SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第13号

記録映画・戦後在日50年史

「在日」を観て思うこと

伊藤丈二

 先日、この映画の招待券をいただいて観てきた。日頃ほとんど原稿を書かない(書けない)小生が、久々に「書きたい」「伝えたい」と熱く思わせる映画であった。

 映画は、前編・後編合わせて4時間に及ぶもので、テーマがテーマであるだけに「覚悟」して行ったのだが、結果は特に「覚悟」するほどのものではなかった。今まで僕が観たこの種の映画は、重く辛く疲れるものが殆どだった。しかしこの映画、特に後半の部分は、良かった。なぜ良かったか。

 それは、映画に登場した在日コリアンたちのインタビューを聞きながら、逞しく生きる勇気と日本の未来に明るさを感じたからだ。

 昔から「若いころの苦労は買ってでもしろ」といわれるが、今の日本で自らの意志で苦労をすることはなかなか碓しい。小生も含めて苦労の少ない人間に深い人間理解と洞察力を求めるのには無理がある。その点、若き在日コリアンたちの中には、好むと好まざるに関わらず国籍や民族などのことを突きつけられたことがきっかけで、地球市良的価値観を持ち、かつ精神的に強い人材が多い。日本社会がこれらの貴重な人材を活用しない手はない。例えぱ、公務員の応募資格から国籍条項などは外すことだ。将来「在日コリアンを韓国大使に任命」なんてことがあれば、相互理解は劇的に進むだろう。

 今の日本の状況は昭和初期の状況に近いのではないか。歴史の教訓から、様々な価値観を持った人材を広く登用し、寛容で懐の深い日本社会を創造することが、世界から、特にアジアの一員として愛される確実な方法ではないだろうか。なんてことを思いながら観た。

 ところで、この映画をご覧になりたい方は、浜松へ。「ヌン・ソン・サン浜松」がこの映画の自主上映を企画されている。浜松のみなさんの勇気と行動力には頭がさがる。上映会の盛会を心より祈っています。


ヌン・ソン・サン浜松

 浜松に拠点を持つボランティア団体。“ヌン・ソン・サン”は、タイ、ラオスの言葉で“いち・にっ・さん”の意味。主な活動はクラフトの販売、謄写版製作支援、書き損じハガキ・切手・カードの収集、スタディーツアーをはじめとする文化交流活動など。

 北朝解の食料援助にも意欲的に取り組むなか、今回の映画上映の企画となった。

 代表の笛岡堅司さんは、北朝鮮民主主義人民共和国緊急食料援助モニタリング報告でこう記している。「一歩づつ、語るより歩めである。」「東南アジアならなんの疑いも持たない我々が、どうして北朝鮮だと横をむくのか・・・・。」「隣に一日1人150グラムのお米に毎日ひもじい思いをしている子供や老人がいる。隣で捨て場所のないゴミ(残飯)で悩んでいる人がいる。オリンピックが終わり世界の友情が伝わったばかりなのに。」


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