初心者でもできた外国産カブト飼育レポート

ゴホンヅノカブト編

by エンダー

初令から飼育し羽化させたゴホンヅノカブト♂75mm


<はじめに>

 
私は、現在ヘラクレス・ネプチューン・グラントシロ・アトラス・ケンタウルス・ノコギリタテヅノ・ゴホンヅノなどの外国産カブトを飼育していますが、とりわけゴホンヅノの♂のフォルムに魅了されています。まさに恐竜のように過剰発達した角とツートンカラーが大好きで、常に♂成虫を傍に置いておきたいと思い飼育を始めました。飼育歴1年を経過して一応、幼虫−蛹化−羽化−産卵−孵化という各ステージを経験することができましたが、??と思われる謎も多く、十分な飼育レポートにはなっていないと思います。ゴホンヅノは容易に入手できますし、飼育は難しくないのですが、今ひとつ生態がはっきりしない点があります。私の疑問点を解明される方がいらっしゃらないかなぁ?と思い投稿いたしました。
【我が家のゴホンヅノ系統】

系統(1) 99年11月初令幼虫4頭を購入、現在2♂1♀羽化、1♂蛹。

系統(2) 99年11月羽化新成虫ペアを2000年1月購入、2000年12月現在生存。

系統(3) 2000年10月ワイルドペアを購入。成虫は11月☆、幼虫70頭孵化。

 

<幼虫飼育>

幼虫飼育は、クワ馬鹿同号掲載のヘラクレス飼育編と基本は同じですので、環境等はそちらを参照願います。違う部分のみまとめると、以下の通りです。

1.飼育環境

  • ケース
  • 3令初期まではミニプラケまたは特大プリンカップ、以降は小プラケで十分ですが、暴れ出したら(蛹化の項参照)色々な環境に移した後最終的には、深い容器に移しました。

    2.幼虫期間

    系統(1)99年11月孵化−♀が2000年6月蛹化(約8ヶ月)

    系統(1)99年11月孵化−1♂(No.1)が2000年9月6日蛹化(約10ヶ月)

    系統(1)99年11月孵化−1♂(No.2)が2000年10月蛹化(約11ヶ月)

    系統(1)99年11月孵化−1♂(No.3)が2000年11月蛹化(約12ヶ月)

    3.幼虫の成長

    幼虫は孵化後6ヶ月もすると黄色くなりはじめる個体が出てきます、最も大きかった♂(No.3)の最大体重は孵化後10ヶ月目で記録しました。ゴホンヅノカブトも標本等では短角系も見ていましたし、ブリードでは短角も出ている方が多いとの話しも聞いていましたので、長角が出せるかどうかが最大の関心事でもありました。羽化した3♂の体重と成虫の様子の関係は以下の通りでしたので、ご参考下さい。結論から言うと、ブリードで長角は簡単に出せると思います。ポイントは幼虫を大きくすることであることは勿論ですが、蛹化の項で述べるスムーズな蛹化も大事ではないか?と思います。

     

    ♂の最大体重と成虫の姿は下記の通りです。

    No.1:40g、成虫75mm
    No.2:短角、25g
    No.3:59g、蛹長86mm
     
    No.2は幼虫時♀だと思っていたものです。3令脱皮時に拒食症にかかりマット上に出ていましたが、なんとか羽化しました。

    No.3は蛹時の大きさを見る限り、No.1よりも遙かに大きいです。

    以上3頭の♂の経験しかないですが、やはり幼虫時の大きさが角の長さにも影響するのは明らかのようです。40gオーバーを目標に大きくできれば、十分長角が羽化するのでは?というのが現在の見解です。

     


    <蛹化>

    ゴホンヅノ飼育最大の難関は蛹化です。幼虫飼育を行っていたプラケのままでは蛹化場所を探すワンダリングが激しく、シワシワの黄色になってもケースを食い破ろうとしたり悲惨な状況となりました。

    この件については、「まちかね掲示板」に「暴れるカブト幼虫対策募集!」というポストをしてありますので、併せてご覧いただきたいですが、良いアイディアがあったら是非教えて欲しいものです。

    簡単に要約すると、以下のような失敗を経ながら最終的になんとか蛹化に辿り着きました。

    対策(1):密閉

    これは容量2Lほどの漬物用の丸いタッパにマットを上まで敷き詰め、幼虫が出てくるスペースを無くしたものですが、マット上でグッタリの状態になってしまいました。この方法でアトラスは無事蛹化しました。

