「田老のニジイロ伝説」

前章−新世紀会−(1月20日)
 
 

今年も新年会に出かける。21世紀の最初ということで新世紀会といった

ところだろうか?例年新年会は、盛り上がるし、私自身なかなか都心へは

出る機会がない&いろんな方に会えるので大変楽しみにしている。

が、都心に出るといつも道に迷うし、電車の乗り換えも複雑である。

今回は比較的迷わなかったが、その分1時間も早く到着しすぎ、

結果、悩んだが一番乗りになってしまった。(斉藤さんお手数をかけました)
 
 

さて、新年会ではビンゴが売りの一つである。冬のこの時期によくムシが

集まるものだと感心してしまう。私は国産カブト(鹿児島産ワイルドである)

を持っていった。国産カブトの出品は私だけだ。(^^;;;

集まった景品が例によって山を成している。聞いたことのないムシばかりだ。

新年会の準備に、皆で仕分けやらラベル貼りやらを行う。
 
 

エンダー氏が準備の合間になにやら小さなものを手渡してくれた。

不振がる田老に「ニジイロですよ」とエンダー氏がささやく。

なんと、あのニジイロが新世紀会の席で飛んできた。ばんざぁーい!!である。

はるか以前、エンダー氏の「湧かせますから、待っててください」

という一言に

「是非お願いします」

と頼んだのを、親切に覚えていてくれたのだ。
 
 

ボォーっとしていて気が付くと、準備はとっくに終わり、エンダー氏は

もう別の席に行って居ない。

田老は、まだお礼を言っていない。感謝の気持ちを伝えなくてはならない。

席を立ちかけた私の隣に、HC7氏が滑り込んできた。
 
 

念のためご存じない方々(居る?)にご紹介しよう。

HC7氏は、姿形は元よりその行動までが、かのG13(ごるごさーてぃーん)

に瓜二つ、生き写しどころかそのモデルだと密かにウワサされている方である。

もしかするとウージー(S&M?)なんてのを持ち歩いてるかもしれない。
 
 

ワザワザ、そのHC7氏が自ら見えたのであるから、お話を伺わなくては

ならない。(本来なら田老がご機嫌伺いしなきゃならないところだ)
 
 

HC7氏「(ボソボソ)田老さん、ニジイロ、今持ってるでしょ」

ほとんど断定である。
 
 

田老(ゲゲッなんで知ってるんだ。さっきまで私も知らなかったのに)

「えっ?えぇ、エンダーさんからたった今頂きました。」

この情報収集力、やはり、G13のウワサは本当だ。
 
 

HC7氏「(ボソボソ)クワ馬鹿に飼育記を書いてください。

(念を押すように)元よりエンダーさんも承知のことです。(ぼそぼそ)」

なんと応えていいのかドギマギしている私を見て、いきなりスクッと立ち上がる

と(ウージーが出てくるかとギョッとしてしまった)

「(ボソボソ)エンダーさん、ちょっとこちらへ」と同じ調子で言うのである。
 
 

その時エンダー氏は、斉藤さんの店のほぼ反対側に居た。

この喧噪のさなか、聞こえるハズがない。誰しもそう思うだろう。

が、エンダー氏は、コチラを振り向くとうなずいてやってくるではないか!!
 
 

HC7氏「(ボソボソ)例の件」
 
 

エンダー氏(軽くうなずいて)「田老さん、もう決まったことです」

心なしか疲労の色が見えるのは私の気のせいだろうか?
 
 

エンダー氏「抵抗してもムダです。」(でした)と聞こえたのは

わたしの錯覚だろうか?
 
 

田老「・・・」

気圧されて言葉が出ない私を置いて二人は去った。
 
 

とHC7氏が、戻ってきてささやいた。

「(ボソボソ)1月20日、☆。なんてのはダメですよ。」

予言?なのだろうか。。。
 
 

低温に弱いと聞くニジイロを、私は内ポケットにしまってあった。

その内ポケットが今はズシリと重い。。。

エンダーさんにお礼も言ってない。。。
 
 
 
 
 
 

第1章−「1月20日、☆。」−(1月21日)
 
 

昨夜帰宅してすぐ、ダンボール改造温室に入れて置いたニジイロ。

封を開けてみると、菌糸カップが1個しかない。

渡されたときに「4頭ですよ」と確かに聞いた気がするのだが。。。

チラっと4頭でカップ1個?変だな と思った記憶があるのだが、

HC7氏との衝撃の会見でアタマがイッパイで、忘れてしまっていた。

まさかカップ残3個無くしたりはしない(ハズだ)。自信はない。
 
 

とりあえず、カップをよく見る。

横に黒丸と数字がある。なんだろう?

