初心者でもできた外国産カブト飼育レポート
ヘラクレスオオカブト編
by エンダー



<蛹化>

 ヘラクレスはいつの間にか蛹化してしまいます。他のカブトに見られるような蛹化場所を探すワンダリングもしないように思われます。蛹室作成−前蛹状態も毎日ケースの底を覗かない限り気が付かない程です。♀の蛹化は心配する必要がありませんが、♂については十分なスペースがあるかどうかが重要だと思います。私は1♂のみしか♂の蛹化経験がありませんが、蛹室の長さは蛹の体長+30mmほどあり、約175mm程でした。この長さは大プラケの短い辺の長さを超えており、もし蛹室の角度が90度異なっていたら足りなかったのではないか?との危惧があります。次の♂蛹の写真を見てお判りのとおり、♂の長い角のカーブは背中のカーブと面一になっており、蛹室の曲面が角形状に影響を与えている可能性を示唆しています。私は直接見たことがないので多くは語れませんが、長角が横に曲がっていたり、下に曲がりすぎていたりという事故が稀に発生しており、これは蛹室の形状(スペース)に問題があったのではないか?と推測しています。ヘラクレスが本能的に十分なスペースをとれる場所に蛹室を作るのか、偶然に任せるしかないのかは判断できませんが、現在前蛹である♂幼虫も長い辺に沿って蛹室を作っており、何らかの判断を幼虫がしているのではないかとも思っています。勿論蛹室を作り始めていると判断したら、餌換えは一切行わないようにします。

ヘラクレス・ヘラクレス♂の蛹(幼虫時最大体重103g、羽化時体長135mm)

 蛹の期間については、ヘラクレス・ヘラクレスの経験では♂が56日、♀が46日でした。
 蛹の保管については、私の場合は♂♀共ケース底にミミズが見られたので、オアシス人工蛹室に移し、適度な湿度を保ちました。

 

<羽化>

 羽化については、現在ヘラクレス・ヘラクレスの♂♀の実績がありますが、♂の羽化写真がありません。実は最大のトラブルが♂の羽化時に発生したため写真を撮る余裕がなかったのです。ヘラクレスの蛹は羽化の2〜3日前になるとくすんだ色に変色しはじめますが、その時点で長さが足り無そうであること及び寝返りをうとうとしてもうつ伏せになりにくいというオアシスの欠点が気になり、中プラケにマットを敷き、窪みを付けて♂の蛹をうつ伏せに置いてやりました。今か今かと夜も寝ずに監視体制を敷いておりましたが、有休を取得して待機した日には羽化せず、その翌日会社から帰宅すると、既に羽化が始まっており、その上マットの窪みが浅かったため羽が白いうちにひっくり返ってもがいている状態でした。さらに悪いことに、内羽が脚に絡まっており、一部が裂けて体液が漏出するという絵に描いたような羽化不全状態となっておりました。丹誠込めて幼虫飼育を行ってきて、最後の最後に羽化不全してしまうというのは、クワガタ・カブト飼育における恐怖の瞬間だと思いますが、1頭しかいないヘラクレス・ヘラクレスの♂、十分立派な大きさの蛹になって羽化を心待ちにしていたのに、ショックのあまりその場に立ちすくんでしまう状態でした。

 内羽を損傷したために、収納することが出来ず、数時間に渡り収納行為を試みて消耗していく♂を見て、私は遂に決断して手術を施すことにしました。具体的には、

  •  ガス火でデザインナイフを熱し
  •  損傷している内羽を手で延ばして
  •  損傷部分の少し上で手早く切除
  •  再度ナイフを熱し、体液が漏れている切除部分を上から圧迫して焼く

という手順でしたが、ヘラクレスの体液にもタール状になって漏出を止める効果もあるようで、何とか内羽が収納されて、安静状態にすることができました。その後は、Fan Linさんのアドバイスもいただき、細菌感染しないように乾燥気味のマットを入れたケースに入れて置いたところ、1ヶ月ほどで後食を開始して元気になりました。外見上は冒頭の写真のように普通の状態のように見えます。

 ♀については、1ヶ月程で後食を開始し、異常なほど大量のゼリーを食べます。ワイルドで購入した系統Aのリッキー♀と比較すると、新成虫の♀は倍の量を食べるように思えます。



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