●「ゲド戦記」FAQ
FAQ of "Tales from Earthsea"

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「ゲド戦記」に関する質問等をQ&A形式でまとめてみました。正確さは保証出来ませんが参考になれば幸いです。随時更新。


基本編 2006/07/07更新

「ゲド戦記」の原作はどのようなものですか?
スタジオジブリ版「ゲド戦記」は、原作のどの部分が映画になっているのですか?
「ゲド戦記」の主題歌は誰が歌っているのですか?  



作品編 (ネタバレあり)2006/07/21 更新


アレンはどうして国王を刺してしまったのですか?
アレンが持ち出した剣は、なぜ抜くことが出来なかったのでしょうか?
空を飛んでいた鷹がクモに向かって急降下していく場面がありましたが、どういう意味なのでしょう?
映画の後半で、アレンとテルーが抱き合ったときに背景に竜が出てきましたが、どういう意味なのでしょう? 
結局、クモは竜になったテルーに焼き殺されてしまったのですか?


その他  2006/07/07更新
この前コンビニで「ゲド戦記」のおまけを見かけたのですが、どのような種類があるのでしょう?
「ゲド戦記」には可愛いマスコットキャラクターがいませんでした。登場する余地はなかったのでしょうか? 
「ゲド戦記」の海外での公開予定はどのような感じなのでしょう?









   基本編
「ゲド戦記」の原作はどのようなものですか? 原作はアーシュラ・K・ル=グウィンの児童文学で、1968年〜2001年にかけて出版され、現在19か国で翻訳出版されています。(ただし、第1巻〜3巻までと第4巻以降との間には20年近い間が空いています。時を経て世に出された第4巻はフェミニズムの影響を受けた作品と言われており、作風も3巻までと異なっています。)日本語訳は1976年から岩波書店より出版され、シリーズの合計が100万部を超えるベストセラー&ロングセラーになっています。

第1巻:"A Wizard of Earthsea"「影との戦い」(原作1968年:1976年邦訳)
第2巻:"The Tombs of Atuan"「こわれた腕輪」(原作1971年:1976年邦訳)
第3巻:"The Farthest Shore"「さいはての島へ」(原作1972年:1977年邦訳)
第4巻:"Tehanu, The Last Book of Earthsea"「帰還─ゲド戦記最後の書」(原作1990年:1993年邦訳)
第5巻:"The Other Wind"「アースシーの風」(原作2001年:2003年邦訳)
外伝:"Tales from Earthsea"「ゲド戦記外伝」(原作2001年:2004年邦訳)


スタジオジブリ公式サイト
岩波書店による「ゲド戦記」紹介サイト
Ursula K. Le Guin's Web Site (原作者のサイト)
スタジオジブリ版「ゲド戦記」は、原作のどの部分が映画になっているのですか? 映画版「ゲド戦記」は、原作の第3巻「さいはての島へ」がベースになっており、一部に4巻・5巻の内容も入っています。2巻でのエピソードも、テナーの回想や台詞の中で出てきますが、そのエピソードそのものが映像化されている訳ではないので、あらかじめ原作を読んでいないとよく分からないかもしれません。

さらに、原案として宮崎駿氏『シュナの旅』が入っており、都城の様子、奴隷の運搬車、腕が切断されるシーンなど、『シュナの旅』も影響を受けたと思われるカットも随所にあります(とはいえ、『シュナの旅』そのものが「ゲド戦記」の原作小説にインスパイアされたものであると宮崎駿氏自身が語っているところではありますが)。よって、スタジオジブリによる映画版「ゲド戦記」は、原作の3巻をメインとしつつも脚本はオリジナルストーリーに近いものである、と理解しても良いかもしれません。
「ゲド戦記」の主題歌は誰が歌っているのですか

ポスター(タワーレコード渋谷店)
(2006年6月5日)


完成披露記者会見にて
(2006年7月6日)

「ゲド戦記」の主題歌は『時の歌』で、手嶌葵(てしま・あおい)という新人のアーティストが担当しています。予告編が発表された段階では、挿入歌『テルーの唄』が流されており、テレビや劇場の予告編などで耳にしたことがあるとしたら、こちらの挿入歌の方と思われます。(主題歌の解禁日はサントラCDの発売日である7月12日以降で、この日以前にマスメディア等で主題歌が流れたことはないはずです。)なお、ヒロインのテルー役の声も手嶌葵氏が担当します。

