国内各地のオオクワガタ番外編 中国産オオクワガタ画像

   Dragon  1/2

標本はすべて中国広西壮族自治区金秀県大瑶山産


先月号のえりーさんの記事のなかでブナ帯に分布する北方系オオクワと暖帯に分布する南方系オオクワという仮説がのべられていたが、私はこの仮説を支持する事はできない。

まずブナの極相林を特徴とする温帯林の範囲は夏の暑さがその分布のカギとなっており、逆にアカガシの極相林を主体とする照葉樹林の分布は冬の寒さがカギとなっている。つまり、ブナ帯は夏の涼しいところに、アカガシは冬の暖かいところに分布しているわけだ。

ところが、多産地として知られる甲府盆地周辺や三草山周辺はどうだろうか。
夏は暑くて、ブナは進出できないし、冬は寒くてアカガシは進出できない。この事実に対してえりー仮説では説明ができない。

また同仮説では、ブナ帯で発見されているのは北方起源のものという考え方をしているが、私はオオクワガタの起源はあくまでも大陸の西南部ではないかとみている。

日本への流入のルートはおそらく、大陸と地続きであった時代に朝鮮半島経由で渡ってきたに違いない。 台湾或いは、南アジアの島嶼部から海流によって分布を広げたとは考えにくい。
その点では、台湾に分布するクワガタが、中国大陸の対岸部との共通種や兄弟種が多いことに注目すべきで、これはさらに古い時代に台湾が中国大陸から分かれたのではないかと想像することができる。(台湾と日本本土の共通種は少くない)。朝鮮半島経由で日本に流入してから、環境に適応してその分布をひろげたのであろう。

幼虫の食樹への嗜好性という面では、クヌギに限らず、ブナ、サクラ、エノキ等幅広い選択をもっており、これは分布を阻害する要因になるとは考えにくい。むしろ、成虫の食餌の方が問題である。
なるほどクヌギは樹液を豊富に出すし、エノキやカシ類の樹液でも観察されている。では、ブナ帯ではどうだろうか?ブナの樹液という話は聞いたことがない。ヒメオオクワガタやアカアシクワガタがブナ帯のヤナギの幹を傷つけ吸汁していることは有名だが、同所でオオクワガタも得られているのだろうか?多くは灯火に飛来したものや、材採集か偶然見つけたものではなかろうか。あれだけの個対数を維持しているのだから、必ずどこかにオスとメスが集合する場所があると信じる。

さて、写真の個体についてだが、以前にBBSで、亜種というよりもフォームとかタイプと考えた方が自然ではないかということをミヤマクワガタを喩えにコメントしたことがある。
同一個所でこれだけのバリエーションが採集されているので、ついそう考えたくなってしまう。

この点に関する考察は、今まさに進行中である日本のオオクワ変異調査の結果をみてから考えてみたい。


写真の説明

No.3,4,5が所謂 Hopeiタイプの個体で内歯のつき方、前胸側縁部のS字カーブに特徴が認められる。(S字が前方に出現)
また、前胸側縁部に注目するとNo.8は特異。(S字が極めて前方に出現する)
手持ちの個体をみると60mm前後が長歯型と中歯型の分岐点。



No.1 69mm



No.2 68mm



No.3 67mm hopeiタイプ あごも太くお気に入り



No.4 66mm hopeiタイプ



No.5 63mm hopeiタイプ



No.6 62mm



No.7 60mm



No.8 59mm 前胸側縁のS字に注目



No.9 60mm



No.10 60mm



No.11 60mm




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