SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER創刊号

神戸で活動してみて・・・

 世間では様々な新しい事件が取りざたされている中で、1月17日の阪神大震災から4カ月が過ぎようとしています。今回は、実際に現地でボランティアに参加した方々に、貴重な感想をうかがいました。


神戸でみたもの

石川研一

 プロジェクトXが結成されたのは、ピ−スボ−トというNGO のメンバ−と接触し、長田区のある市営住宅団地( 以下市住) の状況を聞かされた日から二日後の二月十一日のことである。この時期、長田区での活動はほとんどの地域でレスキュ−からリリ−フの段階に入っているようだった。しかし、市住の状況はその考えを改めさせるに十分だった。高齢者、在日外国人の住む割合が高いあの地区は、あらゆる面で救援が遅れていた。小さな老人が階段の壁に身を擦り付け運んで行く…。ペットボトルの蓋さえ開ける力も残ってないのだ。障害や重度の病にかかった身内の世話で体をこわし入院する人、死を口にする人…。多くの人々ば疲労と絶望感を抱いていた。そんな中で始まったプロジェクトの活動は、当初の水運び、命に関わる問題を持つ人の早期発見という活動から、精神的ケアを主とした形に変わり継続されている。急速な復興の流れの中で指の間からこぼれ落ちる砂のように取り残された人々がいた。「おばあちゃん、何か困っとうことない?」「生きてることに困っとう…」。そんな人たちを前に自分の軽率さと無力さにうなだれる毎日だった。結局僕は何もできなかったように思う。しかし、彼らの存在、無力な自分を認識することから始まるような気がする。そう信じてこれからの神戸を見つめて行きたい。


神戸の御蔵で考えた

永井佳奈子

 太陽が私の髪をより茶色に、そして四月だというのに顔を象の肌のようにしてくれました。神戸にいった筈なのに「グアムにいってきた?」と聞かれるのは心外な私にとって、リタ−ンでいった二度目の神戸では、御蔵小に配属になり、そして初めての事に戸惑いながらすごした十日間は、子どもは苦手という意識をすっかり私の中から取り除いてくれました。

 震災が子どもにどういう影響を与えているかは知らないけれど、私達はひたすらただ遊んでいました。ボランテイアにきてこれでいいのかと多々思ったこともあったけれど、写真を見た友人に「あんたが遊んでもらったんだね」、こう言われるくらい一生懸命遊んで、それで良かったと思います。

 私が今この経験をして思うことは子どもたちがこの震災でのいろいろな経験・体験を将来頭でなく心で強く考えてそれを生かして欲しいという事です。そして彼らはそれを実現する事のできる力を持っている、とても将来有望な子どもたちであると、私は胸をはって言えるつもりです。


阪神大震災救援活動に参加して

氏家貴秀

 私は「ぬくもりプロジェクト」という社会的弱者と呼ばれる人に入浴サ−ビスをするプロジェクトに参加していました。その活動を通して考えた事はボランテイアは人間と人間との関係が重要であり、それをつなぐものが同情ではなく共感、共に協力する事であるということです。

 震災直後は物資の配給や炊き出し等、目に見える活動が中心で、ある程度ボランテイアも満足感を持っていたと思います。しかし、ある時期から目に見えない精神的ケアの問題に取り組んだ時に、ボランテイア自身どのように対処して良いかわからず、不安に陥ると言う場面にも出会いました。

 今回の活動においてはこの信頼関係は必要不可欠であり、これはボランテイアだからではなく普段の生活から考えなくてはならないと思います。神戸でボランテイアをした人の中には、現地の人と最高の出逢いをした人もいると思います。それは真剣に取り組んだ結果でもあり、その時の気持ちを忘れないで下さい。

 最後に私が長田で出逢った地元の人の言葉です。「氏家君、しばらくたったらまた神戸に来るといいよ。今ここの人達の顔をみに来てよ。建物は今ぼろぼろでもいつかは新しいものになるでしょ。その頃に氏家君の関わった人達の顔がどう変わっているかをさ。」

 今度はあえてボランテイアではなく神戸という町を、人の顔を見に来ようと思います。決して一月十七日の出来事を忘れてはならないと思いますし、今後も見守って行きたいと思います。


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