2006年3月15日  ER-6nのインプレッション

2006/04/08 末尾に一部追記

ごめんなさい、全部テキストです。絵はありません。
他車の事を忘れて、ER-6nの全てが当たり前になってしまう前に印象をまとめておきます。
私は身長177cm、体重80Kgのでかくて太いオヤヂですんで、
そんな人の主観として見て下さい。
スズキGSF1200Sの97年型からの乗り換えになります。


全体として:

とりあえずは、真っ先に結論。
あちこちの雑誌にも書いてあるのは本当だと思う。
大型二輪免許はあるがリッターバイクは体格/体力/財力の面から厳しい人、
そんな人にお勧めの優しい(易しい、ではない)大型二輪車です。
コンパクトで軽い車体にそこそこのエンジン、
普通の人が普通に乗って楽しいバイク
それがER-6nだと思います。


逆に言えば、リッターバイクのような絶対的な性能は持っていません。
どんなエンジン回転数からでも、どんな車速からでも、
また、直進だろうが、旋回中だろうが、アクセルの動きと直結して
いくらでもパワーが湧き出してくるような事もありません。
大型二輪車だからと、そこを期待すると裏切られます。
そこを期待するなら他のバイクを買うほうが良いと思います。



停止状態での車体関係:
大きさや重さは400cc4気筒のバイクとほぼ同じ。
したがって、走り出すまでの取り回しも同じようなものであるはず。
しかし、一時代前のオーバーリッターネイキッド、
GSF1200Sから乗り換えた私としては、取り回しは異様に軽く感じる
GSFだと、駐車場の出し入れは体を預けて、
体重をかけることで「ヨッコラショ」とか言って動かしていた。
しかし、ER-6nはハンドルを掴んだ腕の力だけで動く。
これは400ccクラスよりも、セカンドバイクのKSR110に近いような感覚です。

最近はGSFを駐車場から出すのが少々億劫になってきていたのですが、
この軽さのおかげで、億劫がらずに気軽に乗ることができます。
ただし、新車であるため、ブレーキ関係の動きが良くて、
パッドとロータの引きずりの抵抗がほとんど無い事も大きい。
取りまわしの軽さは単に車体だけの問題ではないです、念のため。


乗車姿勢:
アップハンドルでもあり、普通なら楽チンの部類
しかし、私は座高自慢なので少々前傾に感じてしまう。
そこで、ハンドルを2cmほど高くしたら、だいぶ楽になった。
(本当は殿様乗りにしたいんで、さらにもう少しなんとかしたいけど。)
ハンドル幅はほどほど、車体の大きさとつりあう程度で、
GSFよりは狭く、多分400ネイキッドと同程度。これには不満はない。
ハンドルのグリップやレバーは私よりも少し小さい人を標準にしているようだ。
意識していれば問題は無いのだが、時々、手が外側にはみ出している。
ただし、操作に問題があるとか、違和感があるのではなく、
むしろ小柄な人でも扱いやすく出来ていると解釈すべきところでしょう。
問題点としては、ハンドルの幅が広くないので、
バックミラーの張り出しが十分に確保できていません。
もう少し張り出すか上に上げれば見やすいミラーになるのに、残念。
それでも、スーパースポーツとかレプリカよりはマシです。
なお、(標準状態でも)ハンドルを左右ロックまで切っても、
手はタンクとの間に挟まりません。ちゃんと余裕があります。

ステップ位置はやや後ろ気味かとも思う、
スポーツバイクほどでは無い、十分に普通の範疇。
自分としてはチェンジペダルをもう少し下げたいんだけど、
けど、シフト軸直結で調整機構は無いので微調整はできない。
その分、価格が安くて、動きがダイレクトなので我慢です。
サイドスタンドはステップの後に足をかける突起がでている、
飛び出し量は十分で普通に使える。

足つきは400クラス並(多分)、
私の場合は胴長とは言え体重でサスも十分に沈むため足つきは問題なし。
シートは表面の滑り加減、クッション感ともこれで十分と思います。
ニーグリップ部はかなり細身、私としてはもう少し太い方がニーグリップしやすい。
十分にニーグリップしようとすると、意識して股を閉じねばならず、ちょいと不自然。
ニーグリップ部は黒い樹脂部品でできていて、GSF(フレームとタンク)よりは、
感触が柔らかくて、振動も来ない、快適な感じ。


エンジン出力:
これは、スペックそのまんまだと思う。
念のためですが、マレーシア仕様なんで62.5馬力で、
EU仕様の72馬力じゃないです。
要するに逆車とはいえ、逆輸入前提の音を抑えた日本仕様なんです。

650ccの2気筒、ただしショートストローク(高回転有利)型。
排気量がそこそこあるからそれなりのトルクも馬力もある。
しかし、ショートストローク型であり、(1-2速以外の)2000rpm以下は
ガクガクいって使い物にならない。
逆に高回転は狙いの通りにちゃんと回ってくれるものの、
マルチエンジンと比べると、単に回っているだけで力を感じにくい。

