菌糸ビンの自作


OB5

私の成功した菌ビンの作り方と注意点をご説明します。

今年6月からオオクワ飼育を始めた初心者なのですが、もともと自作物が好きで中学生のときは 天体望遠鏡を自作したり、今のミニ四駆の走りのような物を自作したりで子供の頃からの自作マニアです。
家の屋根裏部屋も半分自作で、当然クワ用の温室も自作で、もう私にとって自作はあたり前です。
そんな私が菌ビンの自作に挑戦したのはオオクワ飼育を始めて間もない7月の終わり頃でした。
先輩方のHPを参考にさせていただき自分なりに試行錯誤しずいぶんカビ瓶を作り、 もう半分あきらめておりました。
ところがm氏とB氏のアドバイスにより10月中旬に再挑戦し何とかはじめの目標である菌をまわす事に成功しました。
そんなわけで、今後菌ビンに挑戦する方に少しでも参考にしていただければと思い今回私が成功した菌ビン作成法をご説明します。


そろえる物

・マット(オガコ)
出来るだけ生のマットが良いと思います。
ミタニのクヌギ純太君などの朽ち木マットでもかまいませんがやはり生の方が栄養価が高いのと、雑菌が少ないため成功率が高いようです。
ただ、生マットより朽ち木マットの方が菌のまわりは速いようです。
生マットはオークプロジェクトさんやテクニカルアートさんで購入出来ます。
今回私はクヌギ生マットを使用しました。


・種菌
無菌培養のヒラタケ種菌がベスト。
菌糸ビンを種菌として使う場合は雑菌に汚染されている可能性があるのためあまりお勧め出来ません。
無菌の種菌はオークプロジェクトさんなどで購入出来ます。


・添加剤
薄力粉や強力粉、小麦ふすま、エビオス錠、黄粉、プロテインなどお好みにより使用します。
今回私は薄力粉7%とエビオスをマット1Lあたり5錠を添加しました。
薄力粉は生協の無農薬薄力粉を使用しました。
エビオス錠は薬局で購入できます。


・ビン
出来るだけ蓋のしっかりしまる口の広いビンが良いです。
蓋は出来るだけ穴の開いていないものと開いている物の両方用意します。
私は900ccの食料ビン(マヨビン)をホームセンターで購入し、蓋も余分に購入しました。


・エタノール消毒液
菌を接種するときに使用します。
無水エタノールや消毒用エタノールのスプレータイプが良いです。
薬局で購入出来ます。


・詰め込み棒
マットをビンに詰めるときに使用します。
マットを詰め込む道具「ハンドプレス」がベストです。(クワガタショップ等で販売しています。)
私はすりこぎを使用しています。
100円ショップで購入しました。
割り箸を4〜5本を輪ゴムで束ねても良いです。


・スプーン
菌症をほじるときに使用するため出来るだけ柄の長いものでギザギザタイプがベストです。


・衣装ケース
衣装ケースに手が入る穴を2個空けます。
出来るだけ透明に近い物。
無ければ段ボールを加工し手の入る穴とのぞき窓を空け、そこに透明なビニールを張り付けます。
簡単な無菌室を作り、菌を接種するときに使用します。


・圧力鍋
電子レンジでも可能と思いますが圧力鍋の方がベストです。
もし購入する場合はネスカフェの250gビンが斜めにしてでも入る物をお勧めします。


・穴空け用ドライバー
ビンにオガコを詰めた後真ん中に空気穴を空けます。
出来るだけ長いドライバーが良いです。


・クーラーボックス&保冷材
夏期のみ使用、菌の培養時の温度管理に使用します。
私は熱帯魚屋さんから頂いてきた蓋付きの発砲スチロールの箱を使用しています。


・ゴム手袋
種菌のときに手のバイ菌をシャットアウトするために使用します。
1ペア150円くらいで購入出来ます。





制作の手順


1,マットの準備
マットに添加材を良く混ぜ合わせ加水します。
加水はオオクワ用はパサパサでも良いのですが、あまり水分が少ないと菌のまわりが悪いようです。
逆に水分が多すぎると羽化不全の原因になるようです。
私の場合は片手で思い切り握ってお団子が出来ないぎりぎりで、
指で潰すとほんの少し水がにじむ程度にしました。


