聖司君、ようやく念願が叶って、イタリアへ行けることになったね。
しかし、そうするには、せっかく仲良くなりつつある雫ちゃんと離ればなれになってしまう。
だけど、最初の決意通り、イタリアへ旅立つ決心が揺らがないところは立派だ。
雫ちゃんも、キミのそういうところに惹かれるんだよ。
たとえ、遠く離れていようとも、顔を見ることなく、声を聞くことさえなくても、
二人の絆は一層深まっていくんだね。
キミの目標は、もうキミひとりだけのものじゃないんだ。
がんばれ、聖司!
キミのスタンドプレーで、失意のどん底にたたき落とされてしまった男が一人おる。 でも、気にすることはない。そのライバルは既に事実上自滅していたんで、キミのライバルにもならんから。 それにしても、聖司君に呼び出された時に雫の出していた弁当箱は確かに大きかった。夏休み中の、キミのツッコミは、あながち外れではなかったみたいやね。 しかし、雫ちゃん、この日はちゃんと弁当を食べられたんやろか。 |
聖司君、本当に雫ちゃんが好きならば、もっと正々堂々と告白したまえ。雫の気持ちを確かめてからおそるおそる遠回しの表現で告白するなんて、男らしくないぞう。 ともあれ、お互い「雫が好き」「聖司が好き」という直接の言葉はなかったけど、扉の向こうで雫が流した涙が何よりも雄弁に物語っていたよ。既に二人の気持ちが通じ合っているということを 。 |
聖司君、君は知っているか。走り去る聖司の後ろ姿を、雫がいつまでも見送っていたことを。帰りの電車の窓から、雫が地球屋のある丘をいつまでも見続けていたことを。 聖司君、君は気付いていたか。普段は「あたし」と言っている雫が、君の前では「わたし」と言うようになったことを。 雫は、君の生き方にあこがれ、少しでも追いつこうと懸命に努力しようとしている。聖司の雫に対する想いと同じくらい、雫の聖司に対する想いもつのっているんだよ。 精一杯、頑張ってこい。聖司君。 |
ルシータが日本へ行く理由には、聖司を追いかけることの他にもうひとつあった。 それは、バロン人形とその持ち主・西司郎を探すことである。戦火に引き裂かれた、祖母・ルイーゼの追憶の恋をかなえるために。 そう。ルシータこそ、あのルイーゼの孫娘だったのだ。 ルシータもまた、バロンの連れの人形を携えて日本を目指していた。しかし、1日早い飛行機に乗った聖司は、そのことを知る由もなかったのである…。 |
聖司君、君は内気な少年だった。雫ちゃんに惚れていながら、心に秘めた本音をなかなか出せなかったし、本音と実際の行動も、なかなか一致しなかった。 しかし、ついに自分の気持ちを正直に伝えられたね。心から出た、本物の言葉で。 それが真実の言葉なら、本当に偽りのない言葉なら、朝日に向かって誓って欲しい。 どんな困難に直面しても、決してくじけることなく頑張り続けることを。 どんなスランプに悩まされても、決して初心を忘れることなく頑張り続けることを。 そして、一人前のバイオリン作りになって、雫ちゃんを迎えに日本へ戻ってくることを…。 おめでとう、聖司君。健闘を祈る。 |