美しい死体処理方法入門(7)
クワガタ屋のための蝶標本作成講座
k-sugano
近頃、蝶も始めたいというクワガタ仲間がぽつぽつと出てきた。
が、40才以下で蝶の標本を「ちゃんと」作った経験のある人は極めて少ない。
クワガタの標本作成は「展足」だが、蝶の標本作成は「展翅」となる。
要は、美しい羽根をカッコ良く広げた状態にすることだ。
ということで、筆者は元々蝶屋なので、展翅技法を簡単に述べてみる事にした。
クワガタムシやカブトムシなどの甲虫以外にも興味を持っていただければ幸いである。
なお、以下は「生展(なまてん)」つまり採集して、蝶が固まらないうちに直ぐに標本を作ることを前提に述べている。
採集して時間が経ち、固くなってしまった蝶の標本作成には、事前に軟化作業があるが、これはまた後日。
用意するもの
<柄付き針>
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展翅板と展翅テープの準備 展翅板の端に展翅テープを取り付ける。 左のように片側少なくとも3本の針で留める。 針を打つ場合は、直接ではなく、必ず紙の小片を介して打つこと。 |
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展翅板と展翅テープは完全に並行になるようにするが、左図のように展翅板の板の端(溝側)と展翅テープの端(溝側)は2mm-3mm空けておくようにする。
この隙間が、後ほど羽の位置決めの際、柄付き針で翅脈を引っ掛けるスペースになる。 このスペースを取りすぎると、後で触覚がテープの下に入らなくなる。 |
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採集してきた蝶。
採集した蝶はネットに入った状態でネットの外側から胸を押して仮死状態にする。 その後、ネットから取り出して三角紙に納める。 |
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いよいよ、展翅を開始する。
三角紙から蝶を取り出す。 三角紙内でまだ生きていれば、胸を押して絞める。 |
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息を吹きかけて羽根を開く。
胴体の中央に針を打つ。 針は、開いた羽根と前後左右ともに垂直であることを確認する。 |
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展翅テープを上方に開いた状態にしておき、蝶を溝に刺したあとテープを下ろして羽根を覆う。
溝に刺した針は、前後左右方向とも垂直であること。 |
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利き腕側(右利きの人は右側:以下右利きを前提とする)の羽根を、左図のPOINTに柄付き針を引っ掛け、後翅ごと上方向にあげる。
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右側の羽根が上がったら、仮留めのために、図の位置にピン(Pin1)を打つ。
このピンはあとで外すので、紙の小片を介さなくて良い。
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次に左側の羽根もおおまかに上げておく。 | |
左前翅の固定
テープを少し緩める(ゆるめると羽根が動き易い) 図の位置に柄付針を引っ掛けて、左前翅を上げて位置を決める。 位置が決まったら、テープを手前に引っ張り(引っ張ることでテープと展翅板は密着し、
これにより左前翅は固定される。
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左後翅の固定
テープを少し緩め、後翅が動くようにする。 図の位置に柄付針を引っ掛けて、左後翅を上げて位置を決める。 |
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位置が決まったら、テープを手前に引っ張り、
ピン(Pin 3 & Pin 4)を紙の小片を介して打つ。 これにより左後翅は固定される。 |
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右前翅の固定
最初に打った Pin 1を外し、左前翅と同様に右前翅の位置を決めてPin 5で固定する。 |
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右後翅の固定
左後翅と同様に右後翅の位置を決め、テープを引っ張り、Pin 6及びPin 7を打つ。
触覚の固定 2本の柄付針を駆使して、触覚をテープの下に入れてから、
最後に、Pin10とPin11で後翅をしっかり固定する。
図の青い線に示した様に、前翅の後端が水平になるようにするとカッコ良い。 ; |
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1週間から1ヶ月(季節と蝶のサイズによる)風通しの良い乾燥した場所に紙箱などに入れて保管する。
その後、慎重に針とテープを外すと完成。 |
展翅板、展翅テープ、昆虫針、パールピンなど展翅に必要な用具は
志賀昆虫普及社 03-3409-6401 東京都渋谷区渋谷1-7-6
むし社 03-3383-1461〜2 中野区中野2−23−1,ニューグリーンビル
蝶研出版 0726-27-9828 大阪府茨木市総持寺 1-13-27
などで求めることができる。