「怪説・世界のクワガタ」 第14回 フタマタクワガタ 【1】

- A.CHIBA -


フタマタクワガタ Hexarthrius属は、これから新種とされる可能性の有るものを含めても 12〜14種からなる小グループで北インド、東南アジア、マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島、フィリッピン、 (ウォレスの東洋区内) などに分布している。殆どの種が大型になり中にはオオ顎を含めた体長が110mm を越える種もある。一見すると外見がオニツヤクワガタやノコギリクワガタの大型種に 似るものが有るが、フタマタクワガタ属は触覚(アンテナ)の先端部分が6節になり、この部分 が失われていなければ区別する事は容易である。これは♀の場合も同じで他の属との判別に 関しては比較的簡単にできる。





fig 1

fig1 Left(左) Hexarthrius parryi paradoxus Mollenkamp,1897

【分布】 MALAY, SUMATRA, マレ−半島, スマトラ
【体長】 ♂50−95mm
この仲間は産地及び多少の変異により現在4亜種に分けられるのが一般的で、その中でもこの亜種 H. parryi paradoxus は普通種で多数採集されている。その為か大型個体も比較的多く見かけるが、90mmを越えるサイズはやはり希。

fig1 Center(中) Hexarthrius parryi deyrollei Parry,1864

【分布】 N.THAILAND, MYANMAR, ミャンマー, 北タイランド
【体長】 ♂45−85mm
写真は北タイのもの。オオ顎のかたちは北インド産の H. parryi parryi と似て 大型個体の場合は基部が比較的太く先になるにしたがい細くなる。ただし小型の 比較ではどの産地も良く似てくる。

fig1 Right(右) Hexarthrius parryi elongatus Jordan,1894

【分布】 BORNEO, ボルネオ
【体長】 ♂61−90mm
ここに紹介したものの中では、採集される数が一番少ないようで以前は 標本も高価だった。大型個体では他の産地と比べオオ顎の基部が細くなる 事で区別するのが一番簡単だがやはり小型になると難しくなる。
パリーフタマタクワガタの仲間は北インドに産する Hexarthrius parryi parryi,1842 が基準種だが この種は今回載せられなかった。




fig 2

fig2 Left(左) Hexarthrius buqueti Hope,1843

【分布】 JAVA, ジャワ
【体長】 ♂40−90mm
カニガタフタマタクワガタの和名でおなじみの種で、大型個体は確かに オオ顎の先端がカニのハサミを連想させる。ジャワ島の特産種で普通に 産し個体数も多く採集されている。小型個体はオオ顎がはっきりと フタマタに成らず、同島に産するリノケロスフタマタ H. rhinoceros に似てくる。

fig2 Center(中) Hexarthrius nigritus Lacroix,1990

【分布】 THAILAND, タイランド中部
【体長】 ♂40−80mm
一見すると中国や台湾にいるザウテルシカクワガタの仲間に似ている。 タイランド中部の Khao Yai で採集されるが、この辺りは採集禁止区域で現在は 採集出来ないらしい?オオ顎のカタチや 大小個体の変異、前胸の形状からみるとパリーフタマタ Hexarthrius parryi 系統に近い種に思える。

fig2 Right(右) Hexarthrius forsteri Hope,1840

【分布】 MYANMAR, BHUTAN, NE.INDIA, ミャンマ−、ブ−タン、インド北東部
【体長】 ♂40−85mm
北インド・アッサムあたりのものは、体が赤っぽい艶の有る色で非常に綺麗な色合いをしている。 トゲフタマタクワガタという和名を使用している図鑑もある。




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