初心者でもできた外国産カブト飼育レポート
ヘラクレスオオカブト編
by エンダー

初めて羽化させたヘラクレス・ヘラクレス(グアドルーブ)♂135mm



<はじめに>

 私は、飼育歴もようやく1年を超えたクワ馬鹿初心者でありますが、初心者なりの試行錯誤を繰り返してヘラクレスの幼虫−蛹化−羽化−ペアリング−産卵−孵化という各ステージを経験することができました。憧れの虫であったヘラクレスに飼育歴2ヶ月で手を出してしまったわけですが、結論から言うととても飼育し易い虫であるといえ、初心者でもどんどん挑戦すべき種類であると思います。1年前と比較して、ヘラクレスも簡単に入手できる種となり、飼育されている方、これから飼育しようと計画されている方も多いと思います。本稿は、飼育初心者として「こういう情報があれば助かった」という観点から自分の経験に基づいて、可能な限り具体的にレポートさせていただくものであり、必ずしもベストの飼育法とは限らないものであることをご了承願います。また、私の経験したヘラクレスの飼育は、以下のように複数の系統でありますので、本稿の各ステージは必ずしも連続したものでないことにご注意下さい。

【我が家のヘラクレス系統】

系統@   リッキー(6頭)99年11月初令にて購入
系統A   リッキー成虫ペアを99年12月購入
系統B   ヘラクレス(3令幼虫2頭)99年6月孵化物を2000年2月に購入

 

<幼虫飼育>

 幼虫飼育での最大のポイントは、♂の幼虫をいかに大きく育てるか?に尽きます。基本的には、温度管理を行い、適切に餌替えを行い、適切なスペースを与えてやることで殆どの幼虫はすくすくと成長していきます。♀に関してはかなりズボラでも問題なく成虫になります。以下は私の飼育環境及び飼育の際注意した事項でありますが、この方法で冒頭のヘラヘラ♂が購入時55g→103gで羽化時135mm、リッキー(系統@)の♂の幼虫体重が現在までで122g及び115gと、十分大型に成長しています。

1.飼育環境

温度エアコン使用により通年25℃±2℃の室温を維持しています。
マットPCファーブル社の「黒クヌギオーガニック・マット」を使用。交換頻度は基本1ヶ月に1度。♂は出来るだけ新鮮マットを心がけ、可能なら全部取り替え、♀は半分くらい取り替えを行っています。半分交換の際にも、粗めのフルイにかけて糞を取り除きます。
湿度新しいマットの場合は、ある程度湿度がありますのでそのまま使用しています。その後は極度に乾燥しないように注意しながら、時々霧吹きで加水します。
ケース3令初期まではミニプラケまたは特大プリンカップ、以降は中プラケで♀はそのまま蛹化、♂は80gを超えたら大プラケに移すようにしています。

2.幼虫期間

 系統B99年6月孵化−♀2000年4月28日蛹化(約11ヶ月)、♂2000年6月29日蛹化(約13ヶ月)
 系統@99年11月孵化−♀2頭が2000年11月蛹化(約12ヶ月)

3.幼虫の飼育マットについて

 大抵の飼育書や飼育レポートでは、オオカブトの幼虫飼育には「発酵が進んだマット」が良いと書いてありますが、初心者の私には発酵の程度などが判断できずに悩んだものでした。フスママットも自作していましたが全く自信が無く、大事なヘラクレス幼虫なので実績のあるマットを使用することにしました。

 ただし、亀有カブトさんピーコさんなどのクワ馬鹿大先輩達は、自作フスママット等でさらに立派なヘラクレスを育てていますし、系統Aの子孫達を60頭ほどクワ馬鹿達に配りましたが、皆多様なマットを使用しながら100gアップまで成長させていますので、適応範囲はかなり広いと思います。この場では、少なくとも市販のマットによりここまで育ったという事実のみをご参考いただきたいと思います。また、ドッグフード等による飼育を試みられている方もおり、成功していますが、私は未経験なので割愛させていただきます。

 上記のPCファーブル社の黒クヌギオーガニック・マットに行き着く前にいろいろな市販マットを試して見ましたが、加水すると再発酵して熱を発生するものもありますので、初心者には特に注意が必要だと思います。

4.幼虫の成長

 幼虫の餌換え時には、必ず体重を量るようにしています。第一の目的は立派な♂になるべく成長しているかどうか確認するためです。私の周辺で立派なヘラクレス♂をいち早く羽化させたピーコさんが幸いにも成長記録を採ってありましたので私はこの記録を「P曲線」と呼んでリファレンスとして活用しています。具体的には下図のようにグラフ化して比較していますが、結果として雌雄の判別にも活用できています。グラフ化する際の工夫としては、ピーコさんの飼育記録が下表のように25gからスタートしているため、25gに達したであろう日を25g未満の直近の日付と25gを超えた日の日付から推測してその日を起算日としているため、孵化日からの経過日数とは異なることにご注意下さい。

 グラフを見て判るとおり、25g(3令初期)から60g近辺までは♂♀共に1ヶ月で25g近いペースで猛烈に成長します。この頃からマットの食いも目に見えて良くなり、中プラケ一杯のマットが1ヶ月で半分程度まで減ってしまう程です。その後は♀は70g程度をピークに体重では停滞する一方、♂は80gあたりまでそのまま成長し続けますので、60gからの3ヶ月程度で雌雄の判別は出来るのではないかと思います。P曲線を見て私が勝手に目標にしたのは、とにかく100gを超えることでしたが、60gから80gまでの間に成長ペースが鈍りますので、気を揉む時期でもありますが、P曲線がなだらかに蛹化まで成長し続けているという事実を知っていたため、P曲線を上回っているうちは冷静に飼育を続けられました。結果的には80gから100gに再び成長速度が加速して一気に100gを超え、最大のものは現在122gまで達しています。この停滞から再加速の原因については不明ですが、80gから大プラケに移したことがきっかけだった可能性はあると思います。もし60gから大プラケに移してたっぷり餌をあげていたら異なる成長過程となったかもしれません。



次のページへ