ネブトクワガタ採集記 
ミヌル


まちかねBBSの「ネブト飼育」ツリーをきっかけに、flycatcherさんに ネブトクワガタ採集に連れて行って戴くこととなった。

日程は当初、子連れでという話が有り、6月5日以降を計画していたのだが、 flycatcherさんの下見で、かなり蚊が発生していたとの情報から、私の嫁に 子連れ採集のSTOPが掛かり、私だけが同行させて戴くこととなった。 (子連れで「蚊」の出るところに採集に行くと、子供ばかり刺されてしまうので 嫁に良い顔をされない。子連れは冬季の採集にひとまず延期することとした。)

私だけが同行させて戴くとなると5月29日でも、PMならば都合が良い。 flycatcherさんに私のわがままを伝えると、快く5月29日PMの採集に 同意して下さった。

5月29日 晴 やや雲は厚いものの、採集には全く差し支えない。 12:30に某ハウジングセンター駐車場で待ち合わせをする。時間になっても flycatcherさんは現れない。間違えたかなという不安が私の頭をよぎる。 というのも、近所にハウジングセンターはもう一つあるのだ。私の携帯にTEL が入った。flycatcherさんからだ。やはり、間違えてしまっていた。わがままを 聞いて戴いた上に、待ち合わせ場所を間違えてしまった。申し訳ないという想いが 一杯で、flycatcherさんを待つ。数分後、flycatcherさんは車の中からにこやかに 手を振って、私を快く車内に招き入れて下さった。

車内には万が一のボウズの場合を想定して、私の為にネブト幼虫ペアが容器に 用意されていた。感謝。 私を助手席に乗せた車は、まずflycatcherさんのご自宅に向かう。 ご子息の雅之くんをピックアップして現地に向かう計画だ。

ご自宅、現地へと向かう車中では、私の矢継ぎ早の質問がflycatcherさんに 向けられる。クワガタがらみの話題は尽きない。実は前日、名古屋メンバーによる 臨時オフミが開催され、その後深夜2時までヒラタの樹液採集をされたそうで、 今日のAMも仕事に奔走され、睡眠もままならぬ状況であることを教えて戴いた。 flycatcherさんの、ご厚意には頭の下がる想いである。自分もクワガタ仲間 を迎えることがあれば、今日の様にもてなしてあげたいと思った。

そうこうしている間に現地へ到着。 運良く、駐車場から車が1台出て行き、駐車スペースが空いた。

flycatcherさんも雅之くんも慣れたもので、薄手の長袖を着る。 雅之くんのウエアにはフードもついている。なるほど「蚊」に狙われ易い 子供の装備として納得できる服装だ。

車を降りると早速、道から逸れて林へと入って行く。 時期的なものなのか、それなりに管理されているのか下草は少なく、 容易には入っていける。子連れでも全く問題ない。 50mも入っていないのではないかというところで、いきなりflycatcherさんから、 「この木です。この木からは、30匹以上を出しました。」と言われた。

ネブト倒木


この倒木は半分位が落ち葉や腐葉土に埋まっていたと思われる 直径15cm、長さ150cm位の倒木で、松だという。表皮は剥げ落ち、 ちよっと見にはとても松とは思えないが、裏を返してflycatcherさんから わずかに残る松の表皮痕を示して戴き納得した。

この木は以前、雅之くんとflycatcherさんが一緒に散策した際に、 雅之くんのたっての希望で割って見ると、いわゆるタコ採れの木 であったというもので、割って見るまではflycatcherさんご自身も 「こんな木に…?」という、想いが強かったとのこと。

今回の採集では、私は自分のことが精一杯で雅之くんを、かまってあげれず、 良かったかな?という想いを持ったが、flycatcherさんに言わせると、 彼なりの興味・着眼点を持って、採集に同行しており、心配無用とのことで、 このタコ採れの木も、彼なりの分析があったのかもしれないと思い 感心してしまった。

既に30匹以上が出ているという事であったが、まだまだ割られていない 部分が全体の半分以上を占めている様に見えた。 その割れていない部分にflycatcherさんがスコップを突きたてて剥がして見て下さ る。 幅5cm、長さ20cmほど表面が捲れると、いきなり、白く丸くなった 幼虫の姿が見えた。

ネブト幼虫


「居たっ!」私は思わず叫んでしまった。林に入って1分も経過していただろうか? あっという間に、終齢幼虫 1匹GET!! 続きは自分でその周辺を捲ってみた。 それぞれ右側10cm、下に5cm位の所に1匹ずつ。 速攻で、一気に終齢幼虫 3匹 GETだ。

flycatcherさんは「こういう木の下の腐葉土の中にもいますよ。」と言って、 地面を掘り返された。するとまた、終齢幼虫 1匹。 こちらはflycatcherさんが、持ちかえられることにした。 続きで、私が掘っているとまた、3匹出てきた。

