象気功
象気功

本日の御神託


守屋君


ううむ、仕事で北千住まで出かけるのであと20分で書かなければならないのである。

まあ、そんな状態でなんのネタにしようかと思うのであるが、まあ、思い出ネタかね。

たしか、小学校4年のときであったと思うが、守屋君という友達がいて、その守屋君が脱腸の手術をしたのである。


それで、守屋君はその手術後の治療のために定期的に病院に行かなければならないのであるが、これ、医者というのはそうとうせっぱつまっていない限り、子供にとっては、いいことが何もないとしか思えないので、とにかく行きたくないところの代表であるのである。

退屈な待合室でえんえん待たされて、名前を呼ばれて緊張して入ると、注射だのなんだの痛いことをされて、何か楽しいことなんてことは微塵もミジンゴもミドリムシもゾウリムシほどもないのである。

その上、放課後の大事な遊び時間をつぶされるので子供にとっては踏んだり蹴ったりであるのである。


そのときも放課後に守屋君はあたしと遊んでいたのであるが、病院に行く時間のはずであるのに、急にしらけた顔で、「なんか買ってあげる」と言いだしたのである。

あたしはいきなりのお申し出に、状況が飲み込めなくて、きょとんとして、「え?」と言ったのであるが、守屋君は「この250円でなんか買いに行こう」と言うのである。

まあ、数十年前の当時であるので、子供に250円は大金であったのであるが、しばらくして、どうもこれはその脱腸の術後の治療代であるということが、あたしの子供心にも「ははあ」と納得できたのである。


それで、さすがに「ううむ、そんなことをして大丈夫なんだろうか」と考えたのであるが、守屋君は「なんか買いに行こう」とさらに言うので、「うん」と言って、近所のなんというか、子供の好きなものを寄せ集めて売っているたしか「ぶんちゃん」と子供たちが呼んでいた店に行ったのである。

その店で、前から欲しかった模型飛行機の「C級」てな名称の一番大きなクラスのやつを「これいい?」と言ってみたら守屋君は「うん」と言うので、買ってもらったのである。


この、状況でも「ううむ、これは、やっぱりまずいんじゃなかろうか?」という危惧がないわけでもなかったのであるが、前からその模型飛行機が欲しかったので、そのまま買ってもらって、家に帰って、忙しく夕食の支度をしてる母親に「これ、落ちてた」とバカ丸出しの嘘を言ったら、母親がふり返りもしないで「あら、そう」と言ったので、その晩それを作って、次の日に守屋君と学校の校庭に行って飛ばして遊んだのである。

まあ、これ、守屋君はおそらく遊ぶのが楽しくて、気がついたら病院に行く時間に遅れていて、それで、どうしようかということでこの行動になったのではないかと思うのである。


守屋君がもう少し年長であれば、その金を貯めるということも考えつくと思うが、まあ、当時はなかなか子供が自室を持てるという住宅事情でもないので、隠す場所にも事欠くので、守屋君もこの金は持っていられないし、自分で使うと親に見抜かれてとんでもなく叱られるし、医者に行かなかったことがバレたらこれさらにとんでもなく叱られるし、てなことで、じゃあ、友達になんか買ってやろうという結論になったと思うのである。

たいていの親御さんは子供に「絶対に嘘だけはつくな」と厳しく躾(しつけ)るわけであるが、子供はときどき嘘をつかないと暮らせないのである。

もちろん、大人は嘘だらけでお暮らしになっているわけである。

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