家族連れでも行けるかもしれない?
クワガタ的観光指南〜台湾編〜


クワガタ的観光とは

観光がてらにうまいこといったら クワガタの一匹や二匹とれたらいいな、と思ったことはないだろうか? まじめに採集を目的としたものではなく、家族旅行でも安心してクワガタもとれるような観光をクワガタ的観光(以下「クワ観」) として提唱したい。 まず、「クワ観」の条件を挙げよう。
 
    1.目的地は観光地である
    2.クワガタのいそうな土地である
    3.危険な場所、採集してはいけない場所には立入らない

この3条件を満たせば「クワ観」である。1.2.は当然として、3.は トラブルを回避するための条件である。これらの条件から、観光地ではない韮崎や、能勢に行くことは「クワ観」としては認められない。 しかし、中里介山ファンが大菩薩峠に行ってヒメオオクワガタを拾ったり、新婚旅行で宮崎に行って日南海岸でルイスツノヒョウタンクワガタを探すというようなことは立派な「クワ観」である。
 


台湾編

なぜ、台湾を取り上げたかというと、「クワ観」として興味深い地だからである。 「クワ馬鹿」読者諸氏なら興味あることと思う。 台湾については既に、当クワ馬鹿でもドラゴンさんによる採集記がある。
かくいう筆者も「地球の歩き方 台湾」の「クワガタは約50種ほどいる」という記述を見て、他に何の情報もないまま行ったことがある。結果として「観光」をおおいに楽しんできた。

さて、目的地だが、観光については正規のガイドブックを参照してもらいたい。
ここでは、「クワ観」案内をする。まず「クワ観」としては、運良く普通種が見つけられれば、それで十分である。 シェンクやザウテル(注1)なんかはじめっから狙ってはいけない。50種もいるのだから何かにぶち当たるだろう。「クワ観」が目指す観光地は「そこに山があるから」で決まる。

台湾の観光と聞いて何を思い浮かべるだろうか?
故宮博物館で文物を眺めながら悠久の時を想い一日をゆっくりすごすのも台湾観光でははずせないのだが、「クワ観」には必要ない。同じように「クワ観」では国家公園に入ってはいけない。台湾の国家公園で動植物の採集でもしようものなら、投獄もありえる。そのため、阿里山や、陽明山などの観光スポットは「クワ観」対象にならない。 では、どこに行けばよいのだろうか?

台湾はお茶好きにはたまらないほど銘茶の産地が多い。「クワ観」として凍頂烏龍茶や白毫烏龍茶の産地を見にいくのも悪くない。なんといっても山の中である。本場の烏龍茶のすばらしい香気に包まれて、たちまちとりこになってしまうだろう。ただし、缶入の烏龍茶を飲むと砂糖が入っていたりする。 お酒好きなら、紹興酒で有名な埔里もよいだろう。ここは昆虫でも有名で蝶好きならご存じと思う。
寺院や道教の寺観もよいだろう。さほど街から離れていなくても森を控えていることが多いのは日本と同様である。家族向けではないが、宿泊可能なところもある。ただし、志納になる。寺観でキョンシーに出会えば、旅のよい思い出となるだろう。 中国的雰囲気を十分味わえる。
お勧めは、温泉である。日本統治時代に日本人があちこちで温泉を掘りまくっていたそうで、温泉地には畳の部屋まで存在する。 なんの不自然さもなく気楽に山の近くで泊まり歩けるという点では他にない。 ひなびた温泉街でゆったり湯治するのが「クワ観」的には正しい。大風呂の場合、下着をつけたまま入浴するというマナーは守ろう。
各自いろんな組み立てを考えてみてほしい。

採集
 
採集方法としては樹液採集など、もってのほかである。地理的に北回帰線をはさんで亜熱帯から熱帯を股にかける台湾の森は日本のそれを想像してはいけない。一歩足を踏み入れれば途方に暮れてしまう。さらに、「百歩蛇」という蛇がいる。噛まれたら百歩歩くうちに 死んでしまうという名を持つマムシに似た毒蛇である。余談だが、大陸(注2)では同じ蛇を「三歩蛇」 という。つまり、大陸では33.3倍ほど毒が強いらしい。
こういう理由からも、朽ち木採集は勧められない。だいたい木を見てもわからない。夏期の成虫採集が基本となる。
果物の宝庫である台湾では見たことのない色とりどりの果物を口にするのは非常に楽しみである。 パッションピンクのサボテンの実や、「釈迦」と呼ばれるバンレイシなど日本では滅多に食べられない。このような果物をつかってのトラップ採集も考えられよう。ところが、つかえるのはやっぱり、バナナかパイナップルらしい。ただし、この方法は長期滞在むけである。 個人的にはドリアンをクワガタが食べるのか知りたい気もする。
 「クワ観」では灯火採集が最適である。それも、街灯の下を探して回る最も安易な方法が一番条件にかなう。 なにしろ、何の準備もいらない。温泉につかって朝に夕に散歩しているだけでよい。 この方法ではメスが多くなるが、いたしかたないところである。
 

最後に

台湾の人は余裕が感じられる。筆者は大陸(注2)を歩いていたときには怒鳴られたり、殴られたり、ボられたりはしょっちゅうだったが、台湾では一回しか怒鳴られなかった。いや、それだけではない。町から10キロも離れたようなところでクワガタを探している筆者を、他人から見たらスコールの中フラフラ歩いているだけなのだが、見るに見かねて車に乗せてくれ たことも幾度かある。ヒッチハイクをしたわけではない、ただ、困っていたのは事実である。

まったく役にたたない勝手なことを書いてきたが、「クワ観」の主旨に賛同していただければ幸いである。最後に、万一、この小文を本気にして行かれる場合は個人の責任で行っていただきたい。
 
なお、このような企画で「クワガタ的露天風呂の旅」とか「クワガタ的霊地巡礼」とか「クワガタ的食べ歩き〜ラーメン編〜」などできそうだが、私にはその力がない。よって、今後続編の予定はない。

 謝謝、台湾!
 

(注1) シェンク=シェンクリングオオクワガタ、ザウテル=ザウテルシカクワガタ
(注2) 大陸=台湾に対する大陸中国の意


苦情はすべてWASHIまで



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