象気功
象気功

本日の御神託


レンタカー・その2


さてさて、高校1年の春休みのバイト先のレンタカー会社のカウンターで社長の留守に、粋でいなせで迫力満点、うっかりキレたら懐から光ったものが出てくること確実の、誰が見てもわかりやすいお顔髪形ファッションものごしのおにーさんが来られて、「免許証を忘れたが、車を貸せ」とおっしゃられたのであるが、他人(ひと)の会社の仕事で命なんかかける気持ちはこれっぽっちもないあたしはもちろん「はい、どうぞ」と鍵をお渡ししたわけである。


あたしはこの粋でいなせなおにーさんが威風堂々の大また闊歩で免許不携帯もしくは無免許で車に乗り込んでいなくなってから、「ううむ、社長の仕事が長引いて、帰ってくるのが、粋でいなせなおにーさんが車を返しに来るのより遅くなれば問題はないが、これ、先に社長が帰ってきたらすごいことになるなー」と天を仰がずに神に祈ることしばしで事務所のテレビを見てたりして、そうこうする内に、支店に用事で出かけていたイギリス人を祖父に持つといういいとこ育ちのろくでなし風先輩にーちゃんが帰ってきたのである。

このろくでなし風先輩にーちゃんは、実家が横浜で、当時のハマ(横浜)ではいわゆるぶーいぶい言わせていたそうで、ディスコで仲間数人と当時人気絶頂であった某有名タレントを殴ったというのが自慢で、さらにそのハマのグループ同士の対立でやったやられたで覚えたシャドウボクシングが自慢で、さらにこの手の皆さんにありがちなレーサーまがいの暴走行為も自慢で、さらにさらにそんなこんなで問題や事故を起こすたびにイギリス人のお子さんであるお父様がお金でお解決になられるのが自慢という、話を聞けば聞くほどこのバイトが終わったら係わり合いはいっさいお断りしたいというおにーちゃんであるのである。


でも、あたしには、一時的な後輩であるにも関わらず大変優しくて、車の洗い方から、暇なときは車の運転まで教えてくれ、キーの直結によるエンジンのかけ方からそれを利用した持ち主に断りなくそのお車をシッケイする方法まで教えてくれるという、なかなか素敵(すてき)ないいアニキであったのである。

まあ、悪ぶっているのであるが、基本的にイギリス人を祖父に持つものすごくいいとこのおぼっちゃんであるので、「ものすごくいい人」であるわけである。


まあ、社長の話によると、社長はこのろくでなし風先輩にーちゃんが来たときに履歴書を見て、「おお、この関東の某有名3流大学をでてるのか!まさかうちにみたいな零細企業に大卒がくるとは思わなかった、これはわしの片腕としてやってもらおう!」と大感激してすぐさま雇ったそうである。

これが、べつに仕事をさぼるてなことでもないのであるが、夜になると一転して、事務所の2階でストーブつけたまんまナニのオクスリ飲んでさらに酒飲んでおラリになるは、支店のおねーちゃんの部屋に上がりこんで社長に苦情が来るは、昼間もオクスリが残っているのかカウンターの椅子に座ったまま眠りこけてズデンと転げ落ちるはで、もう、毎日悩みが耐えないということを、社長がバイトにきたばかりの子供のあたしにぐちるのであるから、これ、そうとう困っていたと思うのであるが、なにしろ極め付きの零細企業の経営者である社長にしてみれば、その当時の就職事情で大卒が来るなんてのは夢のまた夢であるので、その人間の問題がすっかり判明しても解雇する決断がつきかねていたのかもしれないのである。


まあ、この社長のぐちを聞いて、このろくでなし風先輩おにーちゃんが、いいとこの出で、3流とはいえ某有名大卒で、25歳で、イギリス人の血を引いているといってるだけにそれこそ日本人ばなれした男っぷりで長身で優男(やさおとこ)で、経歴も見かけもいってみれば非の打ち所のない条件であるのに、これ以上ない零細企業のレンタカー会社の汚い事務所の2階に住み込みで働いているというのがなんとなく納得できたのである。

ううむ、雑な新聞小説の連載みたいであるが、続きはまた明日である。

続く。

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