珍動物の館 ![]() いよいよヘリスキーが始まった。期待に大きく胸膨らませる我々であったが・・・・ 初日からCMHの洗礼を受けることに。 天気は曇り、気温−7℃。初日からツりーラン(林間滑走)となるが、経験のない我々にとって いきなりの急斜面に度肝を抜かれる。 「おいおい、こんな斜度滑ったことないよ、しかも木まで密集しているじゃねーか。どーやって滑 るんだよ」ってな感じである。みごとに経験不足が露呈してしまった。
雪はDeep(深く)、斜面はSteep(急)、そして次々と迫ってくるTree(木々)。飛び降りないと進 めない場所もやってくる。仕方なく飛び降りる。すると板が外れる。転がる。そのまま木の根っ こにからまる。顔の上に雪がどっさっと降ってくる。窒息しそうになる。もがく・もがく・もがく。 これがめちゃくちゃ体力を奪っていく。きっと経験しなければわからないだろうと思うのだが、目 安としてはビルの階段を1階から10階まで必死になって駆け上がるぐらい疲れる。 外れた板が山側にあるなら最悪だ。たとえ2m先に板が見えていても、その2mが進めない。 まるでアリ地獄に落ちたアリのようだ。登ろうにも雪が崩れるだけでちっとも上には進めない。 何倍もの時間をかけて何とか板まで辿りつく。 板を履き、また滑りはじめる。みんなを待たせているので休んではいられない。乱れた呼吸も そのままに落ちて行く。そしてく飛ぶ。また板が外れる。ごろごろと転がる。木の根っこにからま る。顔の上に雪が落ちてきて窒息しそうになる。もがく・もがく・もがく。 こんなことを5回も10回も繰り返しているとだんだんと疲れてくる。今になって考えればビンディ ングを調整してもらえば良かったのだが、舞い上がっていた私にはそんな余裕はなかった。
それにしてもツリーウェルは強烈だ。大きな木の根元にはツリーウェルと呼ばれる穴が空いて いる。あまり木に接近しすぎるとこの穴めがけてダイビングする事になる。 最悪の場合板が木に引っかかり逆さにぶら下がる事になる。これはつらい。腹筋をつかい体 を起こしなんとかビンディングを外す、あるいはストックを使い手探りでビンディングを外す。何 とかビンディングが外れると、今度は支えを失った体が穴の底めがけて落っこちることになる。 頭から落っこちると口と鼻に大量の雪が入ってくる。溺れそうになりながら、必死に上と下を入 れ替える。そして木によじ登って穴から這い出す。 こんな事を繰り返しているとだんだん体力がなくなってくる。きっと経験しなければわからないと 思うのだが、目安としてはビルの階段を1階から10階まで必死になって駆け上がるぐらい疲れ る。 滑る、飛ぶ、ビンディングが外れる、穴に落ちる、もがく、滑る、ビンディングが外れる、穴に落 ちる、もがく・・・ああ、もう15回以上は転んだな・・・そろそろ体力も限界だあ、そう思っていると 本日最終ランの声がかかった。やったあ!やっと帰れる。 しかし最後のランで・・・とうとう私の足が悲鳴をあげた。まず右足の太ももが吊った。右足をか ばって滑っていると今度は左足の太ももが吊った。がまんして滑っていると今度はふくらはぎが 吊った。 最後の何kmはキックターンで降りることになった。とにかく足はまったく曲げることができな い。足をぴーんと伸ばした状態で斜滑降。まるでロボットだ。木にぶつかったら痛みを堪えてキ ックターン。足をぴーんと伸ばした状態で斜滑降。木にぶつかったらキックターン。「ああっ、こ んなにおいらは体力がなかったのか?」すっかり自信喪失をしながら山を降りる。
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