●「となりの山田くん」ニュースクリップ:6
News Clip of "My Neighbors The Yamadas"

1999年1月〜4月

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1999年4月9日 報知新聞

山田くん 小渕首相も楽しみ 
スケールでっかく配収目標60億円 日本で大ヒット後世界へ発信


 前代未聞の"首相同席会見"が実現した。スタジオジブリの最新アニメ映画「ホーホケキョ となりの山田くん」(監督・高畑勲、7月中旬公開)の製作発表が8日、東京・虎ノ門のホテルオークラで行われた。会見後のパーティーには小渕恵三首相(61)が飛び入り参加。取材、関係者は約1000人と大盛況。「もののけ姫」英語版が7月9日、全米100都市1000館で公開される世界最高峰のアニメ工房らしい史上空前の会見となった。

友人・徳間社長を激励
 何から何まで大スケールの「−山田くん」製作発表を、政務の合間に駆けつけた小渕首相が締めくくった。「この作品は大ヒットすると思います。一日も早く完成してもらって拝見したい」。長年の友人で「−山田くん」ゼネラルプロデューサーの徳間康快・徳間書店社長(77)を隣にニッコリ。首相の周囲には6人のSPが目を光らせていた。

 首相まで駆けつけるほどの期待感。「製作費はすでに20億円を突破しました。日本で大ヒットさせた後、(提携中の)ディズニーを通じて世界へ発信したい」と徳間社長。製作期間丸2年。従来のセル板を使わないジブリ初のフルデシタル・アニメで、作画枚数は「もののけ姫」の14万4000枚を更新する史上最多の15万枚。「−山田くん」は、高畑勲監督(63)の集大成であり、アニメ映画の頂点だ。

 ディズニーの代表として出席したティム・サリバン・ブエナビスタ副社長も、会見で初公開された3分20秒のプロモーションビデオを見て「世界の人へ訴えかける力を持っている」と断言。すでに全米公開に向け脚本の英訳作業も進んでいる。

 そして7月中旬、松竹主体にライバルの東映まで手を組んだ史上最大スケール、全国263館で公開される「−山田くん」の大きな敵が、ほぼ同時公開される「スター・ウォーズ/エピソード1」だ。

日米映画決戦開幕
 「2年前、『もののけ姫』がスピルバーグの『ロスト・ワールド』に圧勝した。今度も我々の大勝利に終わると思う。配収目標も、控えめに60億円だ」と徳間社長。「もののけ姫」の全米公開も「−山田くん」の日本公開とほぼ同時の7月9日に決定。この日、真夏の日米映画決戦の幕が開いた。(当該記事より)

ラピュタ12月にも全米で公開

 宮崎駿監督(58)の1986年の作品「天空の城ラピュタ」が12月にも全米公開される。昨春から1年がかりで「ラピュタ」英語版製作を続けてきたディズニー配給で「もののけ姫」に続いて全米公開される。

 声優がすごい。主役の少女・シータの声優を「ピアノ・レッスン」でアカデミー賞助演女優賞に輝いたアンナ・パキン。男の子パズーの声を米連続ドラマで一躍・人気者になったジェームズ・ヴァン・ダー・ピーク。黒眼鏡の悪役・ムスカを「スター・ウォーズ」のルーク・スカイウォーカー役で人気を呼んだマーク・ハミル。女海賊・ドーラを「ラスト・ショー」でアカデミー賞助演女優賞のクロリス・リーチマンで、すでにアフレコを終えている。

 サウンド面では、86年版の音楽を手掛けた久石譲さんが30日に米シアトル入り。シンセサイザーが主だった楽曲をすべて再アレンジ。ハリウッド超大作の演奏で有名なシアトル・フィルハーモニック・オーケストラと組み、フル・オーケストラで録音し直す。音響面でもドルビーを使い、臨場感だっぷりにグレードアップする予定だ。





1999年4月9日 日刊スポーツ

となりの山田くんに命かけ 松竹 263館 史上最高の公開劇場数

 松竹が夏休みアニメ「ホーホケキョ となりの山田くん」(高畑勲監督、7月10日公開)を同社としては史上最多の全国263館で封切ることが8日、明らかになった。このアニメは「もののけ姫」などで知られるヒットメーカー、スタジオジブリの作品で、松竹が初めて配給権を獲得した。巨額の赤字を抱える松竹が社の命運をかけて拡大公開に挑む。この日都内で行われた制作発表には小渕恵三首相(61)も激励に訪れた。