2,ビンへの詰め込み
良く洗浄したビンにすりこぎを使ってビンの9分目くらいまで思い切り堅く詰めます。
柔らかく詰めた方が菌糸のまわりは良いようですが、より材に近い菌糸ビンが理想ですから、
堅い方が良いと思います。
その後ドライバーで真ん中に空気穴を空け、穴の開いていない蓋をします。
蓋はきつく閉めないで、空気が通るように少しだけ蓋をまわします。


3,滅菌
圧力鍋に鍋の規定ぎりぎりに水を入れて50分〜1時間滅菌します。
滅菌が終了したら、すぐ圧力を抜いて鍋の蓋を開けるのですが、このとき鍋や中のビンは熱いですからやけどなどしないように注意して下さい。
濡れタオル等を使用して素早くビンを取り出し蓋をきつくします。
これは冷却時の外気吸い込みを防止するためです。
もし蓋に穴が空いている場合は、素早く清潔なビニール袋に投入しすぐ袋の口を閉め常温まで冷却します。


4,種菌接種の準備
衣装ケースを改良した種菌BOXや段ボールを改良したBOXに常温まで冷却したビン、菌種、スプーン、エタノール、詰め込用すりこぎ、ドライバーを入れて蓋をします。
使用する物はあらかじめエタノール等を良く噴霧しておきます。


5,種菌の接種
ケース内で接種します。
このときは出来るだけ清潔なゴム手袋着用で行います。
蓋は別に穴を空けてキッチンペーパー等を張り付けた物を用意しておきます。
種菌ボトルの蓋を取ったら上の方を少し(1cmくらい)捨てます。
接種は出来るだけ瓶の真ん中に空けた空気穴に落とし込むようにし、穴がいっぱいになったら、種菌を下のオガコが見えないように厚めに乗せます。
接種後はフィルター付の蓋を素早く閉めます。
また、種菌ボトルの蓋も素早く閉めます。


6,菌の培養
培養は今の時期(10月〜12月)は部屋の中に自然に置きます。
ただ、あまり湿度の高い部屋はさけた方が良いでしょう。
夏場はクーラーBOXに保冷材と一緒に入れて保冷材は毎日交換します。
菌糸が1/3くらい廻ったら多少温度を上げます(20℃〜25℃くらい)
生マットを使用した場合完成まで約2ヶ月はかかるようです。



左から接種して3日経過、10日経過 、右の2本は1ヶ月経過


成功のためのキーポイント

◎マットは生の物を使用します。

◎無菌培養のヒラタケ種菌を使用します。

◎滅菌は圧力鍋で行い冷却時の外気の吸い込みに注意します。

◎菌種の接種は出来るだけ雑菌が進入しないように行います。
乾燥した秋から冬は良いのですが梅雨から真夏は雑菌が進入しやすいようです。

◎培養は温度と湿度に気を付けます。



以上が私の菌糸ビン作成法ですが、もっと簡単に成功されている方もおられるようです。
また 私と全く同じ方法でも必ず成功するとは限りません のでそのへんはご了承下さい。
それと、私の作った菌ビンは現在熟成中で、まだ実際に幼虫は投入していません、したがって全然大きくならないかもしれませんし、すぐ死亡するかもしれません。
それに現在飼育中のオオクワ幼虫は別の購入した菌ビンやマットで3令になってますのではっきりした評価が出るのは来年か再来年です。
今回は第一の目標である「カビない菌ビン」が完成しました。
次の目標は大きなオオクワになる菌ビンで、その次の目標はヒラタに優しい菌ビンです。
また、そのときは季刊発行になったクワ馬鹿に投稿しますので宜しくお願いします。





12月号目次へ