●この文章のねらい


ホームへ戻る home

はじめに

この文章は、同人誌活動の関係者および同人誌の意味が分かる20代後半以降の方を主な読者に想定しております。
(ここでいう同人誌とは、イラスト・漫画・小説などの表現手段を用いて自主的に制作された冊子と定義し、
同人誌活動とは、同人誌即売会その他のイベント空間に参加している者と定義します。本文参照。)

この文章の原型は、1990年代前半の状況をもとにして、1994年秋に執筆したものです。
1990年代後半以降は、状況の変化により同人誌活動に対するイメージが変わっていくかもしれません。

 


 人は、年齢を重ねれば「適齢期」をというものを迎える。たとえ本人にその気がなくても、世間がそのように自分を呼ぶ時期がくる。それが、「適齢期」というものだ。

 同人誌関係者の結婚もちらほら聞かれるようになった。1980年代の中期から後期にかけて同人誌の発展を支えた年代が「適齢期」を迎えて久しい今、そのことは別段不思議ではないかもしれない。 ある者は見合いで身を固めるだろう。社内恋愛の果てに急ぎ入籍する者もいるだろう。そして、注目すべきなのは、同人誌を通じて出会い、結ばれる「同人の縁による結婚」である。最近はこの縁による同人誌関係者同士の結婚が増えているという。

 1992年に筆者が同人誌関係者に実施したアンケートによれば、「異性の友人や恋人は、同人誌に理解のある人がいいと思う」の項目に男女とも75%の人がYESと回答した。この数字をもって直ちに同人全体へ敷延することは出来ないが、同人誌を通じた付き合いから充分に恋愛感情が育まれ得ることを示している。もし、この傾向が結婚観にまで反映されるとすれば、今後「同人の縁による結婚」はより一般的になっていくだろう。

 この文章では、同人誌活動の置かれている立場を再確認し、従来の結婚観とその変化を踏まえながら「同人の縁による結婚」とは何かを考える。結婚とは現実そのものだから、きれいごとでは済まされない項目も多々取り上げなければならない。「同人の縁による結婚」は、本当に一般的になっていくのか、そうとは限らないとしたら、その理由は何かを検証していく。

 私は、いわゆる同人誌活動に携わったことはないが、コミックマーケットには3回にわたって取材した経験を有する者である。この空間の中では、取材腕章をつけた者はペスト患者並みに忌み嫌われ、徹底的に避けられる。ここで実際に活動している知人がいなければ、私は相当の偏見を持ってこの空間を見ていたかもしれない。

 この文章を執筆するにあたって、知人をはじめとする多くの方の協力をいただいた。テーマがテーマだけに多分にデリケートな問題も含むが、それにも関わらず幅広い理解をいただけたことに深く感謝を申し上げたい。(なお、この文章は理論編であり、実践その他についてのノウハウは殆どサポートしていないので了承されたい。)






●第1章へ進む next page


ホームへ戻る home