図3 テフロン支持棒
★1/2波長・指数関数形テーパーマッチング
上図(CQ誌1999年2月号p.145 を参照)はヘリカルアンテナ3号機における1/4波長・テーパーマッチングのVSWR特性。周波数が高くなるにしたがいVSWRは低下しているのでは…。
なぜ?
★テーパー線路について調査(参考文献1〜8)
図6のように特性インピーダンスZ1の線路と、特性インピーダンスZ2の間に、なめらかに特性インピーダンスが変化するテーパー線路を挿入して整合させる。テーパー線路(長さL)の特性インピーダンスが指数関数
Z(x)=Z1exp(x/L・ln(Z2/Z1)) (1)
に従って変化する線路の反射係数Γは、
Γ=1/2・ln(Z2/Z1)e−jβL・(sinβL)/βL (位相定数β=2π/λ) (2)
となり、Lが長いほど小さくなり、L=nλ/2(n=1,2,3,…)のとき0(つまりVSWR=1.0)となる。下図(FIG.31-19)の曲線Aを参照。
3種類のテーパーのうち、指数関数形テーパーが最短波長(1/2波長)で、反射係数が最小(0)となっている。ちなみにDOLPH-TCHEBYSCHEF形テーパー(Klopfensteinテーパー)は、約0.6波長以上で反射係数は小さく広帯域特性を備えている。
★1/2λ指数関数形テーパー線路の作成
Z0=60ln(8b/a' - 0.358+1/(0.931b/a'+0.736)) (3)
a' = a+t /π(ln(2b/t)+1) (tは導体ストリップの厚さ。)
ヘリカルアンテナの給電線(同軸ケーブル)のインピーダンス50Ωと、ヘリカルアンテナのインピーダンス155Ωを整合させるために、両者の間をなめらかに結ぶ指数関数形のインピーダンス曲線となるマイクロストリップ線路(長さ1/2波長)を挿入する。
そこで、導体ストリップの幅を10mmとし、反射板(接地板)との間隔が約2mm(同軸コネクタ側)から約18mm(ヘリカルアンテナ側)まで下図のようになめらかに変化するマイクロストリップ線路を作成した。
この図からわかるように、ヘリカルアンテナのインピーダンスが140Ωのときには、アンテナ側の間隔を約4mm程度、狭めればよいことがわかる。実際には、VSWRが最小となるようにこの間隔を調整する。
ヘリカルアンテナ4号機(16ターン)にこの1/2波長・指数関数形テーパーマッチングを適用し、ストリップ線路の間隔を調整した結果、上図のように2400〜2440MHzの周波数帯域でVSWR=1.1が得られた。
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ヘリカルアンテナ4号機とドレーク・ダウンコンバータ(Photo. by JR1ING 菊川要一氏撮影)
★テーパー整合、テーパー線路に関する参考文献
1. 中島将光「マイクロ波工学」pp.191-192 、1975年、森北出版
2. 石井宗典,東生造,青木敏夫,大井国夫「マイクロ波回路」pp.185-189、昭和44年、日刊工業新聞社
3. 小口文一「通研叢書1 マイクロ波およびミリ波」pp.324-332、昭和39年、丸善
4. HENRY JASIK, Editor "ANTENNA ENGINEERING HANDBOOK" 31.4.TAPERED LINES, Chapter 31 IMPEDANCE MATCHINNG AND BROADBANDING, 1961, McGRAW-HILL
5. R.E.Collin "Foundations for Microwave Engineering" 2nd edition , pp.370-393, 1992, McGRAW-Hill
6. A.F.HARVEY "MICROWAVE ENGINEERING" pp.39-45, 1963, ACADEMIC PRESS
7. "THE ARRL ANTENNA BOOK" 18th Edition, p.26-5
8. David M. Pozar "Microwave Engineering" 2nd edition , pp.288-295,1998 , John Wiley & Sons