もののけ姫抜く
 松竹が文字通り背水の陣で「となりの山田くん」を公開する。過去最多の263館の上映をこの日までに決定。松竹の看板だった「男はつらいよ」シリーズの約2倍の劇場数だ。松竹系の劇場だけでは足りず、ライバル東映や外資系のシネマコンプレックスの劇場まで借りた。当たれば巨額のヒットが見込めるが、外れたときのリスクも大きい。大谷信義社長(53)は「全社的に取り組みます」と力を込めた。

 これまでスタジオジブリ作品は東映、東宝がすべて配給してきた。115億円の大ヒットとなった「もののけ姫」など、スタジオジブリ作品は日本映画界のドル箱だ。今回の作品はスタジオジブリ社長を兼務する徳間書店・徳間康快社長と大谷社長の友情から松竹配給が決まった。徳間社長は「松竹の首脳部も命がけでやってるよ」と話した。「もののけ姫」でさえスタート時は222館での公開だった。

 7月10日は米映画「スター・ウォーズ」新作と同じ公開日。あえて同じ日にぶつけた。徳間社長は「信頼あるジブリのアニメ映画は必ず打ち勝つでしょう」と豪語。大谷社長も「熱い風を吹かせて大成功させたい」と意気込んでいる。

リストラ断行中
 スタジオジブリも必死の作業を続けている。映像はセル画を一切使わないフルデジタル処理。水彩画のような淡い色彩の再現のための新技術を開発。制作費は予定を4億円以上オーバーして20億円に達した。

 700億円以上の巨額負債を抱える松竹は大幅な人員削減、鎌倉シネマワールドの閉鎖、旧本社ビル跡地の売却、邦画制作縮小、大阪・中座の閉鎖とリストラ作を断行中。不況の中、最大規模の公開に踏み切った同映画はまさに松竹の命運をかけた作品になる。(当該記事より)






1999年4月9日 東京中日スポーツ

「もののけ」に続け!! 打倒スターウォーズだ となりの山田くん
制作総指揮とる徳間社長怪気炎


 七月公開のスタジオジブリ製作のアニメ映画「ホーホケキョ となりの山田くん」(高畑勲監督)の製作発表が八日、東京都都港区のホテルオークラで行われた。配収約百十三億円を記録した大ヒット作「もののけ姫」に続く作品とあって会場には、報道陣や関係者ら約千人が詰め掛けた。

 原作は、朝日新聞朝刊に掲載中のいしいひさいちさんの四コマ漫画。製作総指揮で徳間書店の徳間康快社長は「高畑監督の集大成。同時期に公開される『スターウォーズ・エピソード1」にも勝てる。配収は最低六十億円が目標」と怪気炎を上げれば、高畑監督も「ほのぼのとした日本の家族の風景を表現したい」と抱負を語った。

 米ディズニー社が日本映画に初めて資本参加する作品。同社関係者は七月から全米百都市で公開が決まっている「もののけ姫」同様、「−山田くん」の海外進出にも意欲をみせている。

 発表では、音楽を担当する歌手の矢野顕子(44)が、ニューヨークからの衛星生中継で、主題歌「ひとりぼっちはやめて」を熱唱。さらに会場に設置された大型スクリーンを通じ「映画音楽は初めてですが、楽しい作品になると思います」とのメッセージを寄せた。

 会見後のパーティーには小渕恵三首相も姿を見せ「これ(主人公の山田のぼる)は、ぼくに顔がよく似ているな。宣伝してやってよ」と盛り上げに一役買っていた。(当該記事より)






1999年4月9日 スポーツニッポン

首相も来た「…山田くん」発表

 「もののけ姫」に続くスタジオジブリの新作アニメ「ホーホケキョ となりの山田くん」(監督高畑勲)の製作発表が8日、東京・虎ノ門のホテルオークラで行われた。

 全編フルデシタルを駆使し、3世代同居の家族が織りなす日常を、風刺とユーモアを交えて描く。既に製作費は20億円をオーバーしたが、高畑監督は「家族の声優さんが素晴らしいアンサンブルを奏でている。楽しみながらやってます」と手応え十分だ。

