言われていた。オオクワ以外にはほとんど興味のな
い私にとっては,ヒメオオのことはどうでもよかったのであるが,後々,ある方々がミヤマとオオクワを平
気でトレードするという事件(^^;;もあって,『価値観の違い』ということが某掲示板をにぎわすこととなった。
また,今回の採集ですっかり山形の虜になってしまった私は,地元新潟の某有名産地へ出かけるのを
止めてまで,この後も山形通いを続けることとなった。採れなければ通う,採れれば採れたでまた通う,
あぁこの採集馬鹿に幸あれ。


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