雷鳴


今日の天気予報は晴れだった。
連休中にぽっかりと浮かんだ平日、5/6
出社しても半分はおやすみ、半分はぼーっと仕事をしている、
そんな日だった。

お昼ご飯も食べ終わり、ぼーっとしていると俄に空が曇り始めた。
大気が乱れて居るのか、雲の流れがかなり速い。
濛々と沸き立つような雲、これは来るなと思った。
やがて地響きを立てて雷鳴が轟きだした

僕が育った滋賀県は、日本でも有数の雷地帯である。
小さい頃、突然の雷雨に濡れて帰ったことを思い出す。
自転車を必死にこぎながら、雨に濡れて走ったあの日。
家の勝手口から、広い広い空に暗雲が立ちこめ、稲妻の走るのを眺めていたあの日。
雷は僕にとってちっとも怖いものではなかった。
雨に濡れることもちっとも嫌なことではなかった。
時には木々の下で木から滴り落ちる雨粒を感じ、
空気の振動で雷鳴の轟きを感じ、
そうして突然雨がぴたりと止んで空が晴れ渡っていくのを見るのが好きだった。

そんな地球の脈動を感じることが時々ある。

夕方、三日月が沈もうとしている頃。
まだ夕焼けが帰依やらぬ真っ赤な西空の側を照らされた月は、
反対側も地球の照り返しでぼーっと光らせていた。
太陽が地平の下にあり、月が地球の横に浮かんでいる、
そんな位置関係が立体的につかめる瞬間だった。
僕には地球がぐんぐん音を立てて回る音が聞こえるような気がした。

夏。
照りつける太陽の下でぎらぎらと灼かれる海を見ながら、
冬の日に降り積もっていた雪を思い出すとき、
地球の軌道と自転軸のわずかな変化がかくも大きな気温の変化をもたらすのかと、
ため息をつくことがあった。

そして夕立。
突如地平線からわき上がった積乱雲がぐんぐんと近づいてきて、
そして大気もぴりぴりと緊張し、その緊張が頂点に達したとき・・・・
稲妻と雷鳴、そして豪雨。


空いっぱいに広がる星空の中で、
明るく輝く太陽のそばで、
漆黒の中に浮かぶ地球の上で、
そんな地球のほんの表面のわずかな部分で、
僕は地球の脈動を感じ、考え、存在している、
そんな風に感じることがある。


雷鳴は徐々に遠のき、
空は突如として晴れ渡り、
一条の光が窓から射し込んだ。
そうだ!
僕は屋上に駆け上がった。
飛び出した屋上の上から、
関東平野いっぱいに、
大きな虹が架かっていた

1999.5.6.


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