SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第16号

「震災ボランティア4年間の歩み」報告

岩田哲夫

 5月22日土曜日、日本財団ビル10階ホールにて、「震災ボランティア4年間の歩み」と題されたシンポジウムが開かれた。このイベントは、4年間を神戸で「SVA」のボランティアコーディネーター、「まち・コミュニケーション」のスタッフとして務めた浅野幸子さんが、この春、東京に戻ってきたことを機に行われたもので、第一部が浅野さんの報告、第二部が浅野さんと天野秀昭さん(世田谷ボランティア協会)、大塚明さん(台東区社会福祉協議会)のパネルディスカッションによるものであった。いずれもこのイベントの協力団体となっている「A-yan Tokyo」の代表である福田信章さんの進行により進められた。

 参加人数はほぼ70名。中心は20代で女性が多かった。やはり神戸にボランティアとして駆けつけた人達が多かったのだろう。

 第一部の浅野さんの報告が終わり、休憩を挟んで第二部へ。「神戸から見えてくるもの」と題して行われたパネルディスカッションでは、主にコミュニティーの在り方について話は進められた。三人のパネラーはそれぞれの立場と経験から話を進める。

 台東区社会福祉協議会の大塚さんは、下町の福祉の仕事の中で、神戸と同じ状況に遭遇することが多く、現在の社会システムの中で広がるひずみを神戸が顕在化したことをはじめとし、行政が行う地域の組織化とコミュニティーの不同一性を強調していた。

 世田谷ボランティア協会の天野さんは子供の遊び場づくりという仕事から、子供の世界での自然発生的なコミュニティーの形成を例に、人間が共に生活する上でのコミュニティーの重要性を説明。しかし、プライバシーとコミュニティーという観点から、現代社会においては、コミュニティーが個人にとって邪魔なものにさえ成り得る点にもふれ、その点を踏まえてコミュニティーを考えることが重要だという見解を持っていた。

 浅野さんは、神戸での経験からコミュニティーへの参加の仕方についての見解を語っていた。

 このような形で話が進められる中で、客席から唯一積極的に発言した人がいた。その人は杉並在住の50から60歳くらいの男性で、地域の中で生活を続ける上で生じてくる行政に起因する問題点を訴えていたのだが、それに対しパネラーの大塚さんは、神戸の現状や介護保険の問題をみていて、国に期待する事に限界を感じていると応えていた。

 さてここに参加している20代の人達はこのやりとりをどう捉えているのだろうかと思っているうちに、時間切れでパネルディスカッションは終了してしまった。今となっては知る術もない。かも知れない。

※浅野さんの報告の詳細についてはシャンティーブックレットシリーズ1の『被災地に学ぶ「まち」の未来』(¥600)を参照してください。


里程標内容SVA東京市民ネットワーク