 7月公開予定で、製作総指揮の徳間書店・徳間康快社長(77)は「配収目標は最低60億円。"もののけ姫"の時は"ロスト・ワールド"に勝った。今度の相手は"スター・ウォーズ"。そして我々の大勝利に終わる」と宣戦布告。会見後のパーティーには、徳間社長と親交のある小渕恵三首相も激励に駆けつけ「一日も早く見たい。家族を描いた映画がヒットして、日本もいい社会になってほしい」と語った。(当該記事より)






1999年4月9日 報知新聞 広告

原作漫画(朝日新聞連載)「となりの山田くん」全集1〜3巻 発売






1999年4月1日 日経産業新聞

邦画サバイバル 3社への挑戦状 主従関係が逆転 
制作側が主導権 メジャーの力衰え


 これまで日本の映画産業を牛耳ってきた三社、東宝、東映、松竹の"邦画メジャー"がその実力を試されている。リトマス試験紙を突きつけるのは徳間書店(東京・港)や角川書店、フジテレビジョンといった、昔ながらの映画人にすれば「格下」の企業ばかりである。

「山田くん」駆け引き

 「東宝さんは『もののけ姫』をヒットさせるために、文字通り命懸けで頑張ってくれた。松竹さんも命を張ってくれますか」

 徳間書店の徳間康快社長の問いかけに、松竹首脳は二つ返事で答えるしかなかった。徳間傘下のスタジオジブリがこの夏公開するアニメ映画「ホーホケキョ となりの山田くん」の配給先が松竹に決まった瞬間である。それまでジブリ作品の配給先といえば東宝と決まっていただけに、関係者に与えた衝撃は大きかった。

 "徳間ショック"の余波は続く。「山田くん」の上映館は松竹系に限らず、東急レクリエーションやワグナー・マイカル、さらには東映系の一部映画館にも広がった。徳間にすれば、全国に強固な興行網を張り巡らせた東宝を配給から外す以上、それに伍(ご)して闘うには他の勢力を結集させる必要がある。松竹の意向は二の次だ。

 「この体制でよろしいですね」。詰め寄る徳間社長に、当初は独占配給を狙った松竹も折れざるを得なかった。「映画は本来、制作側が主、配給は従であるべきだ」。「山田くん」を巡る駆け引きは、徳間社長にしてみれば、自らの持論を実践したに過ぎない。この点、角川書店の角川歴彦社長も「基本的な考え方はまったく同じだ」と賛同する。

 実際、角川は昨年「リング」「らせん」を東宝系で、「不夜城」を東映系で上映してヒットさせた。このほかフジテレビも、東宝系で「踊る大捜査線」を上映し、配収五十二億円の大ヒット作に仕立て上げた。いずれも主導権を握ったのは邦画メジャーではなく、コンテンツ,(情報の内容)を握った制作者サイドだったことは、日本の映画界にとって象徴的な出来事といえる。

松竹は割り切れず
 東宝や松竹などの邦画メジャーが自ら企画・制作を手掛ける映画は、実は年間数本に過ぎない。それが仮に三本だとすれば、。その上映期間以外、つまり年間四十週前後は外部から持ち込まれてきた作品を系列の映画館で上映することになる。

 ある意味で自らを「興行会社」と割り切ってきた東宝はともかく、人気映画「男はつらいよ」シリーズの終了後も自社制作へのこだわりを捨て切れずに赤字を出し続けてきた松竹には、まだ厳しい「現実」がつかみ切れていないかのように見える。
 松竹のある幹部は「我々邦画メジャーが洋画の大作にまっこうから勝負できる本編(映画のこと)を作り上げて初めて、日本の映画界は本当に復活したといえる」と力説する。メジャーあっての邦画という自負と、あくまで映画産業を支えていこうとの責任感の表れと言える。

 邦画メジャーがこれまで数十年にわたって日本の映画産業を支えてきたのは疑いのない事実である。だが自らも自己改革の責任を全うしなければ、メジャーそのものが映画産業の「お荷物」になりかねない。

日本市場には期待
 実際、今春以降に日本で公開する新作ラインナップを携えて次々に来月した米ハリウッドの大物映画関係者からは「日本市場の成長性には期待している。だが、日本に欲しいスタジオ(映画制作会社)など一つもない」と厳しい指摘の声も聞こえる。

 日本の映国会社はいまこそメジャー意識を捨て去り、どうすれば視聴者を映画館館に呼び戻す魅力ある作品を作れるか、というビジネスの原点に立ち戻る必要がある。邦画再生のシナリオ作りはそこから始まるのではないか。(当該記事より)






1999年1月30日 朝日新聞

アニメ映画監督 高畑勲さん 五感働かせる機会を

●画一作業に心配も
−新作「ホーホケキョ となりの山田くん」はフルデジタルだそうですが。

 「あれは宣伝文句ですが、デジタルでできることはみんなデジタル化したことは事実。技術的に新しい可能性が生まれたので、それを生かそうとしている。いままでできなかったことをやるから結果的には省力化にはなっていない」

−映像の質に差はある?

