SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第14号

第2回ワンワールド・フェスタ北多摩開催
 地域からの国際協力活動定着化への一歩

9月12〜13日に開催、のべ4千人

 昨年は秋も深くなった11月中旬の開催だったが、今年は残暑厳しい9月中旬という日程になった。秋は10月第一週に日比谷公園で国際協力フェスティバルが開催されるほか、三鷹市国際交流協会、シャプラニールなど、同趣旨の企画が毎週どこかで行われており、さらに地域での各種行事の合間をぬって日程を入れなければ行けないので、どうしてもやや時期はずれの設定にならざるをえない。

 夏休みがあけてすぐのうえ、暑さが続くという日程に不安を感じていたが、結果としては天候にも恵まれ、昨年以上の来場者となった。さらに、この種の「お祭り型イベント」では固い企画は成功しないというジンクスも打ち破り、シンポジウムなども盛況であった。では、フェスタ全体をふりかえり、あらましを紹介する。

国際協力活動を地域に広げたい

 このフェスタを企画したそもそものきっかけは、各NGOのスタッフやボランティアが近所に住んでいることをお互いが知ったことに始まる。ふだんは、都心の事務所や海外の派遣先で活躍し、自宅には寝に帰る程度という人が多い。ところが、NGO活動を人的にも財政的にも広げていくためには、地域へと浸透させていかなければならないのは明らかだ。そこで、「足元からの国際協力」を掲げてフェスタは地域密着型イベントとして昨年スタートした。

 ただし、海外のことだけではなく「地域」をキーワードとするならば、地域社会における国際化の問題に直面することは必然であった。そこから、「共に生きる社会」というコンセプトが出てきた。

まずは関心を持ってもらう企画を

 しかし、堅苦しいと受けとめられる企画ばかりでは人が集まってこない。そこで、フリーマーケットやワールド屋台を前面に出すことにした。会場の東久留米市・市民プラザは開設当初からイベントスペースを併設し、屋外ひろばと屋内の多目的スペースがその企画にマッチしていた。

 もちろん、食文化は添え物ではなく、それ自体がその民族の歴史や現在の生活を反映するものであり、相互理解のためには必要不可欠なものだ。だから、私としては食べものにこだわり、それをイベントの中心に据えることにこだわった。

 屋外にテントもなく屋台やフリーマーケットを出すために、心配なのはまず何よりも天気だが、2年続いて天気には恵まれ、大勢のお客さんに来ていただくことができた。ただし、アンケートの中に次のような意見があった。それは「NGOの展示の方に人があまり入ってこなかったので、くふうが必要」など、屋外のお祭り的イベントには人がたくさん来ても、屋内で開催しているNGOの活動紹介コーナーなどには余り人が入ってこないといったものである。それに対して「フリーマーケットが大好きなので来たが、2〜3回来るうちに屋台料理があることに気がつき、4回目には買って食べてみた。5回目には屋内の展示などを見、今まで知らなかったことも知った。企画した方々、エライと思った。」という感想があった。手前みそになってしまうがまさに私たちが意図したことをずばり表現している。それは「何しろ酒自由、来る人も地域のオジさんオバさんなど、フツーの人たちで良かった。」という感想からも表現できる。最初から国際協力とかNGO活動あるいはエスニックものに関心があり、それを目的に来る人だけを相手にしていては、地域の国際化が広がることにはならない。表現は悪いが「騙してでも」来て、見て、楽しんで、そして感じ、考えてもらうというのが、フェスタの趣旨なのである。

シンポジウムに人が集まった

 市内の「東久留米国際友好クラブ」と共催で「国際理解講座:オーストラリア編」には50人程が参加。このクラブは東久留米市に国際交流協会がないなかで、広報紙の英訳版発行、日本語教室の開催、生活サポートなどをしっかりと進めている実力派市民グループなのである。

 次は、昨年の在日外国人アンケートを発展させ、外国人の生の声を聞く場の設定であり、これには市役所の担当も協力していただくところまでになった。会議室があふれる40人の参加だった。

 SVAのおはなし活動と市内に本拠がある財団法人おはなしキャラバンセンターの活動紹介には60〜70人が参加、実演には子どもたちも聞き入った。当初は石竹光江さんの講演を予定していたが、体調を崩されて実現しなかったのが心残りであるが市内・近隣の図書館、幼稚園、保育園、地域文庫などの関係者に呼びかけ、関心を持っていただくことができた。

 以上のように「お祭り的イベント」のなかでも「堅い」企画に人が集まったのは成果だった。

行政とのパートナーシップ

 国際化政策にそれほど熱心とは思えない東久留米市に対して、文句ばっかり言っていても始まらないので、可能なセクションからやる気を出してもらおうと、積極的に各課に呼びかけた結果、先の外国人アンケートのほか、「健康相談日」をフェスタに合わせて外国人も対象とすると決まり、通訳ボランティアを担った。通常の相談日より数倍もの来場者となった。

 また、江戸時代にも国際交流をしていた証明となる「朝鮮通信使節来日の図」野屏風画を市民が市に寄贈、その初公開の場ともなった。教育委員会との共催事業である。

音楽など芸術・芸能にもこだわる

 昨年は大赤字の原因となったコンサートだが、今年は規模を小さくし、それでも絶対に音楽はやるとの決意で取り組んだ。在日フィリピン人5人のバンド「ラヒン・カユマンギ」(褐色の人種の意)はミンダナオ島の音楽をベースに元気な演奏を聞かせてくれた。在日コリアンの李・政美(い・じょんみ)は素晴らしい歌声で魅了してくれた。コンサートの開催はお金と労力が大変だが、異文化理解の大切な要素である。

財政面からのひとこと

 二日間で数千人のイベントを主催するにはやり方次第だが、行政や企業がやれば数百万かかるだろう。それを百万未満でやるのはNPOならではのことだ。実質、20人くらいのスタッフでこれだけをこなすにはそれなりの努力とノウハウは必要だ。また、東京市町村自治調査会・多摩交流センターが50万円以上の助成を「広域的市民活動事業」として手当てしてくれることが本当に嬉しい。


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