触角の重複を伴う奇形コルリクワガタの一例
by えりー


筆者は顎髭の重複を伴う奇形ミヤマクワガタをくわ馬鹿に報告した。先日、新潟でコルリクワガタ(原名亜種)の採集を行った際、左右の触角の一部に重複の認められる奇形クワを採集しているのでここに報告する。
雄の標本をタトゥ上で展足しているときに、触角の各分節を広げようとおもって顕微鏡下で操作していたところ、以下の写真のような異常に気づいた。

写真1〜4:それぞれ異なった角度から左右の触角を見る。
その特徴をまとめると
(1)左の付加的触角(図中L)は明らかに分節しており、しかも尖端3節が「順序が逆」になって接続している。
(2)右の付加的触角(図中R)は棒状で1節にみえるが、あるいは複数節の退縮したようなものが融合しているのかもしれない。

コルリクワガタの奇形としては、7本脚の例が1998年6月号の月刊むしに報告されている。また、昆虫における触角は脚に類似した構造物であることは良く知られた事実である。尖端は符節に相当する。したがって、このような触角奇形の存在は「符節の重複」という奇形の存在を予感させる。脚や触角、顎髭というのは変異の起こりやすい場所なのかもしれない。多数採集しているとついつい各個体の観察がおろそかになりがちであるが、今後も各個体の形態には注意を払いたいと思う。



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