オニクワガタの魅力と魔力
by えりー


写真9&10は大型のキンオニ雄の蛹の写真である。かなり良いサイズになると思われる。 まだ蛹化したばかりなので複眼も色づいていない。写真9の矢印は蛹のおしりにヒモでつながっている終齢幼虫の皮である。写真10の矢頭は複眼前方にある横に飛び出た突起を示している。なんだかノコギリクワガタみたいだ。

頭部の拡大図、写真11の矢頭で示したように、上向きの突起がやはり蛹の段階で見て取れる。オニクワの大顎はぐいっと反り返っていたけれど、キンオニの反り返りは緩やかで長い。

この蛹が羽化したものが写真12〜14である。サイズは37mm、ギネスが38.8mmだから、なかなかのサイズである。もっとも幼虫からの飼育個体では大型が出やすい傾向にあるのかもしれない。デジカメがあまり良くないので、色の再現性が悪いが、写真13で分かるように、真黒のオニクワとは違ってやや光沢のある茶色である。キンオニとはいうけれど、金色ではない。どちらかというとミヤマに似ているような色合いだが、長い毛はエリトラには認められない。

写真14は大顎を側方からみたところ。オニクワ同様、頭部は中央で深く谷になっており、また大顎の尖端にある上向きの歯が非常に立派である。写真15は小型の雄で、写真14と比較すると上向きの歯の発達は著しく弱い。なんとなくオニクワに似ているようであるが、 オニクワの場合、小型でも上向きの歯はしっかり伸びている。


ニ、キンオニは、あまりポピュラーではないためか、図鑑で見る典型的な写真以外には、Web上でもその姿や写真をみることはそれほど多くないかもしれない。キンオニはともかく、オニクワを売っているショップはまずないでしょう。オニはオニでもオウゴンオニとは比べ物にならないくらい地味だし、寿命も短くて、決して飼育が楽しい種ではない。しかし、その凹凸に富んだかたちは美しく思えるし、コミカルな歩き方も私の心を惹きつける。本命で採ろうと思って採る虫ではないので、採れたらラッキー!という程度の気楽さもある(少なくともスジクワよりはずっと嬉しい)。今年は是非8月のブナ林でルッキングで採集してみたいと思う。もし、読者のなかに「これまでオニクワって良く知らなかったけど、結構いけてるじゃん」と思った方が一人でもいてくれたら幸いである。
最後になったが、キンオニの幼虫を分けて下さったmagotaro氏には、この場を借りて御礼申し上げたい。



99年夏号目次へ