珍動物の館

断裂日記07(手術シーン)


あなた・・・かなり勇気がありますね。
それではさっそく手術に入りましょうか。遠慮はしませんよ、ひゃひゃひゃ。


まず、T時帯(ふんどしみたいな布きれでパンツの代りに腰に巻く)と術衣(手術用のパジャマで
ワンタッチでスッポンポンに出来る。)を着用します。着替えが終わると若い看護婦がやってき
て私の左手に点滴の針を刺します。「ごめんねぇ。ちょっとチクッとしますよお」、若い看護婦の
お注射はちょっとくすぐったかったりもします。この点滴には数時間の間なにも飲み食いができ
ないため脱水になるのを防ぐのと、もし何かあったときのために血管を確保しておく2つの目的
があるそうです。さて至福の時も終わり、ほどなく手術室に運ばれると、そこには3人のドクター
と3人の看護婦が立っています。悲しいことに手術室にいる看護婦は白衣の天使などというか
わいらしいものではなく、深緑の手術衣・深緑のマスク・深緑の帽子で身を固め、肌の露出は
目のまわりだけ、色気などは一切感じられません。そのうえ遥か高い目線から6人の同じ格好
をした初対面の人間に周りを取り囲まれ緊張はピークに達します。そして緑色のおじさんにス
ッポンッポン(除くT字帯)にされます。


麻酔は腰椎麻酔となります。腰椎麻酔とは脊椎に打ちこむ局部麻酔です。もちろんしっかりと
意識が残ります。背中を丸め「ブスッ」と麻酔を打たれるとすぐ足先からしびれ始め1分もしな
いうちに感覚がなくなります。医者は感覚のないことを確認するとテレビドラマでもおなじみの
せりふを発します。「メス」。痛みが感じなくなることと恐怖感がなくなることは別問題です。なに
やら膝のあたりでスパスパやっているのがわかります。「こ、恐い。た絶えられない・・・寝てしま
おう」。私は、恐怖から逃れるため現実逃避に入ります。そんな弱気になった私を裁くかのよう
に、「あっ」と驚く出来事が私を襲いました。 


「やっぱり恐いから寝てよう」、寝ようとしている私に脳天を貫くサウンドが襲います。「ギャー
ン、ギャギャーン」電気のこぎりがうなりをあげています。「ガリガリガリ、ゴガガガガッ」。そう、
説明をしましょう。再建手術とは膝の皿とすねの骨をつないでいるしつがい靭帯とよばれる太さ
2〜3センチほどの靭帯を電気のこぎりで切りはがし(太さ1センチ分だけ)、その切り出した靭
帯を大腿骨とすねの骨の間に押し込み、さらに両端を固定するため、大腿骨とすねの骨にそ
れぞれ電気ドリルで穴をあけ、金属のボルトを打ち込み固定しなおす手術であります。


「確か説明では、まずひざの皿ごとどっかの靭帯を切り取り前十字靭帯の代りを作るといって
たなあ」。電気のこぎりの音は2分ほど続きしばらく静かになりました。「あれ、終わったのか
な?恐かったぁ」。再び眠ろうとする私に今度は電気ドリルの音が襲います。「ギュイーン、ゴリ
ゴリゴリ、ボコ、ギュイーン、ゴロゴリゴリ、ボコ」。「うーん、目が覚めたよ。きっと骨に穴開けて
るんだろうなぁ」。一時間も過ぎると結構冷静です。「ちなみにどこの骨に穴を開けているんだろ
う」とか「骨の削りかすはどうするんだろう?」とかいろんなことを考えてしまいます。やっと静か
になり、うとうとと始めると今度は・・・・・・。


トンカチです。トンカチで膝のあたりをたたいています。「カン、カン、カン、カン」そうかさっき切
り出した靭帯をとりつけているんだな。「カン、カン、カン、カン」。しっかりトンカチの振動が腰を
とうして伝わってきます。「カン、カン、カン、カン」「ウーンいやな振動だ。まさか骨が割れたりは
しないんだろうなあ」と不安が過ぎります。「すねの骨をのこぎりで切られドリルで穴を開けトン
カチでボルトを打ち付ける。うーん麻酔効いていてよかった。あっ、でも3時間ぐらいで麻酔切
れるんだよなあ。そしたら痛いんだろうか?痛いんだろうなぁ。」ふと壁掛けの時計を見ると3時
間ぐらいたっています。


なんか長いなあと思っていると、先生の「よし終了」といった声が聞こえました。やーっと感動の
手術も終了です。「ほっとするでしょ?本人はもっとほっとします」


次回は手術より重要なリハビリ編です。


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