交差点の左折はちゃんと2速まで落とさないと、3速のままでは、
運がよければツインらしい鼓動感を感じられるが、たいていは、
エンストしそうになるエンジン音に慌ててクラッチを切る事になる。
これがリッタークラスのマルチエンジンだと4速でもノッキングしながらも
ちゃんと加速するんですが、排気量も気筒数も半分じゃしょうがない。

じゃ、良くないの?って言うと、そんな事は無い。

とても良く、満足できます。

2000以下は使い物にならないって書きましたが、
それ以上だと、とても心地よい。
低速域では、開ければその分だけ素直にトルクが出てきます。
大排気量マルチエンジンみたいに、唐突にパワーが吹き出してくるのとは違い、
アクセルって言うか、それを開ける人間に従順な感じで、
しかも、ちょうど必要な分だけトルクが出てくる印象です。
また、400以下のエンジンみたいに開けてから加速まで一息待つ事もありません、
大排気量ですから、ちょうどピッタシにエンジンが吹け上がってくる。
低速域では並列ツインらしいビート感も控えめに味わえます。
そのあたりでは吸気の音がピスピス(?)と聞こえ穏やかで気持ちよく走れます。

5000を超えるとツインらしさはあまり無くなって、
排気量なりのごく普通のエンジンって感じになってきます。
このくらいの回転域だと、人間のほうもそれなりに「行くぞ!」って
気持ちになってますが、エンジンもそれに応えて元気に吹けてくれます。
レッドゾーン近くは、まだ、タマにしか使ってませんが、
単に回っているだけって感じ。
良いんです、マルチエンジンでもその領域を維持してアクセル全開でなんて、
そんな運転できませんから、私は競技経験者でもありませんし。
どうせ、さほど使わない、上手く使えない領域ですから、
そんなところはホドホドで十分なんです。
ただ、高回転に関してはもう少し慣れてくると、
今よりは使えるようになって、印象が変わるかもしれません。

ER-6nは通常使わない部分を犠牲にして、
通常良く使う領域を良くしたエンジンを乗せています。
ですから、非日常領域の絶対的パワーやトルクが欲しい人や
ひたすら速く走りたい人にはお勧めできません。
普通にバイクを楽しみたい人むけのエンジンになっています。
ビックマルチのようにエンジンに急き立てられるようなことも無く、
小排気量のように非力なエンジンにイライラする事も無く、
公道での普通の使用に適したものだと思います。


ハンドリング:
ハンドリングと言うか、コーナーの特性。
実は、まだ、よく分かっていません。
これを書いている段階、1000キロ強の走行で感じた範囲を書いておきます。

コーナーでの動きは何かにつけ軽いのが大きな印象
GSF1200Sと比べると、 あまりバンクしなくても曲がって行く。
同じく、車両をインに押さえ込む力もあまり要らない。
同じく、曲がり始めの「エイヤァー」っと切り込むにも、
特に大きな入力は要らない。
(それじゃ、GSFは何だったの?って事になるけど。
エンジン特性がまったく違うから、それは別世界。)
基本的にはステップからの入力で素直に軽々と曲がってくれる。
スーパースポーツとは違うけど、さすがに最近の設計は良いです。

車両全体の質量の軽さが効いていて、左右への切り返しはとても楽。
おそらく、(前後方向への質量分布が中央に集まっていて、)
鉛直軸まわりの慣性モーメントが小さいために、
旋回で向きが変わるのが軽く感じます。
けれども、まだ、なんとなく、馴染んでいません。
自己操舵でハンドルが切れ込む量と速度が、
自分の中にあるイメージ(要求?)よりも少なく、
いつの間にか曲がっているような感じ。
とにかく動きが軽くって、安定した旋回状態になる前に、
すでに向きが変わってコーナーが終わっているみたいな。
多分ですが、自分の体に、重いバイクを上体で引っ張り込んで
旋回させる習慣が残っていて、
それが軽量なER-6nの良い乗り方とは違うのかと思ってます。
慣れていない現状でも、十分以上によく走って曲がってくれていますが、
慣れてくると、もっと楽しく乗れそうな予感です。

低速域での8の字をしてみると、
8の字でも、左右各方向の長円でも、
すぐに安定してフルロック旋回できました。
かなりリアブレーキで勢いを殺しても、
エンストもせず気持ち良くクルクル回れます。
(アイドリング1300rpm程度です。)
エンストは2気筒であり少々心配していたのですが、
期待していた以上の扱いやすさでした。
大きめのリーンアウト動作をすれば、
ハンドルは安定してフルロック状態で止まっていてくれて、
勝手に戻ろうとせず、安心できる特性です。
また、旋回中に失速しても、車体が軽いから、足をすこしつけば、
すぐに復帰するのも安心で良いです。