ネブト幼虫


残念ながら、1匹は掘り返しの際、ダメージを与えてしまい、潰してしまった。 隣のこれより小さい松の倒木下では、flycatcherさんが腐葉土部分から かなり小さい幼虫(2齢か?)を発見された。 いろんなステージの幼虫が出てくるということは、同じ発生木に 繰り返し産卵されている事を示していると思われ、 適度な採集に留める事が、継続的に材採集を楽しむ上で重要と感じた。 小さい幼虫はそのまま、埋め戻すことにした。

今回のタコ採れ発生木は表面状、堅そうで、中が泥状に朽ちているとは 既に割っていなければ気が付かないような木であった。 ネブトは朽木の泥状部分に居るということは、HPの画像や図鑑の写真からは知って いたが、実際に、目にすると、倒木の姿として頭で思っていたものと180°違ってい た。 これは自分にとって新しい発見であった。きっとtuu3さんが春号で報告されていた 朽木もこの木と似たような状況だったのではないかと思う。 HPの画像での擬似体験では詳細にはわからないというか、 自分で勝手に文面などから画像を解釈したりしてしまうのか 今回の体験で、ネブトの居る木というのが、理解出来た様な気がする。

私が松の朽木を割っている間、flycatcherさんと雅之くんは他の倒木の様子を 確認されていた。白腐れの朽木でコクワ?幼虫の死骸を発見していた様で、 flycatcherさんは「これはかなり前に死んでいるね」と雅之くんに状況を分析し、 丁寧に説明されている様であった。

flycatcherさんは、この後もスケジュールが詰まっておられた。 別の新しいポイントも発見されており、この場所での採集の後に向かう事も 予定していたのだが、今回は時間切れで、またの機会ということになった。 それでも、現場に居た1時間弱の間に8匹の幼虫にお目に掛かることが出来、 私が5匹、(卵巣と思われる1対の黄色い部分が確認できたのが1匹。精巣と思われる 1対のグレー部分が確認出来たのが1匹。残りは明確な性腺は確認できなかった。) flycatcherさんは1匹(? 自分のことに夢中で何匹GETされたのか知らない…笑い) を採集した。

私には、ボウズ用のペア幼虫もそのままプレゼントして戴いたので、合計 7匹。 嬉しくでたまらない。実は前日から、子供の様に興奮して夜は寝付けないし、 朝は早くから目が覚めてしまうし、自分でもこんなにワクワクするとは思っても みなかったので、ちよっとビックリ。

2年くらい採集から離れていたが、やはり、野外での採集は楽しい。 今年は採集も積極的に行おう。 出来るだけ子供を連れて…。時間が掛かっても、子供に体験させてやりたい。

帰宅の後、flycatcherさんからレクチャーいただいたレシピ (クワガタ羽化後の食べ残しマットをミキサーに掛けて、粘土質状にしたもの。) に習ってエサを用意し、個々に瓶に入れた。このあたりの飼育know howは flycatcherさんのご師匠であらせられる根太屋商会さんの直伝だそうだ。

1匹ずつを瓶に分けた際、1匹の幼虫が瓶の口部からなかなか潜っていこうとしなかっ た。 私がヒラタクワガタの例を報告した発音行動を取っている様に見えた。 さすがに瓶の口部で空中での行動の為、音(振動)としては認識出来なかった。

flycatcherさんからお聞きしたことだが、ご師匠である根太屋商会さんによれば、 ネブトは1つのケースに多数個体を入れても共食いすることなく飼育可能であるが、 大型個体を産出するためには、幼虫を1匹ずつ飼育した方が良いのだそうだ。 多数の個体が共食いを起こさず生育する為には常に仲間がどこに居るか, または,自分の近くに居ないかを確認することが必要と考えられ、 いわゆる発音行動(仲間の確認行動?)も頻繁に行っている可能性が有る。 今回の幼虫を基に累代に成功したら、実験してどんな行動をとるのか観察してみた い。

また、私の住む街でもネブト採集の記録はある様なのでまずは今回自分の理解した ネブトの好きな朽木を捜して、あわよくば、おらが街のネブトにも巡り合ってみたい。 想いは広がるばかりである。

さて今回、大変お忙しい中、私のわがままに付き合って下さり、親身にご対応戴いた flycatcherさんと雅之くんに感謝の意を伝え、本採集記を終えたい。 本当にありがとうございました。


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