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アレン
エンラッドの王子で主人公。心に闇を持つ。立派な父親(国王)・母親(王妃)のもと、不自由することなく暮らしていたが、その暮らしに耐えきれなくなって父王を刺し、国を出てしまう。正体不明の"影"に追われつつ、旅の途中で大賢人ゲドと出会い、ともに旅をする。
ゲドは大賢人であり、作品のタイトルも「ゲド戦記」となっているにも関わらず、ゲドではなくアレンが主役を張るのは珍しい。作品中で極めて重要な役回りを演じるからであろうと想像されるが、予告編の映像では憂えた瞳怯えた表情が全開であり、あまつさえ首輪をつけられ奴隷として売られて行くようなシーンまであって、この頼りなさ気なキャラクターが本当に主役として活躍してくれるのか気掛かりである。しかし、いざ"影"を克服した暁には、獅子奮迅の活躍ぶりを見せてくれるに違いない。
さて、アースシーの世界では、あらゆるモノに古代より伝わる「真(まこと)の名前」なるものが存在するという。そして、相手の「真の名前」を知ることによって相手を支配することが出来るのが、この世界における「魔法の力」なのであるという。アレンも別の「真の名前」を持っている。その名がどの段階で明らかにされていくのか、「魔法の力」がストーリー展開の中でどのような形で描かれていくのかが、この物語世界の見どころであると言える。
なお、予告編の映像が流れるや否や、全国で「首輪アレン」に萌えてしまった婦女子の方々が多数出現し、あまたのブログの話題になっているという情報もあるようであるが、実態は定かではない。また、おびえるアレンの表情は、かつて一世を風靡した「エヴァンゲリオン」を思い出させる、という意地悪なヤジも飛んでいるようであるが、多分それは思い過ごしであろう。ともあれ、アレンがスタジオジブリ作品きっての美少年として絶大な人気を博すことは間違いないと思われる。
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テルー
顔にヤケドの跡が残る少女。かつて両親より虐待を受けた挙げ句、捨てられてしまったらしい。ゲドの昔なじみであるテナーという女性と一緒に暮らしているが、テナー以外の人間には心を閉ざしているという。
当初、テルーはアレンを激しく嫌う。「いのちを大切にしない奴なんて、大嫌いだ!」はテルーの決めセリフだ。親に捨てられてしまった経歴をもつテルーにとって、恵まれた境遇で育ちながら心に闇を持ち、時折自暴自棄になってしまうアレンを受け入れられなかったのであろう。しかし、現在世の中は均衡が崩れつつあり、人の頭を変にしてしまう災いが蔓延していて、アレンもその影響を受けて恐怖に怯えているということが分かるにつれ、テルーな次第にアレンに心を開いていく。
予告編が流れている段階に限ってではあるが、婦女子の方々心をわしづかみにしたアレンとは対照的に、テルーの評判はいまひとつ芳しくないようである。それは、いわく「『シュナの旅』のテアとキャラがかぶっている」、いわく「『ラピュタ』のシータとキャラがかぶっている」といった声に代表されるような、テルーが他の作品のキャラクターと重なって見えてしまうという一側面が影響しているからなのかもしれない。もちろん、それはあくまでも予告編を見ただけの第一印象での感想に過ぎず、思わぬテルーの別の一側面を垣間見せてくれるシーンも期待される。テルーも「真の名前」を持っているが、それが明らかにされたとき、物語はどのような展開になっていくのであろうか。テルーが本格的なデビューを果たしたとき、多くの観客がテルーの魅力の虜になってしまうことであろう。
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ゲド(ハイタカ)
大賢人と呼ばれる魔法使い。少年時代は山羊飼いをしており、その頃は傲慢なほどまでに血気盛んな少年であったとされるが、壮年となった今では大賢人、すなわち物語が展開されるアースシーの世界において最も偉大な魔法使いと呼ばれるまでになっている。ゲドは、アースシーの世界の均衡が崩れつつあることをいち早く察知し、災いの元を探る旅に出て、その途中でエンラッドの王子のアレンと出会う。
