SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第5号
私が訪問したのは金曜日の夕方、広いスペースの一角にある「ぐらするーつ」のコーナーには、次々とお客さんが訪れる。家族連れ、若いカップル、中年の女性グループ、女子高校生の一団と実に様々な顔が見える。
終日、人の波が途切れない池袋のサンシャインシティの中では「ぐらするーつ」のあるワールド・インポートマートは、余り人が来ない場所だ。5階に東京都のパスポートセンターがあり、6階には個人輸入に関する窓口「ミプロ」(財団法人・製品輸入促進協会)、そして輸入商品を販売する「舶来横丁」がある程度で、エレベータに乗るお客さんの大半は上階にある「サンシャイン水族館」に直行してしまう。その「舶来横丁」の一番奥の一角が「ぐらするーつ」なのだから、地の利は余りよくない。つまり、繁盛しているわけだ。
何度か足を運んでの印象は、お店の人の接客姿勢がとてもいいということだ。ふつうのお店に見られるような「押しつけセールス」はしつこく、かえって購買意欲をそがれてしまうものだが、ここでは自然体で好感の持てる接客態度が感じられる。なぜなのだろうか、それは扱っている商品の内容、つまり現地の生産者のこととか、製法、さらには「公平貿易」やNGOについての説明を嫌味なくしているからに他ならない。ただ売ればいいではなく、商品を通して様々なことを理解してもらいたいというコンセプトが「ぐらするーつ」の基本になっているようだ。
お店の担当者で常勤は「グローバルヴィレッジ」から移ってきた小島美佐さんという、若くて素敵な女性ひとりで、あとはボランティア的なパートの皆さんが支えているのだが、そのボランティア一人ひとりが自分のプロジェクトを持っているというのも特徴である。各自が自分のテーマを考え、販売とともにそれに取り組むことによって「ぐらするーつ」は、単なる「輸入商品販売店」とは違ったものを来店者にも印象付けているのだ。
何度か訪れる度に、商品のディスプレイが変わりさらには充実している。開店時は出資しているNGO5団体や大手からの仕入れだったが、その後小さな団体の商品も増え、今はかなりな点数になっているという。売り上げも当初の見込みに対して150%程度と順調に実績を出している。最近はボランティアの人件費もある程度支払えるようになったというから、まずまずだ。
このように「国際協力ショツプ」は順調に動き出した。その前提になるのは、各NGO、ATOのこれまでの活動である。その努力と経験の蓄積と新たな店舗展開が噛み合ったということだ。そのうえ、店長の小島さんの明るく、積極的なキャラクターが全体を引っ張っている。人材が大事ということを証明している一例である。しかし、日本ではまだまだNGO活動が地域に浸透していない。このようなアンテナ・ショップがあちこちの町に出来て繁盛するまでには時間がかかるだろう。そのためにも「ぐらするーつ」が発展することを願っている。皆さんものぞいてみませんか。
(取材・文:白石孝)