コルリ&ミヤマツヤハダの採集(9)
by えりー


1998年12月6日,福井県K川峡谷
いよいよ,今回で本シリーズの採集記も終わりとなる.この日は天気が良ければ少し脚を伸ばして嶺南の敦賀へ行くつもりであった.前日の土曜日は夜中まで土砂降りで,明日は採集できないと思っていた.空けてみるとなんと快晴であった.”ついている!”とその時は思った.妻が風邪をひいて寝込んでいるのを尻目に,高速にのって一気に敦賀ICへ.

この日は本当は敦賀の別の山にいく予定であったが,登山道が分からないという根本的な問題を解決できず(^^;;;)やむを得ずこの山へのアタックを午前中であきらめることにした.しかし,ここまできて手ぶらで帰るわけにはいかない.市内まで引き返して一息入れてから,午後は夏に訪れたことのあるK峡谷へ行ってみることにした.このK川沿いの道は途中からダートになるものの山頂付近まで車で登れるので時間の節約になる.しかも頂上付近にはブナがあることも了解済みだ.昨晩の雨のため陥没した道は水たまりになっている.まるでラリーだ.衝撃のためレーダーの電源が切れることしばしばあったが,この程度の道ならば我がクワガタ採集車エスクードは何の苦もなく登ってくれる.


林道途中から見たK川峡谷の山々,ブナを含んだ雑木林が見える

頂上付近ではやや緩やかな折り返しの道を進むがブナが出てきたところでちょうど車を止めるスペースがあったのでそこで車を降りてポイントを探しにかかる.下界はぽかぽかと暖かかったがさすがに800mまでくると空気がひんやりと冷たい.車を降りると遠くでオフロードバイクのエンジン音が聞こえた.きっとブナ林のなかを走り回っているのだろう.右手は川に向かって緩やかに降りてゆく斜面であり,下生えの笹が思った以上に深い.笹は背が低ければ全く問題ないのであるが,ちょうど腰をかがめて材を探しているときに,跳ね返って来て顔に当たるのが気に入らない.こんな状況でマークのある材は非常に見つけづらかったが,全くないわけではなかった.一通り薮コキし幼虫を何匹かゲットしたあと,今度は左手の斜面へ狙いを定める.


採集ポイント,林道わきの日陰の土手である.

わたしのポイント探しのひとつのキーは「風」である.ブナの森は広いが,風が吹き抜ける場所とそうでない場所がある.この斜面の前に立ったとき風が吹き抜けた.ここは良いポイントだと勝手に決めつけてさっそく枝を探す.なかなかマークが見つからないが,程良く朽ちた細い材はたくさんあった.材を割るとまず1♂.引き続いて次々と♂が出てきた.



コルリ4♂♂.位置的には比良山系の流れをくむのだろうか.

幼虫もほどほど採集できたので,もう2曲がり林道を登って頂上付近,滋賀県境付近にたどりついた.これより先へもいけるのだが,福井県ではなくなってしまうのでこの地点を2つめのポイントとした.ここが,また「いけてる」場所であった.小一時間の間に5♀♀1♂を追加した.幼虫も20〜程採集し,時刻も午後2時半になったので少し早めに採集を切り上げた.
この日の成果は5♂♂6♀♀.最後の最後になってやっと10匹〜の採集.これまでの採集で一番の成果を得ることができた.


タトゥの上のこの日の成果.左が♂,右が♀


このコルリクワガタとツヤハダクワガタの採集シリーズは以上で終わりである.最終的には9ページになってしまった.この秋から年末にかけてかなり積極的に採集をしたという自負はあるものの,どれも似たような採集記および画像でつまらなく感じた人もいたかもしれない.この採集記の目的は初心者の私が友人達の助言をもとに福井というこれまで記録のあまりない場所で,一人で暗中模索しながら少しずつ成果をあげて行く過程を紹介すると同時に,初心者の目から見たコルリクワガタの採集の「こつ」を織り込んだつもりである.この採集記にブナ林の状況とか,環境,森に吹く風のこと,材の太さ・湿度,材のある場所,材の色・質感などを多くの画像から感じとって頂けたら嬉しいと思う.ルリクワガタ属はその金属光沢,地域変異,採集方法などどれをとっても私には見ていて飽きない楽しいクワガタ虫である.オオクワを黒いダイヤモンドと呼ぶのなならば,コルリはエメラルド,サファイア,ルビーである.私の大好きなジュエリービートルの採集記に最後まで付き合ってくれた方には感謝したい.

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