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2002年3月21日、墓参りの帰りがけに立ち寄った鳥取県中部、天神川の支流。 多くあった柳の林は根元から切られて見通しが良くなっている。 泥質のこの河原には柳の根や倒木が沢山埋まっている。 近くに広大な河川敷の柳林や里山のコナラ・クヌギがあり、いくらでもクワガタが居そうな気がする。 私が近づくと川から青首のマガモがいっせいに飛び立った。 3本並んで柳の幹が半分埋まっている これを掘ってみよう |
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埋まっていた幹は長すぎて重い。GERBER斧で端から1mほどを切断してひっくり返し、湿った側を上にする。
端の方は古いクワガタの脱出口がたくさんある。少しずつ斧で削っていくと、いきなり成虫と幼虫が現れた。 続いて幼虫がコロコロと多数出てくる。皆じ種類に見える。 しかしアリに食われて頭だけになっているのや、菌に巻かれて真っ白になっているのも多く、材の中とて安全ではないようだ。 この時点では種類不明幼虫とヒラタ♂成虫 |
さらに削ると鳥の巣状の塊が現れた。これは成虫の蛹室の体軸方向前と後ろにある詰め物だ。 詰め物を取り除くと、ヒラタ♂成虫の大顎が初めて太陽の光を受けて輝いた。 蛹室口の詰め物(左)と、その奥から現れたヒラタ♂成虫(右) |
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取り出してみると、ツヤの消えたまともな♂だ。 他のが小さいので大きく見える(ただの錯覚よ!) 日本海側のヒラタはツシマヒラタのように大顎が長くなるという噂があるが、この大きさでは不明。 内歯の位置はツシマヒラタ程ではないが、相当付け根のほうにある。 別途ブリードで大きく育てて日本海型大顎の形状を検証中である。 とにかく柳の材採集では、材自体の養分が少ないためか、60mmを超えるような大型♂を採った事がない。 ヒラタ♂51.5mm成虫 |
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材の堅さは鉛筆ぐらいで楽に削れる。 水分もしっとりという感じ。 状態のいい場所には蛹室が並んでいる 沢山いるから小型になるのかどうかは分らない。 一番左上の蛹室にバラバラになった詰め物が見える 蛹室のアパート |
成虫たちが、木の中でじっと夏を待っている。 昨年の秋に羽化したものであろう。もう赤さは抜けている。 撮影する私の顔が写る程の光沢が美しい。 ♀のお尻のほうに詰め物が見える。 ピカピカの小型ヒラタ♂成虫(左)と、ヒラタ♀成虫(右) |
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1時間ほどで成虫6頭、幼虫数十頭が出てきた。 慎重に削ったつもりだが、成虫1頭と幼虫数頭は斧で材ごと切断してしまった。 m(_~_)m 幼虫は同じ色形で、かつ成虫・幼虫が同居していたので、種類は全てヒラタクワガタだろう。 持ち帰り用の成虫3♂2♀と幼虫5♂ ここはヒラタしか採れない 同定不要(^爆^)>えいもんさん |
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持ち帰らない幼虫は材に穴をあけてリリース。 割りカスも全てまとめて埋め戻す。 みんな無事羽化しますように! 洪水で流されませんように! 片付け終了 採集に使用したGERBER斧とバチクワ |
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さて、上で何度か登場した蛹室の詰め物である。 長さ10〜25mm、厚さ1mm程度の繊維状のものを、少量の糞で固めて蛹室の前後に配している 上の黒灰色のものがヒラタ幼虫が作った詰め物の繊維。 素材は、容易に繊維になる甘皮(樹皮の内側)かと思ったら、ちゃんと木部の材で出来ている。 試しに私が柳の材からニッパで作ったのが左下の黄色いやつ。ちぎれ易いので、薄く長い繊維状にするのは困難。 右下の白っぽいのは私が柳の甘皮から作ったもの。薄すぎてヒラタ製とは別物だ。 家で飼育ばかりしていると気づかない事実に、採集ではいつも出会う。 この詰め物は何?成虫が容易に脱出するためなのか、羽化時の排水のためなのか? 野生のクワガタの幼虫は、材を剥がしてそれを懸命に作っていたんだ。 そしてそれは、成虫として世界に出る時の扉なんだ。 上:ヒラタ製蛹室詰め物の繊維 左下:材によるコピー 右下:樹皮によるコピー |