SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第5号

街頭募金体験記

「一緒に募金活動をさせて下さい」

〜寒風の中、あるご婦人の姿に照らされて

SVA広報課 大菅俊幸

 阪神淡路大震災から1年目のその日、1月17日は朝から底冷えのような寒さであった。我々東京事務所のスタッフは、「いつも皆さんにお願いするばかりでなく、自分たちでも募金活動をやろう」と、ボランティアの方にも手伝っていただき、都内の街頭に立って募金活動を行った。
終わってみれば、普段やりつけないことだけに、足がガクガクになった人、大声を張り上げて喉を涸らした人など続出。Yさんなどは、その日の夜に寝言でまで「ご協力お願いします」と叫んでいたとのこと。「SVAスタッフの鏡だ」と、みんなから尊敬されることしきりであった?

 その日、朝5時15分、巣鴨泰宗寺に集合。ご住職旗本師に被災者慰霊の法要を行っていただき、震災の時刻に会わせて5時45分全員で黙祷。そして一旦事務所に集合し、募金箱やプラカードなど七つ道具を揃えていざ出陣。午前と午後に分かれてそれぞれチームを組み、都内の各所に散った。午前の部は8時から10時まで。私は奏さんらと一緒のグループで東京駅・丸の内口の担当であった。そしてほとんどみんなが街頭募金初体験。「本当にどれぐらい集まるだろうか」「知ってる人と会ってしまったらちょっと照れるなー」、ちょっぴり不安な思いで立った私たちであった。

 10分、15分経過・・・、募金箱は空っぽ、まだ誰も入れてくれない。朝8時過ぎの丸の内といえば、言わずとしれたラッシュアワー。人通りは多いのだが、そそくさと目もくれずに通り過ぎて行く人ばかり。折からの寒風がよけいに身に沁みてくる。「やっぱり、ここは場所が悪いのかもしれないね」、みんな少々落胆の面もち。ややあって、一人の女性が立ち止まって100円を入れてくれたときの嬉しかったこと。その方が立ち去ると、お互いに顔を見合わせて思わずニンマリ。30分ぐらい経過した時のことであった。結果的に、その時集まったのはほぼ1万円。目標には遠く及ばなかった。人様からご支援を頂くことはやはり生やさしいものではない。

 やがて休憩をはさんで午後の部。今度は私は数寄屋橋の担当。八木沢さんらと一緒のグループである。1時5分過ぎ、現地に到着すると、一人の見ず知らずの中年の婦人がつかつかと寄ってきた。「新聞で見たんですが、SVAが街頭募金をするということなので、待っていました」という。募金に応じるためにわざわざ待っていて下さったのかと大感激。だが、そればかりではなかった。なんとその方は、私たちと一緒に募金活動をしようと待っていて下さったのだ。そして、一緒に大きな声を張り上げて手伝って下さった。
数寄屋橋は午前の時とは打って変わって、途切れることはなく募金箱に入れて下さる方がいらした。中には1万円札を入れて下さった方もいた。お金の額ではないのだが、やはり有り難い。「きっと身内の方で被害にあった方でもいらしたのかもしれませんね」と、先程のご婦人も感激でうっすらと涙を浮かべておられた。

 こうして、4時半に終了。とうとうそのご婦人は最後まで手伝って下さった。そして、「今日は本当に勉強になりました。ぜひ会員にならせて下さい。私は会計のようなことならできますし、何でもお手伝いしますから、ご連絡下さい」と言って、その場で会員となって下さった。本当に1日の疲れも吹き飛ぶような思いであった。その方の姿に、お金以上の「心のチップ」を頂いた気がする。そして、「こういう方々の真心にお応えできる私たちでなければならない」と、励まされる思いであった。

 折からの寒風にさらされながら、世間の冷たさと暖かさを感じさせられた1日であった。


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