彼は、普段は「ハイタカ」で通っている。「ハイタカ」はいわゆる通り名であり、「真(まこと)の名前」が「ゲド」である。しかし、彼の「真の名前」が「ゲド」であると知っている者は、彼が心を許したほんの一握りの友人に限られている。
予告編で流れた映像を見ると、理知的かつ謙虚で慎み深い物腰が印象深く、いかにも大賢人と呼ぶにふさわしい雰囲気に満ちている。しかし、事実上の主役をアレンにさらわれたためか、人気度という点では若干の苦戦を強いられているようである。けれども、ゲドの真の魅力は、そのような人気投票などでは量ることのできない超越した次元にあるし、そもそも魅力だ人気だという言葉で語ること自体がナンセンスではある。一部のファンから『ナウシカ』のユパ様とキャラがかぶっているという声も出そうだが、そういう比較自体もナンセンスであるほどに超越している。もっとも、映画の中では必ずしもカッコいいシーンばかりとは限らないという声も聞こえてくるのだが、その意外なハラハラ感もまたゲドの魅力といえば魅力と言える。
それに、たとえ目先の人気度ではアレンに譲ったとしても、ゲドはおじさま好きの女子高生の間で密かなブームになっているとも言われており、いぶし銀のような中年男性の魅力を世に知らしめる役割を果たしているようだ。その意味で、ゲドの人気は、もはや若い女性から注目されることはないと諦めかけた世の中の中年男性諸氏に、大いなる希望の光を照らすことになる、かもしれない。
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クモ
永遠の命にとり憑かれた魔法使い。悪役。スタジオジブリ作品で、はっきり「悪役」と銘打たれるキャラクターは珍しい。死ぬことを極度に恐れるあまりに生の意味を見失ってしまい、永遠の命を手に入れるために開けてはならないとされる「生死両界を分かつ扉」を開けてしまう。これによって世界の均衡が崩れつつあることをハイタカ(ゲド)は見抜く。
クモは、ずっと昔にハイタカ(ゲド)から無法な魔法の使い方を戒められた過去があった。それをずっと恨みに思っており、心の底でハイタカ(ゲド)への復讐を誓っている。時を経て再会を果たしたクモは、ハイタカ(ゲド)への復讐を果たすことが出来るのか?乞うご期待。
予告編が流れている段階では、クモはほとんどといっても良いほど登場しないため、ファンへのアピール力はいまひとつである。しかし、その陰険なまでの悪役ぶりを存分に発揮し、ジブリ作品の新境地を開拓していくことが期待されているキャラであるとも言える。
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ウサギ
クモの手下。手下連中をまとめるリーダーを務めており、クモの権威をカサに着て傍若無人に振る舞っているが、クモには逆らうことが出来ず、本来の性格も小心者であるという。人狩りを生業としており、予告編の映像でもテルーを追いかけるシーンや人狩り部隊を指揮するシーンが出てくる。
『ナウシカ』のクロトワとキャラクターがかぶっているという声も聞こえてきそうだが、クロトワよりも数段階人間の器が小さく見えるのは気のせいだろうか。言葉遣いは下品でPTAから抗議が来るのではないかと心配させるほどであり、笑い声も下品としか言いようがない。それでも、ウサギならではの個性と活躍ぶりを見せて欲しいところであるが、残念ながら全く期待出来そうにない。
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テナー
ゲドの昔なじみ。テナーは幼い頃から「アチュアンの墓所」で巫女として仕え、世間と隔絶された生活を送っていた。一人前の魔法使いとなったゲドが「エレス・アクベの腕輪」の片割れを求めて「アチュアンの墓所」に潜入し、そこでゲドとテナーは出会う。そしてゲドが「エレス・アクベの腕輪」の片割れを奪還した時、テナーも一緒に自由と光りの世界に連れ出されたという。結婚していたが夫に先立たれ、現在は未亡人である。女手一つで農園を営み、テルーと二人で暮らしている。
