§4.ペットボトルロケットの力学

4.1 ロケットの運動方程式

ロケットの推力飛行の運動を決定する方程式は次のように表される。4)
m dv/dt =F−R− m g sinθ
vdθ/dt = −g cosθ
dm/dt=−β
dx/dt=v cosθ
dy/dt=v sinθ
ここで、
m:ロケットの質量(水の質量を含む)
F:推力  R:空気抵抗力
β:単位時間当たりの水の噴出量
g:重力加速度、
θ:ロケットの軌道角
v:ロケットの速度、
x , y:ロケットの座標
である。

4.2 水の噴出による推力

 ペットボトルロケットの推力には、水の噴出によるものと、水がなくなった後に起きる空気の噴出によるものとがある。

 まず、水の噴出によって得られる推力を考える。水(密度ρ)を、断面積A の口からロケットに対し速さ u で噴出するとき、微小時間 dt 間に噴出する水の質量dmは、

dm=ρ A u・dt -------(1)

となる。dmがロケットからuの速さで後方に噴射されたことで、ロケットの受けた力積F・dt

F・dt = dm・u -------(2)

となり、これに前式を代入し整理すれば、ロケットの推力Fの式、

F=ρA u2 -------(3)

が得られる6)

ここでタンク内の断面積A0,流速u0
噴射口でのそれをA、 uとすると、

流体力学の基礎式であるベルヌーイの式および連続の式より、

(1/2)・ρu2+Pa =(1/2)・ρu02+ρg h+P0 -------(4) u・A=u0・A0 -------(5)

がなりたつ。ここでPaは大気圧、P0は圧力タンク内の圧力である。gは重力加速度、hは噴射口からタンク内の水面までの高さである。この2式から、 となる7)
これを推力の式に代入すれば推力は となる。近似的には、F=2A(P0- Paとしてもよい。
圧力タンク内の圧力P0は水の噴出に伴い急激に減少するが、この変化は断熱変化とみなし計算すればよい。

4.3空気の噴出による推力

 水の噴出が終わった時点で、圧力タンク内にはまだ圧縮空気が残っている。この空気が噴出することにより、ロケットは推力を得てさらに加速されることになる。
 空気の圧力、密度がP0、ρ0であるタンク内から、圧力Paの外気に流出する場合を考える。噴出口で気体の圧力、密度がそれぞれP1、ρ1とすれば、噴出口での流出速度u1は、圧縮性流体の式より、

γは空気の比熱比でγ=1.4を代入し整理すれば、

と表される8)

 ここで、噴出口での圧力P1は外気圧Paと等しいとは限らない。噴出する気体の流速u1が音速を超えていないときは、噴出口圧力P1は外気圧Paにほぼ等しいと考えてよい。
 しかし、内外の圧力差が大きくなるとともに、流速が増しても、流速は音速の壁を乗り越えることができないので、噴出口圧力P1は外気圧Paまで下がらず、

となる。このような状態をチョーキング(流れの閉そく)という7)8)
 噴出空気に与える運動量の反作用としての推力Faは、水の噴出の場合と同じようにρ1・A・u12 となり、また断熱膨張の式ρ10・(P1/P0)(1/γ) を用いることで、

Fa=ρ1・A・u12=7・A・P1・{ (P0/P1)(2/7)-1 } -------(10)

となる。また、空気の噴出口圧力が大気圧より大きいときには、
これに圧力の差からくる推力 Fp (圧力推力という)

Fp= A(P1−Pa) -------(11)

が加わる5)
 まとめると、推力F

F=Fa+Fp=7AP1・{ (P0/P1)(2/7)-1 }+ A・(P1−Pa) -------(12)

となり、ここで、P1については

0.528×P0≧Paのとき、P1=0.528×P0 0.528×P0<Paのとき、P1=Pa

を代入する。
「§5.パソコンによるシミュレーション」へ

「目 次」へもどる


Homeへ戻る

hy9n-knk@asahi-net.or.jp金子望