ついに! 2002東京ヒラタ採集記

by えいもん

 今年も東京ヒラタを求め、年明けから、毎週末のように早朝採集に出かけている。日の出の遅い冬場は、家族の本格的な活動開始に間に合わせて帰宅するには、あまりに短い時間しか採集にとれないが、長くやっても凍えるだけである。幸運なことに、下見を重ねているうちに良さそうなポイントを見つけることができたので、そこを集中的に探ってみた。

 すると、今年の割り出し第一頭目から、コクワじゃないっぽい(へんな日本語)幼虫が採れた。そんな「不明」幼虫が、その後、そこに採集に行くたびに少しずつ採れる。

[不明幼虫1] こんなのや

[不明幼虫2] こんなのや

[不明幼虫群] この中にもなにやら

[不明幼虫3] これは採集した2令幼虫が加令したもの

 しかし、成虫が出ないことにはどうにもヒラタGETとの確信が持てない。そんな折り、わたしと同じく都区内在住のピーコさんに、そのポイントをご一緒していただくこととなった。


 3月2日、ピーコさんに同行していただいて2度目の採集であった。朝7時に現地で待ち合わせて、ポイントに二人して足を踏み入れると、材溜まりの脇に放置された、大きな材が目に留まった。ヤナギの根部が掘り起こされたもので、表面は既に相当乾いていた。誰かが削った跡も見られた。

 「ヒラタ幼虫は地中に埋もれた湿った材」との既成観念に縛られていた自分としては、削るのに躊躇するような材ではあった。しかしながら、ヒラタ成虫は案外こういうところにいるのかも知れない、という感じもあった。そんなことを思う間もなく、ピーコさんが、ご自慢の小型のツルハシで削り始めた。

 すぐに食痕が走った。けっして太くはないが赤みのある食痕で、ヒラタのものに思えた。堅い材であったが、ピーコさんのツルハシの威力がいかんなく発揮される。

 やがて、ピーコさんが声を上げた。蛹室が空き、その中に成虫が見えたのだ。ピーコさんがそっと引き出す。♀だ。自分にはヒラタとの確信に近いものがあった。削りカスを払いのけると、ピカピカの、紛れもないヒラタ新成虫であった。

 思わず拍手してしまった。自分としても、やはりこのポイントにヒラタがいた、ということが実証できて、とても嬉しく思えた。

[ヒ成虫1] 出ました

 削り跡をよく見ると、他にまだ食痕がある。こんどは自分が追う。何度か斧を振り下ろすと、ポコッと蛹室が空く。また、いた。やはりヒラタ♀成虫である。

[ヒ成虫2] またまた

[ヒ成虫3] ここにも

 このように、ほとんど交互に、夢中でヒラタ成虫を割り出していった。古い蛹室が空き、その中をマグライトで覗くと、2頭一緒に入っていたりもした。越冬成虫であろうか。それをピンセットでつまみ出すなんて、まるで夏場の採集のようでもあった。

 しかし、♂が出ない。♂の羽化不全の死骸が割り出されたりはした。大顎からすると、50mmはあろうかというなかなかのサイズで、まことに残念。また、大きめの空間に、♂であろう頭幅の大きな幼虫が黒くなって死んでいるのも見られた。♂の蛹・幼虫は、材を掘り出された環境激変についていけなかったのだろうか。それとも先行者は♂を採ったのだろうか。

[ヒ死骸] う〜ん、もったいない

 とにかく次から次へと♀成虫ばかり。1頭自分が潰してしまい(ごめんよぉ)、結局8頭を割り出したところで自分が時間切れとなり、採集を打ち止めにした。この間、幼虫は種不明な2令が1頭採れただけであったのも、不思議な出来事と言えた。一つの材に2時間ほどの、実に効率的な採集であった。

[ヒ成虫群] タコ採れ?

[材] 「逸材」とピーコさんの小型ツルハシ


 東京ヒラタを追い続けて、ついに明らかな成果が出た。しかも、それは、ピーコさんのおかげもあって、自分には予想できなかったほどの十分過ぎる成果であった。成虫は♀だけではあったが、これで、これまで採ってきた幼虫に、♂も含めてヒラタが混じっているとの確信を持つことができた。

 それにしても、近場とはいえフィールドに出ていると、いろんなことを経験させてもらえるものである。とてもありがたいことだ。

(追悼) 
 この次の採集で、ピーコさんの小型ツルハシが他界してしまわれました。故人?の数々の偉業を称えつつ、謹んでご冥福をお祈り申し上げる次第であります。 

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