原作の2巻では「アチュアンの墓所」を舞台に主役級の活躍を演じたが、映画版ではどのような位置づけで存在感を発揮してくれるか、ファンならずとも気になるところである。
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ハジア売り
都城ホート・タウンでハジアを売っている商人。ハジアとは麻薬の一種で、常習していると次第に心身が蝕まれていき、やがて死に至るという。裏路地に一歩入ると、ハジア中毒の患者が大勢たむろしている。ハジア売りは、アレンにも目をつけ、最初はタダで良いからどうぞとまで言ってハジアを勧めるが、ハイタカに止められてしまう。
彼からは、世界の均衡が崩れつつある時代にあっても小賢しく生き抜こうとするバイタリティーが伝わってくる。たとえ世界中の人々の頭が変になってしまっても、彼だけはその影響を受けることなく、これ幸いとハジアを売りまくるであろう。このようなキャラクターの方が、アレンよりも波瀾の時代を生き抜く力が強うそうで、実際にも生き残りそうである。彼は映画の予告編から出演しており、どのような役回りを演じてくれるのか期待されたが、結局のところ、単なる麻薬商人として1カットの出演だけで終わってしまった。
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女主人
都城ホート・タウンで布屋を営む女主人。売っているものはまがい物ばかりであり、世界の均衡が崩れて街も人も退廃しつつあるという世相を象徴的に表すキャラクターとして描かれる。
女主人は、かつてはまじない師をしていたらしい。しかし、世界の均衡が崩れてゆくことで魔法を信じられなくなっており、まがい物売りをして生計を立てるようになってしまった。けれども、たとえまがい物であってもモノはモノ、実体の見えない魔法よりも信用出来る、とする言い分も一理ある。現実は現実としてしっかり見据えることの出来る、見るからにバイタリティーの強そうなキャラクターであり、彼女もたくましく自分の人生を生き抜いていくであろう。個性的なキャラクターであったが、映画での出演はハジア売りと同じく1カットの出演だけで終わってしまった。何とも残念である。
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王妃
エンラッド国王の妻でアレンの母。アレンを次期国王としてふさわしい人物になるよう、厳しくしつける。しかし、息子のアレンは父親を刺して逃げ出してしまのだが、もちろん王妃の厳しいしつけがアレン乱心の原因の全てではない。むしろ、世界の均衡が崩れてアレンにもその影響が及んでいるという別の要因の方が大きいのであるが、アレンがそういうことをしでかすことは想像もしていなかったようであるから、王妃がそれを知った時の驚きは察するに余りある。とはいうものの、一部の外野から、王妃はアレンよりも猫(当時の猫は希少なものであった)の方に愛情を注いでいるのではないかというヤジが飛んできそうな描写に終わったことも否めず、王妃は名誉挽回を果たしたいところであるが、残念なことに物語はより重要なテーマの描写が目白押しであり、そのまま存在感を発揮することなく終わってしまいそうである。外伝での活躍が期待される。
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国王 ★
エンラッドの国王でアレンの父親。常に国民の幸せを願い、昼夜を問わず国政に身を捧げており、賢王の誉れが高い。しかし、跡継ぎであるはずのアレンに刺されて逃げられてしまったので、子育てに関してはあまり誉れが高くない。とはいえ、アレンが父親を刺してしまったのは、世界の均衡が崩れつつあるからであり、父親が子育てに失敗したからという訳ではなさそうではあるが、このままでは国王の権威はガタ落ちである。そればかりか、刺された国王はそのまま死んでしまったのか一命を取りとめたのかさえ不明という、まことに心配するべき状況のまま物語は進行してしまう。何とか助かった場合、国王がこの危機をどのようにして乗り切り、賢王の面目を保つかが注目どころではあるが、それは残念ながら続編か外伝で語られるべきテーマのようである。ああ、誉れ高き国王に栄光あれ。 |