SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第5号

川崎市国際交流フェスティバルに参加したこと

藤田勲生

 これは昨年秋、市民ネットがお馴染みのタイカレーの屋台を出した川崎市国際交流フェスティバルにて、すっかり呼び込み役が定着した藤田さんの感想である。

 勤労感謝の日に、SVAの行事の一環でフェスティバルに参加しました。渋谷駅から白石さん、河口さんと同行。小雨という天気予報だったので、寒い一日になるだろうと予想していたのですが、東横線の車窓からは雲の合間から朝の光が暖かく射し込み、木々に残る紅葉が、この秋最後のぼくたちの活動を応援してくれているようでした。

 多摩川の長い鉄橋を渡ると神奈川県。最寄りの駅の元住吉駅で下車、野村さん、岩田さんと合流。まだ来ていない人を待っている間、所用があって駅前の電話ボックスに入ると、グレーの電話機に国際電話の注意書きが、日本語の他に英語、中国語、ポルトガル(ブラジル)語、タガログ語、タイ語、ペルシア(イラン)語(以上は推定も含む)で書かれてありました。ハングル語がないのは在日朝鮮・韓国人が日本語理解に不自由していない、ということでしょうか。明治期以来、京浜工業地帯を支える中枢企業を擁してきた一方で、労働運動の中心地として、また公害、喘息といった負の現象でも名前をはせたかつての高度経済成長の象徴的な街・川崎も、今や「ともに生きる社会=共生」のコンセプトのもと、新しい趣の街創りを模索しているようです。「神戸大震災で被災した外国人学生への寄付金集め」が今回のフェスティバルの目的です。

 駅前の100メートル以上になろうかという長い商店街の中のスーパーマーケットで白石さんと一緒に材料の買い出し。両手一杯に袋を下げて、活気のある商店街から脇に入って行くと静かな住宅街になり、その一角が開けて人工池と芝生が見え、それが会場の国際交流センターの中庭の一部でした。奥の白い3階建ての横長の建物は昨年オープンしたばかり。図書館、ホテルなども併設するきれいな会場の中庭では、すでにいくつかの出店で調理の火が起こされていました。SVAのテントは通り道の一番手前左手にあり、場所的には好条件。道をはさんだ中庭には、5、6本のパラソルの下に白いテーブルと椅子が置かれ、それを他の出店の‘並び’と、コの字型の本館が囲む形です。広さは20メートル四方ぐらいでしょうか。さっそくウチも始めるぞ、ということで本館内2階の調理室へ移動開始、その往復がてらヨソの様子は、とグルリまわってみると・・・右隣から順に横浜中華街風饅頭とシュウマイ、韓国風どんどん焼き(辛目のお好み焼き)と焼き鳥、アメリカのペッパー風味タンドリーチキンとノン・アルコール赤ワイン、ブラジルの小麦粉をあげたお菓子、インドカレーとマンゴージュース、そして日本のおでん。中国人なりインド人らしき人たちがコックさんスタイルで額に汗してフライパンや鍋を握っている様子はどう見てもクロウトさんの雰囲気です。東京市民ネットは、いつもながらのクッキング・パパ白石さんをエースとして、‘日曜クッキング感覚’で悠々とスタート。分担は河口さん、野村さん、藤田が調理、岩田さん、橋本さんがテントで販売準備、新見さんがクラフト販売です。
約1時間で調理準備完了、香辛料の香りがテントから漂い出すころ、陽射しも大分出てきて、人の出足も好調です。