1/13、1/14、1/13、1/15。

食痕は、、、、、無い。不安だ。

過去の田老棚の実績では、少なくとも体重7gを越えていないと著しく

生存率が悪い(というより育たない)。そして、7gのいもむしなら、

菌糸カップに1頭しか入らない、かつ横から見えるのである。

さらに7gのまま蛹化羽化と続く、でかいビンは要らない。省スペース。。。
 
 

フタを見る。

いつものようにエンダー氏作成の美しいラベルが貼られている。

綺麗なニジイロの姿が、カラー印刷されている。おそらく親虫であろう。

エンダー氏の細部にまで気を使った丁寧な飼育姿勢がしのばれる。

採卵日が記されている。

1月5日!?

「チョット待ったぁ!!」

「卵だとは聞いて無いぞ!」

(田老棚では国産カブト以外、採卵した卵は、卵のまま一生を終えることに

なっているのだ)

それにしても、卵も見えない?

エンダー氏は、カップの横から卵を観察するのが趣味のハズだが。。。。
 
 

「!」

「さっきの黒丸は?」・・・卵のあった位置の目印に違いない。

「すると数字は?」・・・孵化日ということになる。

「ということは?」・・・ゲゲッ初見参で、田老棚では、最も困難と

される超A級飼育テクの必要な(ど)初齢いもむし!?

(もちろん、初齢なんて国産カブト以外育った実績はない!)
 
 

これは。。。。

コトはあまりに重大すぎる。初齢や2令が田老棚で育たないことは

エンダー氏はよくご存じである。(悲しい歴史があるのだ)

昨夜のエンダー氏の疲労の色は、、、やはり気のせいなんかではなかった。

たぶん「田老さんの実力ではムリですよ、早すぎます」と抵抗したに違いない。

きっとあまりに悲しい抵抗だっただろう。。。
 
 

さてそうなると、ここで辞退申しあげるべきか?がんばるか?

辞退への強い誘惑が。。。だが、辞退して私が夜道を歩けなくなるだけでは

ないだろう。エンダー氏や三多摩の皆の顔が胸をよぎる。

(確か劇画では、G13には夜昼関係なかった気がする)

ここは、、、挑戦しかない。最初からそうなのだ。挑戦しかなかったのだ。
 
 

気を取り直して、カップを開ける。まず黒丸印の場所を、まどらーすぷーん

で探る。いもむしは既に移動したらしい、黒丸印のところはもぬけの殻である。
 
 

−−−余計なことだが、私はカニスプーンは使わない。あの尖った先っぽが

危険だとおもうからである。マドラースプーンは掬える容量が少ないと

不評だが、田老棚のようにでかいいもむしと無縁=ワンカップが主力の

場合、丁度良い大きさのように思う。−−−
 
 

さてコマッタ。このまま小さなカップをかき回していては、いかにマドラーだ

とて初齢を潰してしまう。

仕方ない。エイヤッとばかりにカップの中身を全てぶちまける。

カップ型の小山がトレーの上に鎮座している。これを端からそぉーっと

崩し始めた。
 
 

居たっ!1頭。また居た。またまた?。なんだコイツは?いやに長いぞ?

ワァッミミズだ!これは?こいつもミミズだ!
 
 

結局、初齢×3とミミズ×2が出てきた。4頭目はいくらかき回しても居ない。

HC7氏の予言がアタマをかすめる。

「1月20日、☆。」
 
 

かくして田老のニジイロ飼育は、(ド)初齢、3頭で始まった。

終わりは、まだ わからない。明日かもしれない。
 
 

−−−飼育資料−−−

容器:菌糸カップ3個に個別飼育

飼料:菌糸カス(根拠はない)

温度:23度(のつもり)