浅倉大介 誘惑のリズム


 彼がシンセサイザーの申し子であるような記述は、巷に多くあふれかえっている。しかし、彼のリズムに対するこだわりに、関心を向けたものは、そう多くない。ここでは、彼のリズムへのこだわりを見いだすことで、浅倉大介を感じてみたいと思う。

 彼が曲を作り上げていくとき、ドラムやリズム楽器はサンプラーという生音をデジタル音にすることのできる楽器やリズムマシーンを用いている。今、シンセサイザーを使っている人たちがよく使うTR-808やTR-909といったはやりの音源を多用することはない。彼は、難題かの別の音源を組み合わせて、ひとつのキックドラムやスネアドラムの音を作っている。従って、彼の曲のドラム音はひとつひとつがそれぞれ違う響きを持っているとさえ言える。この音を彼はライブでも出そうとしている。そのため、彼のラックはリズムセクションも満載である。

 また、彼が打ち込みをする際、LOGICというソフトをしようしているのはすっかり有名になった話である。彼がリズムを構成するのに今非常に役に立っているソフトだ。このソフトは四分音符を960にまで分けることができるので、いろいろなノリを作り出せるし、またいろいろな音を重ねることも容易になるのだ。

 そして、曲自体のアレンジに見られる特徴に、キックドラムの細かさが挙げられる。この細かさが、彼のリズムへのこだわりを象徴しているように思えてならない。この細かさはほかのミュージシャンに、見られなかった傾向であり、打ち込みならではの独特さも持ち合わせている。生ドラムのノリをだそうとするのではなく、機械ならではのリズムを刻み続けるのだ。意外に、この点は省みられていなかったようで、浅倉大介のオリジナリティとして、すっかり定着しているように思う。

 彼は、小室哲哉の弟分として見られてきていたが、リズムひとつを取ってみても、かなり異なる。われわれファンは、彼のすごさの一部しか気付いていないことを認識しなければならない。彼が動くとき、必ず音楽のテクノロジーが進化していくことを忘れてはならない。



お題目へ

ホームページへ