 さてこの後は販売に突入していった訳ですが、ここからは販売の作戦について、競合相手?のインドカレーと比較する形で考察して行きたいと思います。

単価

売上原価

販売食数

利益

インドカレー

¥700

@¥400

80

¥24,000

マンゴージュース

¥100

@¥80

50

¥1,000

インド合計

¥25,000

タイカレー

¥400

@¥200

45

¥9,000

タピオカジュース

¥300

@¥100

25

¥5,000

タイ合計

¥14,000

〈数字の根拠〉

・インド側のデータは、客の列の並び具合と、実際に食べてみた上での推定値。

・SVAの販売数は河口さんの報告による。タイカレーの販売数は辛口、中辛合わせたもの。閉店前の値下げ分は、本来の値段で計算し直されている。

・SVAの売上原価は、白石さん提供のデータ(直接材料費/カレー@¥150。ジュース@¥80)に、間接材料費(スプーン、紙皿)を各@¥20として加え、更に出店料¥1,000を便宜的にカレー原価に含めて切り上げしたもの。

〈売上利益の比較〉

・調理、販売人数はタイ側がやや多い程度であったが、準備・調理時間の長短、玄人用調理器具の有無(インド側はナン焼き器を用意)を考えれば、タイ側は善戦したと言えるのではないか。

〈カレーの味〉

・インドカレーの辛さは子供も含め日本人の舌に馴染みやすく、加えてその場で焼いたばかりのアツアツのナンにつけて食べるという「できたて作戦」が功を奏したと思われる。これに対しタイカレーは辛さに馴染みが薄く、人によっては敬遠される傾向がある。特に子供に対しては過敏な場合があり(アレルギー?)、客層の多くは大人である。タイカレーをソウメンにつけるやり方は‘通’にはウケたようである。

〈販売価格について〉

・インドカレーの価格¥700は他の店も含めて単品としては、中華饅頭セット(5コ)¥1,000に次ぐ高値のメニューであったが、ナンも大きく、トリ、エビ2種類の具を用意(それぞれ辛口、甘口)し、昼食用でもけっこうイケル。これに対してタイカレーは、一皿おやつ感覚で食べられるボリュームで、単価¥400はちょうど手頃な値段であったと思われる。一方のタピオカ・ジュースは、小中学生の客も多かったが、いくつかの店を回りながら飲み食い、買い物をしていることを考えると、もう少し安めの¥150から¥200くらいの設定でも良かったのではないか。
・もし同じ数だけ売れるなら、カレー¥500、ジュース¥200とすれば、利益は増える(¥16,000の利益、¥2,000の増)。販売促進のためには割引セット料金として、¥600とか¥650を設定するのも一案かと思う。

〈収益を得ることについて〉

 上記で計算した収益金は、主催者に出店料として支払われ、神戸の外国人被災学生に寄付される予定の¥1,000を除いた金額であり、そのままSVAの収入となるそうです。
先ほど販売料金について意見を述べましたが、そもそもこのような考察が重要とされているのでしょうか。というのも、SVAの広報誌に出ている寄付金の総額に比べればカレー収益金は僅かですし、小さい金額(タイの社会では大きいのでしょうが)にこだわらずに楽しくやる、という主旨であれば、今のままでいいのかな、という気もします。

 金額そのものが目的ではないことを前提とした上での年間目標額があっても良いのではないでしょうか。タイバーツ(現地通貨)の交換レートや、物価上昇率を踏まえて年々設定してはどうでしょうか。もちろんメンバーをどう増やすか、どのあたりの人をターゲットにするか、広報活動は、といった諸要素と共に論議することになると思います。

 今述べたようなことはもうすでに十分に検討され、また試行錯誤した上での現在のスタイルになっていて、それを自分が知らないだけなのであればご指摘戴ければ、と思います。

 私はタイを含め東南アジアに行ったことが無く、自分の発想が机の上のものだと認識しています。SVAに関わりがもてたのを機会に、彼らの社会のこれから、それはとりもなおさず私たち日本社会のこれからでもあると思いますが、生身の人間の息づかいが感じ取れるレベルで、いろいろ考えて行きたいと思います。経験のある皆さんのご助言をよろしくお願いします。

 以上、長くなりましたが、自己紹介も一部含めながらのレポートを終わります。


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