| 原 作:柊あおい「耳をすませば」 りぼん(集英社刊) 平成元年8月号〜11月号 連載 監 督:近藤喜文 脚 本・絵コンテ:宮崎 駿 プロデューサー:鈴木敏夫 製作総指揮:徳間康快 音 楽:野見祐二 主題歌:「カントリー・ロード」 原 曲:"Take Me Home, Country Roads" 原曲作詞・作曲:Bill Danoff, Taffy Nivert and John Denver 日本語訳詞:鈴木麻美子 補 作:宮崎 駿 編 曲:野見祐二 唄 :本名陽子 声の出演 月島 雫:本名陽子 天沢聖司:高橋一生 雫の父: 立花 隆 雫の母: 室井 滋 雫の姉: 山下容莉江 バロン:露口 茂 地球屋主人:小林桂樹 高坂先生:高山みなみ 原田夕子:佳山麻衣子 杉 村: 中島義実 制 作 徳間書店 日本テレビ放送網 博報堂 スタジオジブリ 公開日:1995年7月15日 時 間:111分 配 給:東宝 配 収:18億円 |
あらすじ
月島雫は、東京近郊の団地に住む中学三年生。読書が好きで、受験生にも関わらずせっせと図書館に通っています。
ある日、本の貸し出しカードに共通して書かれている名前を見つけます。その名は「天沢聖司」。彼は、雫が借りた本は、みんな先に読んでいました。
「天沢聖司…どんな人だろう…素敵な人かしら。」
夏休み中、雫は夕子と待ち合わせをするために学校へ行きました。高坂先生に頼み込んで図書室を開けてもらった雫は、借りた本に寄贈印の下に消された「天沢」という蔵書印を見つけます。これが気になって仕方がなかったのですが、夕子に未完成の「カントリーロード」の訳詞を見せ、「コンクリートロード」の替え歌で盛り上がったり、それを突然現れた「ヤなやつ」にからかわれたりしているうちに「天沢」のことはいつの間にか吹き飛んでいました。
さて、そんなある日、図書館にお父さんの弁当を届けるために出かけた雫は、電車の中で偶然、猫に出会います。猫を追いかけていくと、丘の上に地球屋というアンティークショップにたどり着きましたそこは、不思議な主人、西のおじいさんが営んでいる素敵なお店でした。そこで思わぬ時間を過ごしてしまった雫は図書館へ急ぎますが、弁当を地球屋に忘れてしまいます。その弁当を届けてくれたのは、何故か昨日自分を学校で冷やかした「ヤなやつ」でした。
図書館の本の貸し出しカードにも「天沢聖司」の名前を見つけた雫は、再び「天沢」ってどんな人かなぁ、と思いを巡らせます。ふと、さっきの「ヤなやつ」の顔が浮かびましたが、それはあわてて打ち消したのでした。
さて、2学期になっても「天沢」が気になる雫は、職員室の先生に聞きにいき、何とか手がかりをつかもうとします。しかし、思いの外あっさりと分かってしまいそうな感じになって、全てを聞いてしまわないうちにあわてて職員室を飛び出してしまいました。その直後、いつかの「ヤなやつ」とすれ違います。そいつは同じ学校の生徒だったのでした。あれだけ自分を冷やかしておきながら、今度はきれいに無視してくれました。彼はやっぱり「ヤなやつ」でした。
ところが、それからほどなく再び地球屋を訪れた雫は、そこで以前から気になっていた「天沢聖司」が、他ならぬ「ヤなやつ」だということを知ってしまいます。今まで空想していたイメージが崩壊する、大変ショックなことでした。しかし、地球屋での楽しいひとときはもとより、聖司は自分がまだ持っていない目標を目指して頑張っていることも聞き、彼に対する「ヤなやつ」というイメージは次第に薄らいでいきました。
次の日の昼休み、突然聖司に呼び出された雫は、クラスメイトの目を避けて、屋上へ上がります。聖司は、イタリアへ修業に行くことが決まったことを雫に伝えます。目標に向かってどんどん先に進んでいく聖司に対し、自分の進路はまだ何も決まっていないことにあせりを感じます。ですから、遠回しながら「イタリアへ行ったら、お前のあの歌、歌って頑張るからな。」と告白されたけれども、雫は素直に喜ぶことは出来ませんでした。
その夜、雫は夕子の家へ相談に行きます。聖司は自分の能力を確かめるためにイタリアへ行くのだから、自分も能力を試してみよう、と思い至ります。そして、物語を書こうと決心します。
しかし、それは簡単なことではありませんでした。聖司君が帰ってくるまでの間に仕上げようと決め、西のおじいさんに最初の読者になってもらう約束もしていました。そうしているうちに成績が急降下して家族に問いつめられますが、幸いにも理解を得て、物語を書き続けることが出来ました。
秋も深まった午後遅く、雫は地球屋を訪れます。出来立ての物語はすぐにでも読んでもらわないと、雫は不安で仕方がありませんでした。雫は、おじいさんが読み終わるまで、ずっと待っていました。
数時間の後、おじいさんは、とても良い出来だったと言いました。それを聞いて、雫は思わず、
「うそっ、うそっ、本当のことを言って下さい。書きたいことがまとまっていません。」
と叫びました。焦って、焦ってようやく書き上げた後半などはひどい出来だと、自分で分かっていたのです。
確かに、それはまだまだ未完成だったかもしれません。けれども、おじいさんは、可能性に満ちた将来性を、その物語の中に見出してくれたのです。
おじいさんは静かに、そして優しく言いました。
「あなたの切り出したばかりの原石をしっかり見せてもらいました。頑張りましたね。あなたは素敵です。」
雫は、大粒の涙を流して泣き始めました。
翌朝早く、目が覚めた雫が何気なく窓を開けると、何と下には聖司が待っていました。聖司は、予定を早めて日本に帰ってきたのです。驚いた雫は慌てて家を飛び出します。聖司は、上着を取りに戻ろうとした雫をひきとめ、そのまま高台の上まで連れていきます。
そして、朝日が昇る街を見た聖司は、真剣な顔で雫にプロポーズをします。
「雫 あのさ、おれ、今すぐってわけにはいかないけれど、俺と結婚してくれないか。」
「・・・・・・・・・」
「おれ、きっと一人前のバイオリン作りになるから。」
「・・・うん。・・・」
「本当か!?」
「嬉しい。そうなれたらいいなって、思ってた。」
聖司は雫を力一杯抱きしめました。
「雫 大好きだ!」
"If you listen carefully, you will hear a Whisper of the Heart"