助手席日記 (檜枝岐でおむし番編)


みなさん、こんにちは。助手席@あいあん車です。

今年は9月までに、9回も檜枝岐に連行されています。
「いい加減に飽きたぞぉ。もっと他の場所へ連れてけー。」
と叫んでみたところでこの人の檜枝岐通いは当分止みそうにありません。
この日記をご覧のみなさんで今年9回も檜枝岐に行った人いますか?(きっと居ないと思う(涙)。)
でも、まだあと1〜2回は行くことになるんだろうなぁ。このままでは私は不幸だぁ。
いつまでも君の助手席にいると思うなよ。

と、思いつつも、7月19日この日もいつものように助手席に乗り込みます。
相変わらず高速代をケチって国道4号を北上します。
東京を抜け埼玉、栃木とだんだん明かりが少なくなり、慣れたとはいえまだちょっぴり不安です。
夜通し5時間も運転するのだから普通の人ならだんだん眠くなるはずなのに、「檜枝岐に近づけば 近づく」ほど、この人の目はだんだん活き活きとしてきます。
今度からたった2時間の映画で寝ないでね。

さて、早朝いつもの林道に到着です。
車内からヤナギを見て進みます。すると前方に同じくムシ採集者らしき人。
見知らぬ人との挨拶といえば以前は
「クワガタ採集ですか?」
とか
「どうです、採れてますか?」
なんていう言葉だったんですが、最近はいきなり
「もしかして、あいあんさんですか?」
だもんね。
あなたの檜枝岐通いは異常に多すぎるということに気がついてる?
ついてないよね。(あきらめ)

林道でいつものようにヒメオオクワガタの採集が始まります。
朝から飲まず食わずで延々とムシを採り続けています。あれだけ歩き回って喉が渇かないのかな?  昼になっても全く食事をする気配なしです。
「ねえ、ごはん食べないの?」
「採集している間はおなかが全然すかないんだ。俺のヒメオオに対する情熱はそれぐらいアツイのさ」
採集しないときはビールをガバガバだから、皮下脂肪もアツイよね。

午後も3時をまわるとさすがにトイレの我慢が大変です。 まだまだ未練顔のあいあんを乗せて、半ば強制終了で林道をあとにします。 村に戻り食事を済ませるともう夕方です。
私が温泉でゆっくりしている間に、この人は灯火採集の準備です。 準備に2時間ぐらいかかるのでほとんど温泉には無縁の人です。
ムシは本当は明かりに飛んで来るんじゃなくて、あなたの汗臭さに飛んで来るんじゃないの?

午後7時をまわると山と空の境界がにじみ始め、星も一つ、また一つと増えてきます。 空が真っ暗になる8時過ぎ、天上には綺麗な天の川です。
こんなに綺麗な夜空なのに目を皿のようにして地面のムシを探している君は不幸?
いや、やっぱり幸せなんでしょうね。

今日は綺麗な空のせいでちょっと気が向いたので私もムシ探しをしてみようかな、と思っていると
「俺はちょっと街灯見てくるから留守番してて。」
えーっ、私を一人でこんなとこに置いていく気? 怖いよぅ。
「絶対に早く帰ってきてね。」
「わかったわかった、10分で帰る。」
ということは30分か。

一人で懐中電灯とピンセットを手に灯火のまわりを歩きます。
クワガタが飛んできます、けど、それ以上の蛾がすっごくたくさん。 まっ白いシーツがまるで茶色や黒の水玉模様です。うーん、いやだよう。 でも頑張ってピンセットでクワガタをつまんではケースに入れます。
これじゃ「お留守番」じゃなくて「おむし番」じゃないかー。

水玉模様のシーツ水玉模様になってしまった白いシーツ

予想通り30分後に彼は帰ってきました。
お目当てのオオクワガタは採れなかったようです。 自分のこの灯火セットでは4頭も採れているらしいのですが、でもそれはすべて 本人が席を外したとき。運がないんだね。
そうこうしている間に私の懐中電灯の明かりが弱くなってきました。
「ねえ、電池取り替えて。」
「オッケー。かしてみな。」

本人が席を外したほんの10秒後、私の前に大きなクワガタがポトリ。
(あっ! 大きい! これはきっとオオクワだ! でも私が採ったらまた落ち込むかも・・・)
と考える間もなく、また羽を広げて飛び立つ気配。
仕方ない。
「来た!おっきい!」
じかに触るのがイヤなので上着の袖で上から押さえつけました。
「何?ホントか?」
取り替え中の電池を放り出して駆け寄ってきます。私がそーっと袖を上げると、
「あっ!!オオクワだぁ! やったやった!」
こんな顔はめったに見たことないぞ、っていうくらいニコニコ顔で、しかも両手で握手を求めてきます。
おいおい、君は政治家かっちゅーの。
でもまあ、落ち込まなかっただけ良しとしましょう。

オオクワガタこの日採ったオオクワガタ

「ねえねえ、このオオクワもらっていいの?」
「もちろん。私はムシなんか要らないわよ。1円にもなりゃしないのに。」
「サンキュ−!ありがと。でも、これはワイルドオオクワだからお金だしてでも買いたいっていう人たぶんいっぱいいるよ。」
「・・・・・」

ちょっぴり失敗したかな、と思う今日この頃です。

おわり。


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