音:
購入した車両は逆車とはいえマレーシア仕様で、
事実上の日本国内仕様車です。
ひいき目に言っても、東アジア左側通行仕様車。
ですから、EUやオーストラリアとは違い、
ごく平均的な国産車の音量に抑えてあります。
個人的には加速する時の音がもう少し静かならもっと嬉しかったな。
アイドリングは十分に静かで、普通の住宅街に住んでいて、
騒音のために肩身の狭い思いをする事は少ないと思います。
音質は昔ながらの並列2気筒の音そのもので、
ちょいとレトロな感じがします。
ただ、アクセルを閉じたときの音は、FIで燃料がきっちり切られているため、
バラバラと、キャブ車なら薄すぎのときみたいな音質になります。


ブレーキ:
対向ピストン式ではなく、フローティングキャリパー式です。
フロントが2ピストンでダブルディスク、リアは1ピストンでシングル。
気分的には対向ピストン式の方が良いけれども、
コストの問題もあるし、ここは我慢でしょう。
タッチは初期の握って行ってパッドが当たり始めるあたりは、
しっかりした感じで期待していたよりも良い。
しかし、その先、制動力の立ち上がり方が鈍いって言うか、マイルド。
もう少しピシッと効いて欲しい気がする。
ただし、低速からのフルブレーキ停止をしてみると、
簡単にフロントタイヤをロックできるし、
ジャックナイフもわりと軽い力でできる。
制動力そのものが不足しているわけではなく、
単に私の過渡特性の好みの問題。
ブレーキホースをステンレスメッシュに交換したら、
好みに近くなるかもしれない。


燃費:
普通の道を普通に使って18〜20Km/L程度、ハイオクガソリン使用。
高速道路を多用すると首都高でも23キロ走ってくれた。
極端に良くも悪くも無く、およそ期待していた値です。


エンジンオイル:
ミッションの構成が最近流行のシャフトを三角形に配置するタイプで、
クランクケースがコンパクトに出来ている。
しかも、(オイル量少なめにしやすい)セミドライサンプだそうな。
おかげで、オイル量は少なめで、オイルフィルターを交換しても2L弱。
これは財布に優しく、嬉しいところです。
 

困ったところ:

私にとって、最も困っているのは、
センタースタンドが無い事です。
車体下部にマフラーがあるから、
これからもオプションでも出そうに無い。
何が困るって、毎朝の始業点検でタイヤの点検が面倒。
センタースタンドがあれば、リアは回して見られるし、
フロントも尻でライト付近を上げるようにして、
フロントタイヤにまたがるような体勢で回して見られる。
けど、それが出来ないので少しずつ車両を
前後に移動しながらの点検なんですもの、面倒です。

また、シート下にはあまり収納場所がありません
車検証と保険証ははいるけど、整備手帳は入らない。
荷物用のネット(ゴムひも)も入りません。
これも、その分シートが低く出来ているって事で妥協です。

ついでに、メーター。
基本機能は満足ですが、トリップメータを表示させると、
切り替え表示の時計とオドメータは隠れます。
オドメータはともかくも、時計とトリップは両方表示して欲しかった
さらに、時計表示させると、その文字がだいぶ小さく、
走行中はちょいと見難いです。
結局は、安物のデジタル腕時計をハンドルホルダー部に付けています。



文字だけなのに最後まで読んでいただきお疲れ様でした。
おしまいです。
そのうち、追記するかもしれません。(2006年3月15日 記)

以下2006年4月8日追記

主にハンドリング:
ライディングスクールでタイトなターンが多いスラロームを走ったところ、
今までの自己操舵が弱いとの印象はほぼ消えました。
むしろ、ちょうど良い扱いやすい勢いで操舵がついてくれるし、
自分の意思でさらに切り込ませたいときにはハンドル操作でも
わりと素直に動いてくれる。
タイトなスラロームで、あまり上体で引っ張り込まずに走らせていると、
勝手に寝たり、勝手に起きたりせず、とても扱いやすいバイクであった。
ただし、
FIの関係でアクセルを閉じた時の回転の落ち方がキツイ。
また、ターン進入で全閉にしたら、一回だけだがアフターファイアが出た。
エンジン特性が半分、自分のアクセルの閉じ方が速過ぎたのが半分。
まだ扱いきれていない状態である。

一般道でのコーナーでも、ニーグリップをしっかりしたまま、
リーンウイズや軽いリーンアウトで走れば、軽快に走ってくれる。
下半身で指示したとおりに車両が動き、
自分が上手になったような錯覚をしてしまいます。

サスペンション:
硬いと評判のリアサスペンションですが、自分はそんなに悪いと思っていません。
たしかに、あまりしなやかでも無いんですが、
ロードバイクで、廉価版なんだからこんなものかな・・・って程度。
8年間サスペンションもリンクもろくに整備しないで乗ったGSF1200Sの
手放す直前の状態よりは、はるかに良く動いています。
自分は体重が約80Kgと重い事もあり、
イニシャルプリロードは標準より1段きつく(7段中4段)で使用していますが、
それでちょうど良い感じになっています。
一度、試しに緩める方向に調整してみたのですが、
底つきこそ感じませんでしたが、
ダンパーが縮みきって動きが悪くなる状態でした。

オーリンズあたりがリアサスを出してくれたら、
きっと、ぐんと良くなる事でしょう。
さ、その日にそなえて貯金。


追記は以上です。

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