    対策(2):大プラケに移住

    これは小プラケの状況から全く改善しませんでした。同じく(1)で失敗したノコギリタテヅノも駄目でした。

    対策(3):深いビンに入れる

    最終的に成功したのは、梅酒用5Lビンに「堀江マット」をカチカチに詰めて入れたものでした。マットを換えたのは、ワンダリングが始まると殆ど食べていないようですし、対策(1)で蒸れた状態を嫌っているように思われたからで、水分はやや少な目に加湿しました。しばらくは上部に出て這い回った形跡がありましたが、やがて深いビンの底に蛹室を形成し、早いもので1ヶ月、遅いもので約2ヶ月後に蛹化しました。同じゴホンヅノでも17ヶ月もかけて暴れているという方もいらっしゃるようですし、速やかに蛹化したおかげで消耗が少なかった方なのかもしれません。

    この方法は、同じようにワンダリングで悩んでいたノコギリタテヅノカブトでも成功しており、立派な長角蛹になりました。「まちかね掲示板」では、下部に土を入れ固める方法で成功された方の紹介がありましたので、他にも対策があると思います。土を入れるという対策については私も今後実験してみたいと思います。

     

    蛹化用の梅酒ビン5Lと堀江マット

    上部の穴はキッチンペーパー等を貼り付けました

     


    <羽化>

    羽化については、♂♀ともオアシス人工蛹室、♂はビンの中のままの両方で成功しています。オアシスの場合は、しっかりオリジナルの体積を再現すれば問題ないと思います。普段は仰向けになっている♂も気が付いたらうつ伏せになり羽化していました。

    オアシス人工蛹室で羽化直後の♂(No.1)

    蛹の期間については、♀で約1ヶ月半、♂で9月6日蛹化、11月21日羽化(46日)という記録が残っています。

     


    <成虫飼育>

    成虫飼育については、実は最大の謎があります。冒頭で記した我が家の系統(2)(新成虫で購入)は現在では知人に差し上げているのですが、羽化後1年を超えて今が最も活発な状態にあります。11月羽化物を翌年1月に購入したのですが、私が飼育していた8月までは全くといっていいほど活動せず、後食もしませんでした。ところが知人宅に里子にいったところ、急に起き出してゼリーも食べているというのです。単純に時期の問題であったのか、我が家が25℃上限に対して平温飼育していた知人宅では恐らく30℃超える状態もあったという環境の違いが原因なのかは現在の所不明です。現在では飛ぼうとしたりと羨ましい限りの活発さです。

    一方ワイルドで今年10月に購入した系統(3)は、♂♀とも旺盛にゼリーを食べていましたが、♂は1週間後、♀は約1ヶ月間産卵した後に死んでしまいました。原産国のタイでは9月〜11月にゴホンヅノが大発生するという話を聞いたことがありますが、系統(2)の成虫寿命から考えると、実はかなり前から羽化していた新成虫は長期間地下で眠っており、なんらかのきっかけ(気温差とか気温)で9月以降に一気に出てきて交尾し、子孫を残すのではないか?との仮説が成り立つのではないかと思います。これにより♂♀の羽化時期のずれを解消できるのかもしれません。

    ゴホンヅノ=大人しいというイメージは確かにありますが、ワイルド購入の♂は短い間でしたが活発でした。最期はどうも♀に喰われてしまったようですが…

    現在は寝ている新成虫が、今後交尾し、産卵まで持っていけるのかは、この謎を解明しないと無理かもしれないという危惧がありますが、成功したらまた報告したいと思います。

     


    <産卵>

    ゴホンヅノの産卵は、系統(3)のワイルド1♀で行いましたが、1ヶ月の間に70個の卵を採れるという猛烈なペースでした。

     

    1.産卵セット

    50Lの衣装ケースにPCファーブル社が「黒クヌギオーガニック・マット」をベースにタイの竹林の腐葉土を混ぜて販売したものを使用しました。通年で購入可能とは思えませんが、同時期に普通のセットで産卵させたクワ馬鹿友人もいますので、普通のカブトセットで大丈夫だと思います。

     

    2.卵の取り出しと孵化

    卵については、ヘラクレスと同様全て取り出して、プリンカップ内で孵化させました。ゴホンヅノについては孵化率が低いという報告を見ますが私の場合には90%が孵化しました。保管方法もヘラクレスと同じですので、記事を参照下さい。卵は約1ヶ月で孵化します。

     

    プリンカップ内で孵化直後のゴホンヅノ初令幼虫

    卵の殻を直ぐに食べます

     


    <おわりに>

    ゴホンヅノはワイルドにも劣らない大型個体をブリードで出すことも可能であると判りましたが、活動までの長い休眠など、累代に向けては課題も残っています。是非皆さんのご経験やご意見を「まちかね掲示板」にポストして、ゴホンヅノの飼育法を確立していきましょう!

     


    エンダー:ender@ad.wakwak.com


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