象気功


五禽戯



五禽戯・猿戯




五禽戯のうちの猿戯である。

ちゅーごく語読みではユワンシ-である。

恥ずかしい五禽戯の動作の中でも、猿戯の動作はさらにものすごく恥ずかしいのである。


とくに猿戯の第一の動作の肩をすくめて拳を寄せる「猿提」を人前でやるには、相当な覚悟がいるのである。

こんなものをいい年をしたおっさんが、子供が遊んでいる公園の砂場の前で1人でやってると、ママ友に気持ち悪がられて即座に通報されておまーりさんに連れて行かれてあれこれ事情聴取されないとも限らんぐらい変な動作である。

そうかといって、これを家の中でやっていても、家族に見られるとおつむの具合を心配されて、救急車を呼ばれて強制入院させられる恐れもないではないので、やりたい人はトイレの中などで、家族にも知れないように密かにお楽しみにならなければならないのである。

見方を変えると絶滅寸前の秘宝館の恥ずかしい展示物みたいなもんであるので、とくに子供に見せてはいけないのである。

天下の五禽戯をぼろくそである。

いや、別にあたしは猿戯にうらみもなんにもないのであるが、一応文句を言っとかないと象気功の示しが付かないのである。


示しって、いったいなんの示しか判然としないのであるが、朝はだいたいこんなもんであるので、つかみと称して尺埋めに終始してしまうのが慣例であるということをご承知の上で読んでいただきたいと予めご報告申し上げておくのである。

ううう、なんなんだこれ、どんどんでたらめになっているのである。

いつになったら、猿戯の効果の解説が始まるんだ。

誰かなんとか言ったれや。

言ったれやって、あーた、いったい誰に言ってんですかである。

ううむ、キリがないので、それでまあ、猿戯の第一の動作である「猿提」は手の形を「猿鈎」にして行われるわけである。

猿が提げると書いて猿提である。


ちゅーごく語でも日本語でも、「提」は「手にさげて持つ」「ぶらさげる」てな意味合いがあるのでである。

たとえば提灯は灯りを手に提げるてなことであるのを考えると分かりやすいのであるが、べつに猿が提灯をぶらさげているということではないのである。

そんなような動作に似ているということである。

まあ、これはあまりネタとしての広がりが期待できないので、スルーしてどんどん先に行くのである。

おいおい。

それで、本戯手形の猿鈎を作ってみると、僧帽筋や大胸筋を中心に肩の周囲に緊張あるいはテンションがかかるのである。

この猿鈎で、猿提の形を作り踵を上げると、さらに僧帽筋や肩を中心として全身の深層筋群が緊張するのである。


そのまま首を左右に回すと、ゴリゴリと首の周囲の筋肉のマッサージになるのである。

筋肉を緊張させてゴリゴリでは気功法としては逆効果ではないかつー疑問が当然のごとく湧き上がるわけであるが、そこがしろーとの浅はかさであるのである。

そこから、踵を下ろして猿提を解いて猿鈎を解くと、一気に筋肉は弛緩するのである。

緊張の後の弛緩は、一気に血管が開いて、血流が怒涛の増加となるのである。

閉じていて血行不良であった部位の血管もそれなりに開いて血行が良くなるのである。

これはとくに肩こりを和らげることに効果があるのである。

なーんだ肩こりかと馬鹿にする向きもあるとは思うが、これもしろーとの浅はかさのはか穴ほりほりであるのである。


肩こりは万病の元であるのは現代医学でもじょーしきである。

これがひどくなると、仕事や生活にも支障をきたして、重症の肩こりになると頭痛やめまい、さらには心臓などの臓器にも影響が出て、いわゆるお病気の範疇になるのである。

その重大なお病気をもたらしかねない肩こりの解消法のひとつが、肩をすくめて緊張させて、それを解いて血流を一気に増加させるという方法である。

緊張と弛緩をうまく利用して、閉じた血管を開こうという功法であるわけである。

似たような動作が肩こり解消の健康体操なんかでも行われるので、ご存知の方も多いと思うが、その肩をすくめる動作を猿の動作にこじつけた名称が猿提であるわけである。


さらに、踵を上げて下ろすことにより、骨格筋に比較して著しく毛細血管の多い全身の深層筋群にも緊張と弛緩の効果を与えるので、全身の血行促進効果もあるわけである。

気功法の原点はかくのごとく血行促進にあるのである。

馬鹿でも元気が気功法の根本原理であるのである。

まあ、さらに言えば、血行促進というのは氣の発生を伴うわけであるので、その2次的効果としての内気や外気といった氣による身体への影響を体系化したカリキュラムが考案されたわけである。

その延長線上に遠隔気功であるとか、氣で人が飛ぶと言ったことが、とんちきな連中のホラによって超能力や神のなせる技のように吹聴されているわけであるが、氣が脳波による情報であるということを踏まえて将来的には解明されて、当たり前のこととなるのは当たり前であるのであるということを神のお告げとして予言しておくのである。


これ以上でたらめになると収拾が付かなくなるのでじょーだんはこれくらいにして、おいおい、じょーだんかよ、つーことで、猿提を心臓や腎臓の強化だの回春効果だのと大げさにのたまわるちゅーごくのセンセーもおられるが、まあ、全身の血行が促進されるのであるから、それもあながち間違いではないが、なんでも大げさに言えばいいってもんでもないので、肩の周囲を中心とした血行促進効果ということで理解した方がまともな方向性であるのである。

さて、第二動作の「猿摘」は猿が桃を摘んで、それを眺めて喜んでいる動作であるつーことであるが、まあ、体を捻り伸ばすことによる、いわゆる全身のストレッチ効果を眼目としているわけである。

ストレッチの効果については今更解説するまでもなく、血行促進、筋肉の柔軟性、関節可動域の拡大、さらには動作における圧迫あるいは引き伸ばすことによる内蔵の活性化ということで、気功法のみならず健康法の中核である。


また、猿摘には腰を下ろして片足の踵を上げ、片足に体重をかけることによる下半身強化という目的もあるわけである。

このように、至れり尽くせりの体操である猿摘を行えば健康になれること請け合いであるが、猿が桃を眺めてご満悦てな気恥ずかしい動作を人前でやる勇気はあたしにはないのである。

てなことで、おちゃらけてるだけとしか思えない文章の中に本質をぶすりと突いて驚愕さめやらぬ象気功は1800年の歴史を持つと言い張る五禽戯をぼろかすに言い倒して、いよいよ最終動作の鳥さんの真似に突入するのである。

カーカー。

鳥って、カラスかよ。

続く。

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