SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第14号

メディアに見る外国人差別
−在日タイ人からの問題提起を考えよう

 今年4月に開催されたタイ正月祭「ソンクラーン祭」の会場で、ある在日タイ人から手渡されたのがこれから紹介する手紙である。ちょっと時期がずれてしまったが、是非みなさんに考えていただきたい内容なので、ここに紹介させていただく。


 3月26日(木)夜12:30ごろに、東急ケーブルTV(9チャンネル)を見ていたが、タイでも援助交際が社会問題になっているというニュースが報道された。私のふるさとのことであるので真剣に見ていた。が、明らかに未成年者である女子の顔が隠されず、そのまま報道された。私は、その報道を見てびっくりして、顔が真っ白になった。その女子の顔はどう見てもまだ13〜14歳にしかなっていない、タイの女の子の顔であった。なぜ、こんなに人権を無視して報道できるのか、日本の国は人権意識のレベルの高い国だと思っていたので、私は信じられなかった。

 その画面はタイの女の子の顔で、約10人位が長いすに並んで座っていた。その画面の中では、この女の子たちと援助交際しているタイ人だけではなく、日本の男の人もたくさんいたと報道していた。そして、その中の一人の女の子のインタビューでは“ある人に誘われたときにはレストランのウエイトレスの仕事と言われたが、本当はソープランドの仕事をさせられた”ということであった。さらにこの女の子の胸には番号もつけられていた。インタビューをされた女の子の顔は映されなかったが、首から下を全身映し、声はそのままだった。

 次の画面では、自民党の森山真弓さんのインタビューがあり、日本での自動買春に関する法制化について、現在の国会の状況を述べていた。

 このような報道をする時に、なぜ、タイの女の子の顔をうつすのか理解できなかった。これは、タイ人にとって人権侵害であると思う。私は、日本国憲法を学んで日本は人権を尊重し、人権意識の高いレベルの国だと思っていたが、大変残念だと思う。たとえ、売春であろうが、犯罪などの罪を犯したとしても、人権がある限り、顔や声などを変えなければならない。なぜ、タイ人の人権、つまり、アジア人の人権を無視して侮辱するのか、私は一人のタイの女として許せないと思った。例えば、同じ問題であっても国がアメリカであると、絶対にこのような画面は、報道されないと思う。アジア人だから、タイ人だからこそやっているのではないか、と思わざるを得ない。

(1998年10月、「里程標」第14号)


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