濁ってしまった宮前川の声


《愛媛県 済美平成中等教育学校1年 Mさん》

 「あっ、また捨てられてる。」
先日
半分しか使っていないトマトケチャップが私の家の前の宮前川を流れているのを見つけた。私は登下校の際、いつも川沿いの道を通る。だから毎日川の様子を見ているのだが、最近よく変なものを見る。一ヶ月ほど前、いつも通り、川を眺めながら帰っていたら、赤い物が川に流れている。何だろう、と不思議に思って見てみると、何と人参が流れている。そういえば、その前はみかんだった。自然のものならまだしも、冷蔵庫・自転車・洗剤の白い泡・油・ペットポトル・・・いい出すときりがないほど流れている。しかし、私が幼かったころは、もっと水がきれいで、底の砂や貝が見えていたのに、今となっては魚すら緑色の水に飲みこまれて見えにくくなっている。私は一年前から、何故このような川になったのか、その原因を調べ始めた。
 
 私はまず、ゴミは誰がどこから流しているのかを知るために、父や市の職員、水をきれいにする会の人達からお話をうかがった。すると、どうやら野菜などのゴミや、冷蔵庫は「ゴミ捨て場まで持って行くのが面倒」または「機械を捨てるときお金がいる」などの理由ではないか、ということだった。こんな身勝手な人がいることに、私は大変腹が立った。
 
 さらに洗剤と油について調べてみた。
すると、洗剤には合成界面活性剤といわれる、いつまでも分解されず、皮膚障害、髪の脱毛などを引き起こす、人間の体にとって最も危険な化学物質が含まれていること、そして、それが実験によって、身の回りにたくさんあることがわかったのだ。人間の体に悪いなら、魚にも悪い。つまり私自身が魚を苦しめていたのだ。日頃の自分の行いを反省した。また、油は料理に使う物の中で最も水を汚すことがわかった。うちは単独浄化槽なので、あの川の油は、うちの使った油なのかもしれない。
 
 自分達がこの川を汚したのなら、自分達できれいにしなければ・・・。その後の調べで、自然にやさしいといわれる石けんは、シャンプーや歯磨きにも使えることがわかった。また、油のリサイクルの方法として「廃油石けん」というものがあることを知った。廃油と苛性ソーダと水を混ぜて作ったもので、うちでも市の人に来てもらって作ってみた。意外と大量に作れて、母も使ってくれている。苛性ソーダは劇薬なため、扱いにくいという欠点もあるが、私は、地域でグループを結成し、月に一度、会議を開き、団体で機械を借りてみんなで作ったらいいと思う。
 
 シャンプーから石けんへ。川へポイからごみ箱へ。一人一人がちょっと気を付けるだけで、川の水質は変わってくる。私達は川を汚してしまった罪ほろぼしとして、常に自分の行動を見はらなければならないと思う。私には、宮前川の濁った水は、「これ以上汚さないで」という、必死の抵抗に見える。(以上)

次に掲載しています「よみがえれ!宮前川」は、MさんがKさんとの共同研究で調査研究されたものです。全国1,357校 40,103点の作品から最優秀賞(10名)に選ばれた上記「最優秀賞受賞作文」の裏づけというか背景となった調査研究リポートです。


  















                   (おわり)