「ゲド戦記」の主題歌を新人の手嶌葵氏が担当することは、2006年2月23日の報知新聞記事で明らかになりました。当初は、『ゲド戦記』の世界観への純粋な想像力をかきたてるため、手島葵という名前以外の年齢や出身地等のプロフィールは7月の映画完成まで明らかにしない方針でしたが、予告編が流れた直後からスタジオジブリに問い合わせが殺到、その反響の大きさに特別協賛しているアサヒ飲料が同社CMで手嶌葵氏の起用を要請、挿入歌を歌ったCMが全国で流されることになりました。注目のプロフィールは2006年5月に明らかにされ、2006年5月8日の報知新聞記事によると「福岡県生まれで身長174センチのすらっとした美人で、趣味はバレエ鑑賞と読書、ジブリ作品では『紅の豚』が好きでルイ・アームストロング、フレッド・アステア、ビリー・ホリデーをこよなく愛する音楽少女」と紹介されています。手嶌葵氏は、2003年・2004年に、出身地である福岡で行われたTEENS' MUSIC FESTIVAL協賛「DIVA」に出場。2005年3月には韓国で行われた「日韓スローミュージックの世界」にも出演。その時の歌が、スタジオジブリ鈴木プロデューサーと宮崎吾朗監督の耳に届く事となり、デビューへの足掛かりとなったといいます。(プレスシートより)

なお、『時の歌』の作詞は新居昭乃氏・宮崎吾朗氏、作曲は新居昭乃氏・保刈久明氏、『テルーの唄』の作詞は宮崎吾朗監督、作曲は谷山浩子氏になっています。『テルーの唄』の歌詞は、宮崎吾朗監督が全編を作詞しました。監督は、「萩原朔太郎の詩『こころ』に着想を得、少年と少女、旅する男と離れて暮らす女性、それぞれが抱える孤独を形にしたくて書いたものです。」と語っています。監督は、手嶌葵氏の歌を繰り返し聴きながら「ゲド戦記」の世界観を創り上げていったとされますから、もし手嶌葵氏と宮崎吾朗監督との出会いがなければ、「ゲド戦記」は全く別の物語になっていたかもしれません。

手嶌葵公式サイト




   作品編 (ネタバレあり)
アレンはどうして国王を刺してしまったのですか?
物語の舞台となったアースシーの世界では、異常気象、疫病の流行、家畜の死、不作による耕作放棄など様々な異変が発生し、あまつさえ人間の世界には姿を見せないはずの竜が現れて共食いをしているなど、何らかの「災いの力」が働くことによって世界の均衡が崩れつつある状態に陥っていました。魔法使いの多くは魔法が使えなくなり、人々の頭まで変になってしまい、目的を見失ってせわしく動き回るだけになっていました。エンラッドの国でもそのような異常が頻発しており、アレンもその「災いの力」の影響が及んでしまったのです。

アレンは正体不明の「影」に追われていました。「影」の正体は物語の後半で明らかになるのですが、「父さえいなければ生きていけると思った」というコピーにもあるようにその時のアレンは「影」の存在におびえ、心の中に闇が生じ、ついには父である国王を刺して国を捨ててしまったのでした。
アレンが持ち出したは、なぜ抜くことが出来なかったのでしょうか?
原作によると、「アレン」の名前はエンラッドの方言で「剣」のことを表します。王が持っていた剣は「セリアドの剣」と呼ばれ、、「モレド」と「エルファーラン」の直系とされるエンラッド王家の家宝というべきものでした。そのアレンが国王を刺して剣を奪って逃げたのは、何かの因縁めいたものを感じます。ちなみに、原作では世界の異変を感じたエンラッドの王が、大賢人ゲドへの使者として息子を送り、その際に「セリアドの剣」を持たせることになっていました。

さて、映画版のアレンは、父王を刺して剣を持ち出したまでは良かったものの、その剣を抜くことが出来ませんでした。おそらく、剣を奪うまで、それは自分に扱えるものではないことを知らなかったのでしょう。野犬に囲まれた時、剣に手をかけたものの抜こうとはせず「お前達が僕の死か」と観念していたことから、何とかして剣を抜こうと試みたものの、どうしても抜けないために諦めてしまっていたのでしょう。

ゲドに出会ったアレンは、その剣が「魔法によって鍛えられている」ことを教わります。魔法の何たるかを知らないアレンがそれを使いこなすのはもとより無理な相談でした。もっとも、それは魔法使いにならなければ使えないという種類のものではないようです。それは、何かを斬り捨てるためではなく、何かを護るため、救うためにこそ抜ける剣でした。映画版のラストでアレンがついに剣を抜くことが出来たのも、限りある命を護るため、ゲドを救うためにアレンが無心になったからではないかと想像されます。なお、原作では、死の国に通じる穴をふさごうとするゲドにクモが攻撃を仕掛けたので、アレンが「ゲドを救うため」に剣を使いました。
空を飛んでいた鷹がクモに向かって急降下していく場面がありましたが、どういう意味なのでしょう? 原作には、ハイタカが鷹に変身する描写がありますが、映画では特に説明がなされていません。少なくともりハイタカ自身が変身して飛んでいた訳ではないと思われます。ちなみに『ロマンアルバム』によれば「鷹に自らの意識を飛ばしたハイタカ自身の視線であったようだ」と書かれています。おそらくではありますが、ハイタカが魔法を使って鷹の目を借りて城を偵察し、ついでにクモに挨拶していったというふうに解釈して良いのではないかと思われます。別のシーンで、クモが器の中に張った水に遠方の風景を映し出す魔法を使って溺れていくアレンを観察する描写がありましたが、それと同じような種類の魔法を使ったのではないでしょうか。

