フランス・ブルターニュのパラレリピペドゥスオオクワガタ(2/2)

June 27, 2002
by tsuu3@田中

 

何気ない切り株


近づいて見た感じ(採集中)

削ってみた

 5月8日午後3時頃。全ての仕事が完了した。採集はラストチャンス!
明日の朝ここを発ち、パリに一泊。10日にパリを出発したら、日本には11日の昼に到着することになっている。

 仕事の合間に観察した限りでは、虫は非常に少ないことが予想される。何しろチョウ1匹と、ハチ、アリしか見ていないのだ。広葉樹、針葉樹の大木を観察しても、虫に食害された気配すら無い。順調に真っ直ぐ育った事が良くわかる。カミキリもいないんじゃないだろうか?

 こうなったらあの手しかない。そう、材割りだ。朽木を割ればいくらなんでも何か虫がいるだろう。いやいるはずだ。
しかし、道具が無い。クラフトナイフじゃたいした戦力にならないかもしれない・・・
ガーバーを持って来ることが出来たら良かったのだが・・・それはいくら何でも無理だ(^^;
どうする、諦めるか。柔らかい朽木なら大丈夫じゃないか。かもしれない。ま、とにかく探してみよう・・・

 ホテルの周りを散歩しながら、散策する。気持ちの良い天気だ。ぽかぽかとした小春日和である。
30分ほど探しただろうか。ふと頭をよぎる切り株を思い出した。海を見に行くときに、いつも見かけた切り株である。ホテルと海の間の道路の脇、テニスコートのそばに有る切り株だ。あれなら・・・いるかもしれない。

 早速切り株に行く。広葉樹の切り株に間違いない。何の木かは不明。近くには、プラタナスに似た木肌で、カシワのような形の葉を携え、白くふくれた木の実を付けた木が沢山有るが、その木だろうか?
良く朽ちた切り株である。高さは30cm程度だ。周りはかなり乾燥しており、ぱさぱさしている。
とりあえずスロープキック!
お、いけるかも。
今度は、助走して、ライダーキック!何とか部分的に割れた。

 おぉっ!これは食痕だ!
間違いなく食痕だ。よっしゃあ〜(^^)



ぶいぶいの幼虫


クワガタの幼虫


蛹室の中のパラレリ♂

パラレリ♀

 直感は当たっていたようだ。しかし、場所がなぁ〜悪いよな〜。道路脇じゃん。人通りも多いし、ホテルの人に見つかったら何と言われるか。あのジョディ・フォスター似の受付のおばちゃん(と言っても同年代だと思うが)が知ったら、それはそれは怖いことだろう。
困った。けどここは削るしかないだろう。チャンスなのだ、発見なのだ・・・クラフトナイフ出動。

 その前に、落ち着いて、蹴って割れた下の方に有る空間のフレーク状の部分を掘ってみることにした。
出た!幼虫だ、甲虫の幼虫だ。ぶいぶいの幼虫に間違い無いだろう。
このようなシチュエーションは能勢のオオクワ採集でもあったな。台木の中のフレーク中にはコカブトの幼虫や、カブトの幼虫がいて、その本体の木にはオオクワが・・・生息しているはずだ。が、私は殆ど採集した事は無いのだが(笑)
6匹のぶいぶいの幼虫をゲット。持ち帰って飼育をしてみよう。どんな甲虫になるか、楽しみである。
しかし、食痕の主じゃないよな。この幼虫は。では、食痕の主は何の幼虫なのだろうか?

 よし、次は削ってみよう。食痕をたどり、柔らかい部分から削って行く。しかし、すぐに硬くなり、削ると言うよりは割って崩して行く感じになる。
あっ、幼虫だ。
やった!クワガタの幼虫だ。間違いなく、クワガタの幼虫だ。大きさからして、これはパラレリの幼虫に間違い無いだろう(^^)
そもそもこの近辺で採集出来そうなクワガタはパラレリとユーロミしか知らないのだが。

 クラフトナイフを持つ手が痛くなってきたが、めげずに割る、削る。よっしゃ成虫が出た。ちゃんといるじゃないの。成虫が出ると、手が痛い事など忘れてしまう。削る次々に幼虫と成虫が出て来た。

 夢中で採集していると、横を通り過ぎる人達に、声をかけられたり、怪訝そうな目で見られた。外人(フランスなので、私も外人だが)さんは怪訝そうに見る。日本人の人の反応は・・・

 へぇ〜虫採りですか。私も昔やったなぁ〜
 え、田中さんて虫が趣味だったの!知らなかった・・・
 何が採れました。えぇ〜クワガタですか(@@)
 実は私も大好きなんですよ。懐かしいなぁ〜

 こうして私と同じように同地に仕事で訪れた人達に、私がむし屋であることがばればれとなってしまったのである(^^;;
しかし、皆好意的。日本人男子は皆虫が好きなのだ(^^)
さらにありがたいことに、今年羽化予定のオオクワ達の里子先が数件決まった(笑)

 結局切り株の1/3程度しか削り取れなかった。硬すぎて、クラフトナイフじゃ駄目なのだ。ガーバーを持って来ていたら良かったのにと何度も思った。ガーバーが有ったら、何匹採集出来たかわからない。かなりの数が採集出来たに違いない。



採集した幼虫達


採集した成虫1♂7♀

 こうして採集された、パラレリピペドゥスオオクワガタ達は現在日本にいる。日本に帰ってから数を数えたところ、

 成虫:1♂7♀
 幼虫:5匹

であった(^^)
♂が少ないので心配だが、累代は可能だろう。ホントはすぐにでも標本にしてしまいたいのだが、♂が少なく、累代の誘惑が勝ってしまった。

 さて、パラレリはなぜ採集出来たのだろうか?
前に書いたように、非常に虫の少ない場所にも関わらず、採集出来てしまったのだ。いとも簡単に。
たまたまだろうか?
私の採集テクが凄い!
まさかね(^^;

 どう考えても、パラレリは非常に沢山生息するクワガタとしか思えないのである。海から100m程度しか離れていない、しょぼい朽ちた切り株から、ざくざく出てきたのである。きっと至る所に生息しているのではないだろうか。もしかすると、パリの町中でも採集出来るのかもしれない。まして、郊外のベルサイユあたりでは、当たり前に採集出来るのではないだろうか?
そう、まさしくパラレリは、日本のコクワに相当するクワガタなのだと思う。

 パラレリは、ヨーロッパオオクワとも呼ばれている。しかし、その実態はヨーロッパコクワなのだ。きっと、間違い無いだろう(笑)

 皆さんもヨーロッパに行かれるチャンスがあったら、パラレリ採集に挑戦してみて下さい。きっと見つかりますよ。

 検討を祈ります(^^)
 おしまい。


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