 「違いを出そうと思えば出せる。でもそれはデジタルか否かの間題じゃない。デジタル化に間題があるとすれば、どの作業もみんな同じになってしまったこと。コンピューターに向かってマウスを動かすだけ。絵の具で手が汚れるとか、乾かないとか。具体物を扱うことによって人間の五感が日々いきいきと活動していたのに、それが失われてしまった。アニメに限らず、こういう画一的な作業形態は人間に恐ろしい影響を与えかねないのでは」

−アニメが人気を呼ぶ半面、活字離れが起きている。

 「日本文化の基礎はその独特な言語体系にある。音声言語と視覚言語の複雑な対応のさせ方は世界に例がない。漢字や2種類の仮名を便うことが絵と言葉の組み合わせをさまざまに楽しむ文化を育てた、一種の視覚偏重は戦後だけでなく、平安時代以来のこと。日本のマンガやアニメもその伝統のひとつにすぎない。活字離れといわれるが、文字なしに日本のマンガはありえない」

●主体性確立しよう
−日本のアニメは世界的に支持されるようになりました。

 「日本のアニメは現実とは違う世界をまるで現実のようにリアルに描くファンタジー。それが自分の生きている現実より面白いと感じられるから。日本のアニメの成功は子どもが没入できる世界を作ったからだが、その世界に魅力がありすぎるのは間題かもしれない。大人になっても子どものころ見たファンタジーから卒業しないまま現実に適応できないでいる人がいるのを知ると、罪深い仕事のような気がしてくる。私はかなり前からファンタジーでないものを作ろうと心がけている。今度の仕事もそうだ。

 視覚偏重、作業のデジタル化、ファンタジーへの逃げ込み、これらの現象がさらに進むことが避けられないのならば、その対極にある肉体的ぶつかりあいや自然とのふれあいなど、五感を全開させる機会を子どものうちにできる限り体験させておく必要がある。泥んこになって遊ぶとか、草の葉っぱで手を切るとか。それがないとバーチャル化した世界の中でへんになるのではないか」

−新しいメディアが続々登場しています。

 「どうあがいても人は1日24時間しか持っていない。300チャンネルできたからといって選択の自由が広がったというのはうそ。自由のようで自由ではない。時間をどう使うかの自由、主体性の確立が大事だ。そういう人間を作るためにも、小学校にコンピューターを導入するより、人間や自然とつき合う時間をもっと増やすべきだ」(当該記事より)






1999年1月1日 日経産業新聞

99年ヒットコンテンツ予想 「ホーホケキョ となりの山田くん」 家族テーマに心温まる作品

 七月に公開予定の「ホーホケキョ となりの山田くん」は、いしいひさいち氏による新聞連載漫画が原作。四コマ漫画特有のリズムやテンポを生かしながら長編映画に仕上げるという難題に、「平成狸合戦ぽんぽこ」などの作品で知られる高畑勲監督が挑戦する。

 徳間書店のほか、米ディズニーグルーブ、博報堂、日本テレビ放送網も製作や宣伝に出資。製作費は「すでに二十数億円に達している」(徳間書店の徳間康快社長)。「もののけ姫」を制作したアニメ制作集団、スタジオジブリ(徳間書店が九七年に合併)が制作を手がけ、配給はスタジオジブリと松竹が共同で担当する。

 東急レクリエーション、ワーナー・マイカルなど全国の興行網を使い、従来の上映形態に比べ、作品の性格に合わせた柔軟な上映形態を採用して確実なヒットを狙う。全編でコンピューター処理を採用する点も特徴。原作の絵柄を生かしながら淡い水彩画のタッチで彩色する長編としては世界初の画風を採用、新しいタイプのアニメ映画という要素も持つ。

 家族をテーマにした心温まる作品。「楽に生きたら」(高畑監督)というメッセージが、閉塞感の漂う日本で大きな反響を呼ぶ可能性もありそうだ。(上原吉博)(当該記事より)






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