なお、原作には鷹に変身する魔法はあるものの、鷹の目を借りて偵察する魔法は出てこないので、これが魔法だとすれば、映画版オリジナルの魔法ということになります。
映画の後半で、アレンとテルーが抱き合ったときに背景に竜が出てきましたが、どういう意味なのでしょう? 絵コンテには「年老いた竜」と書かれています。おそらく、原作に出てくる最古の竜「カレシン」を描いたものではないかと思われます。原作ではカレシンは竜の最長老であり、さいはての島での闘いで傷ついたゲドを故郷のゴント島へ運んだり、危険に陥ったテナーを救ったりします。テルーはカレシンの子ということになっており、命が続いていくことの象徴として描かれたのかもしれません。
結局、クモは竜になったテルーに焼き殺されてしまったのですか? 原作では、死の国にいったゲドが、クモに向かって「肉体が滅びたときには私もここに来るだろう。だが、来るのは名だけだ、影だけだ」というシーンがあります。映画版ではいかにも焼き殺されたようにも見えますが、原作から考えるとクモはもともと既に死んでいる影だけの存在であると解釈することも可能です。つまり、クモは肉体をあてがって生者の国に来ていたのであり、肉体が滅ぼされることで元々いた死の国に戻っていった、ということになります。クモはテルーに殺されたのではなく、もともと既に死んでいた訳です。




   その他
この前コンビニで「ゲド戦記」のおまけを見かけたのですが、どのような種類があるのでしょう?
「ゲド戦記」にはアサヒ飲料株式会社が特別協賛しています。2006年春頃より、同社が発売するペットボトル飲料に、携帯ストラップ付きコースター、携帯電話の画面に張れるスクリーンカット、オリジナルマグネット、オリジナル色鉛筆セット、オリジナルミニタオルなどがおまけとしてついています。

おまけにはそれぞれ2〜4種類づつありますが、どの種類が入っているのかが分かる良心的な取り付け方がなされていますので、お気に入りのおまけを選ぶことが出来ます。期間限定と思われるので、見かけたときにはチェックすると良いでしょう。

オリジナルマグネットつきのお茶飲料


コースター、スクリーンカットつきの炭酸飲料

オリジナル色鉛筆つきのお茶飲料

オリジナルミニタオルつきのお茶飲料

アサヒ飲料の「ゲド戦記」タイアップサイト
「ゲド戦記」には可愛いマスコットキャラクターがいませんでした。登場する余地はなかったのでしょうか?

オタク(ヘグ)の想像図
(イラスト:しなのさん)
確かに、ジブリ版「ゲド戦記」にはマスコットキャラクターと呼べる可愛い動物は出てきませんでしたね。強いて挙げるならばヤックルに似たロバや、羊の赤ちゃんが出てきましたが、特に名前がつけられていませんでした。名前に大きな意味があるアースシーの世界で名前がないというのは大きなハンディになりますし、アースシーの世界に限らず、名前のないキャラクターは感情移入がしにくいですよね。
さて、原作の物語では1巻にオタク(ヘグ)という動物が出てきます。ヘグはゲドのペットで、小さな体に横に広い顔と大きな目と鋭い牙を持ち、全身は焦げ茶の毛で覆われブチがある動物という設定になっています。吠えも鳴きもせず、人間のペットになることは滅多にないですが、ヘグという真の名前を呼んだゲドにはなつき、肩に乗るまでになりました。ゲドが黄泉の国で死の淵を彷徨っているとき、ヘグはゲドの体をなめてゲドの命を救ったこともあります。

ヘグは原作物語の1巻にしか出てこないのですが、1巻からは「影の存在」が取り入れられたくらいですから、ヘグを出そうと思えば活躍する余地はあったはずです。しかし、実際にヘグが登場することはありませんでしたので、宮崎吾朗監督がイメージした中には残念ながら含まれなかったというふうに理解して良いと思います。

ちなみに、「風の谷のナウシカ」でナウシカのペットとして登場するテトは、実はヘグがモデルになっているそうです。もし、ジブリ版「ゲド戦記」にヘグが登場したならば、イラスト(想像図)のような感じになったのではないでしょうか(^^)。
「ゲド戦記」の海外での公開予定はどのような感じなのでしょう? 2006年7月6日の「ゲド戦記」完成披露記者会見で明らかにされたところによると、「ゲド戦記」は50か国で配給されることが決定しているそうです。
韓国では2006年8月10日より公開予定で、吹き替え版に加えて字幕版も上映されるといいます。韓国では、外国映画は韓国語に吹き替えられるのが通例であり、まして日本映画が字幕版(音声は日本語のまま)で上映されるのは異例とも言えますが、これは韓国でも人気の岡田准一氏が主人公のアレン役の声をあてていることによるそうです。




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